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なるように

維月と維心は、そのままとりとめのない話をしながら庭を歩いて、そして部屋の前まで送ってもらって、別れた。

維心は、また明日の夜必ずこちらへ参る、と言って自分の部屋へと帰って行った。

維月が、ボーッとしながら部屋で座っていると、十六夜が降りてきて、言った。

「よお維月。散歩楽しかったか?」

維月は、見てたのか、と十六夜を睨んだ。

「…どうして教えてくれなかったの?私、維心様と仲良かったんでしょ?付き合ってた感じ?」

十六夜は、ハアとため息をついた。

「いや、まあなあ。オレからは詳しく言えねぇよ。そこんとこはお前がしたいようにするべきだし、思い出すなら思い出すだろって感じ。」

維月は、息をついた。

「私…なんか夢を見てね。維心様と、多分龍の宮だろうなあって大きな宮のお庭で仲良く歩いている夢。恋人同士みたいだったわ。そんなの見たって言ったら、また呆れるだろうと思って黙ってたんだけど。」

十六夜は、驚いた顔をした。

「え、お前、それ記憶じゃねぇのか。」

維月は、頷いた。

「そうなの。もしかしたらって維心様にも聞いてみたら、それは記憶だってハッキリ仰られた。十六夜も知ってたのね?じゃあ、私はやっぱり維心様とそういう仲だったのに、すっかり忘れてるってことなのね。」

維月は、ドスンと落ち込んだ顔をした。

十六夜は、慌てて言った。

「いや、まあそんな感じだけどな、あいつとも話してなるようになるだろってことになってたんだよ。お前が思い出すなら思い出すだろうし、無理はダメってことで。で、今のお前はどうだ?維心が好きか。」

維月は、十六夜を恨めしげに見上げた。

「…好きよ。実は最初に見た時から、好みのど真ん中の容姿であられるから、気になって仕方がなかったの。でも、十六夜が居るし…と思ってたら、あなた別にそんなこと気にしてないし。よく考えたらそうだった気がするって思ってて。記憶を失う前から付き合ってたんなら、それはあなたにとっては今さらよね。私…なんだか自信がなくなっちゃった。そんなに重要なことを忘れるなんて。友達は覚えてたのに。」

だからそれは多分、なんか意味があるんだよなあ。

十六夜は思ったが、維月の頭をポンポン叩いた。

「もう、この際維心が気にしてねぇんだし、お前が良いようにしたらどうだ?思い出せないなら、またやり直すしかねぇしな。そのうちに思い出すかも知れねぇだろうが。悩んでも仕方がねぇぞ?いっぺんに思い出したら、また倒れるから。ちょっとずつな。」

維月は、頷いた。

「分かった。でも、思い出せるようにがんばるわ。なんだかとても…とても維心様を愛していたような気がするの。でも、十六夜も好きよ。」

十六夜は、笑った。

「分かってるって。オレ達はなあ、そもそも兄妹だし、夫婦ってのはちょっと違うから、ほんとはあんまりこんなに一緒に居なかったんだぞ?まあ、オレはどっちでもいいから、お前がしたいようにしたら良いなあって今、こうして一緒に居るけどさ。」

維月は、驚いて十六夜を見上げた。

「え、夫婦じゃなかったの?」

十六夜は、苦笑した。

「夫婦より深いっての?まあ、分からねぇわな。良いんだよ、体の関係はどっちでも。お互いにしたいならするし、そうでなくても好きなのは変わりねぇってことだ。」

維月は、困った顔をした。

「それはそうだけど…。」

十六夜は、維月がまだ思い出していないのだから仕方がないと、眠くないとごねる維月をなだめて、その日はもう、休んだのだった。


次の日、十六夜も維月も、応接間には行かなかった。

また、妃達と接して倒れて、年明けのめでたい雰囲気に水を差したくなかったのだ。

その代わり、維月は部屋でせっせと維心の着物を縫っていた。

十六夜は、やることもないので月に上がって、通常業務に勤しんでいる。

そんな中で、王達は応接間で顔を合わせていた。


昨夜は、飲み過ぎることもなく、早く休んだので皆元気だ。

蒼が、これなら人狼ゲームもできそうだ、と思っていると、炎嘉が言った。

「…なんぞ。維心、主、昨夜と雰囲気が変わったの。何やら気が落ち着いておって、構えるようなおかしな気が失くなっておる。」

志心も、じっと維心を見て、頷いた。

「…確かにの。どういうことぞ?維月がおらぬからか?…いや、昨日は到着した時から何やらピリピリしておったようなのに。」

維心は、何故に分かるのよ、と思いながら、横を向いた。

「…別に。正月であるし、落ち着いた方が良いではないか。我とてゆっくりするために来ておるのだし。」

炎嘉は、怪訝な顔をしたが、頷いた。

「まあ…こちらも気を遣わぬで済むから良いがの。」と、蒼を見た。「して?本日は昨日申しておったゲームをやるのか?」

蒼は、頷いて小さな箱を取り出した。

「はい。良ければですけどね。参加しなくてもどちらでも良いです。それによって配役も変えられるので、見学だけがいい場合は申し出てください。」

焔が言う。

「せっかく来ておるのに、参加せぬとかもったいない。やってみて合わぬなら抜けるで良いではないか。まずは全員参加でやろう。」

焔にしては、もっともなことを言う。

蒼は、内心思ったが何も言わずに、皆を見回した。

「では、説明しますね。」と、小さな箱を開いて、中に入っていたカードを出した。「これは、役職カードといいます。これを皆様に配って、ランダムに配役が決まるのですけど、それぞれの役割があります。全体の流れを、まず説明します。」

全員が、基本的に真面目なので、じっと蒼の話を聞いている。

蒼は、教えやすいといえばそうなんだよなあと思いながら、続けた。

「まず、役職の動きは、昼行動と、夜行動に分かれます。昼に、全員で話し合って、村人の中に混じっている、狼を探して一人、追放します。追放されたかたは、もう議論に参加できません。そうして、夜になると、今度は狼が村人を一人襲撃します。襲撃された村人は、議論に参加できなくなります。そうやって、村人と狼の数が同数になれば狼の勝ち、狼を全て追放できたら村人の勝ちとなります。」

炎嘉が言う。

「そんな、皆己は狼ではないと申すぞ。運任せなのではないのか。」

蒼は、首を振った。

「それが、役職というものがありましてね。」と、カードを見せた。「この、占い師というカードを引いたかたは、夜時間の間に、一人だけ占って、狼かそうでないかを知ることができます。昼間、疑わしいと思ったら、夜その相手の正体を占えるわけです。」

箔炎が、感心したように言った。

「ほう。だが、そうなったらそやつは絶好の襲撃位置になるよな。」

蒼は、頷く。

「はい。ですから、夜の間に自分以外の誰かを一人だけ守れる役職、狩人というものがあります。これを引いたかたは、自分のことは守れないのですが、他の誰か一人を守ることができるのです。」

志心が、言った。

「…ということは、狩人は己の正体を明かせぬわけだ。襲撃されたら占い師までやられるから。」

蒼は、飲み込みが早い神達に感心しながら頷いた。

「そうなんですよ。明かす時が難しいですよね。」と、別のカードを見せた。「ちなみに、霊媒師という役職もあります。これは、前日の昼に追放された人が、狼かそうでないかを、夜時間に知ることができます。占い師が噛まれても、最悪後付けで色が見えるってことですね。」

ウンウン、と皆が頷く。

焔が言った。

「だが、ここまで聞くと狼は不利ではないか?どうやって勝つのよ。」

維心が、言った。

「占い師に占われぬように正しく村人のふりをするよりないが、そもそもがそうなると運任せになる。となると、偽りの結果を申す仲間を出さねばならぬのでは?つまり、占い師を騙るのだ。」

おお、と炎嘉が手を叩いた。

「そうよ、その通りよ!ならば、対等に戦えるようになろう。要は先を読んでいろいろ行動しながら偽りを申すわけであるな。なんとの、何やら難しい。」

蒼は、頷いた。

「今回は、恒にゲームマスターをしてもらって15人でやります。その中に、狼4、占い師1、霊媒師1、狩人1、それから狂人っていう役職が入ります。狂人は、村人なんで占われたら白、狼ではないと出ますが、狼の味方をしている狂った人です。狼が誰なのか、狂人は知りませんし、狂人も狼が誰なのか知りません。残りはみんなただの村人で、役職を持っている方々の意見を聞いて、推理してください。ここまでで、質問あります?」

志心は、言った。

「狼同士は話せるのか?」

蒼は、頷いた。

「ここでは、皆様神様なんで、全部筒抜けで面白くないどころかゲームにならないので、場所を変えます。」と、蒼は立ち上がった。「こちらへ。大広間に箱を作ったんですよ。」

箱?

皆が思ったが、蒼が自信満々に歩いて行くので、水を差すわけにも行かない。

なので、全員が蒼について、大広間へと移動して行ったのだった。

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