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    目覚めし者は……(2)

すいません、ちょっと短いです

 魔導砲によるものか、なんらかの魔法を使ったのか、(われ)が張っていた『反転防御結界・改』激しく輝く。その影響を(もろ)に受け、仕切っていた壁が崩れ落ちて隣室と繋がったのである。

 迷宮核の間の隣は、研究所の中央管理室。迷宮核はもちろんのこと、それ以外にも弟子たちが各所で行っていた汎用スライム核や障壁の実験、各種魔道具の運用実験等の結果を統合し、我や主だった弟子たちで論議を重ね運用していた場所でもあったが……。

 

 すでに敵の帝国反乱軍が、すぐ隣の中央管理室まで迫って来ておるのであろう。

 逃げる場所はと周囲に視線をさまよわせるも……崩れておる。

 そこで初めて気付く。

 この迷宮の間が、生体ポッドの周り以外が全て崩落している事に。周囲の壁際に並んでいた魔力タンクも、全て瓦礫に埋まっておるのだ。

 

 魔導砲による威嚇射撃?


 結界のおかげで助かっておったのか。

 (われ)は骨だけのアンデッド? と化し、迷宮の間は崩壊しておる事に理解が追いつかぬ。だが悩んでおる間もない。

 隣の管理室から聞こえてくるのは、まるで誰かが戦っておるかのような騒々しさと怒鳴り声。


 まさか弟子たちが戦っておるのか。


 最後まで付き従っておった弟子たち。

 もはやこれまでと思い定め、(われ)は命さえ落としかねぬ実験を行うつもりで、弟子たちには先に逃げろと脱出させたはずであったが……もしや戻って来ておるのか。


 であれば、こうしてはおれぬ。(かな)わぬまでも助けに行かねば。


 敵の反乱軍兵士や弟子たちの前に、骨と化した(われ)の姿を(さら)す事に一瞬だけ躊躇(ちゅうちょ)する。が、そんな事を考えている場合でもないと、慌てて管理室と繋がった穴へと向かう。


 骨だけの姿となったためか、体を上手く動かせない。鈍くなった動きで、ガチガチと音を鳴らしながら足を引きずる様にしてようやく隣の管理室へと……。


 なんじゃこれは……。


 我の目に飛び込んできたのは、想像していたものとは違う予想外の驚くべき光景であったのだ。

 本来あるべき机や実験機器、弟子たちと論議を重ねていたソファやテーブルなどの一切合切がなくなり、あるのは中央に壁のない屋根のみの簡素な建物に石碑らしきものだけ。しかも驚くべきことは、その周囲で倒れている兵士らしき者たちだ。


 帝国の反乱軍ではないのか?


 幾本かの矢が刺さり、斬られたのか倒れて動かない人間(・・)が四人に片腕を斬り落とされた人間(・・)が一人。そして、最も驚くのは、状況から見てこの五人と戦っていたであろう兵士の集団。


 人の姿を模した魔物(・・)


 まるで獣と融合させたかのように、頭頂部からは三角形の耳が生え、鼻筋と口が少し前方に迫り出した犬顔で毛深い尻尾まである兵士が九人。最後の一人は更に驚く事に、頭には(つの)が生えている女性で、(うろこ)に覆われた尻尾まであるのだ。

 何か叫んでいるようだが、何を言っているのかわからぬ。


 馬鹿な……我の知らぬところで、人と獣を融合させるようなキマイラの実験でも行っておったのか。

 何が起きておるのだ。帝国反乱軍はどこに行ったのだ。


 お前たちは何者で、どこから湧き出たのだ!


 と叫んだつもりが、また「カタカタ」と音を鳴らすだけで言葉にもならぬ。

 声を発する事が出来ないのが、なんとも歯がゆい。

 よく考えて見ると、我の方がよっぽど魔物である。


 退治されるとしたら我の方か。さてどうしたものか。


 問題は剣を持つ(つの)のある女戦士。他は傷付き倒れている者がほとんど。何一つ状況がわからぬが、脱出するなら今であろう。


 そんな事を考えつつ女戦士と睨み合う。


 胸の奥からこんこんと湧き出る魔力。実験前の魔術士であったら魔道具なしでは出来なかった魔法も、今なら扱えるはず。魔法理論と魔力操作には自信がある。あとは……魔法には属性などなく、頭の中で思い描く想像力と魔力の大きさで決まる。


 パラライズ!


 またしても声にならず、「カタカタ」と音を鳴らすのみで情けない。

 だが、どうやら魔法の発動には成功したようだ。

 パラライズは相対する敵を麻痺させる付与魔法。学者でもある我は戦闘が苦手で、研究対象となる魔獣相手によく使っていた魔法でもある。もっとも魔術士であったので、もっぱら魔道具を触媒にしての魔法でもあった。それが今は触媒なしに発動できた事にちょっぴり感動しておる。

 

 我の体から黒い(もや)のようなものが魔力波動となり漂い出る。


 思ったより魔力の加減が難しい。

 少し強力になり過ぎたかの。


 黒い(もや)(たちま)ち周囲を埋め尽くし、目の前で女戦士や犬顔の兵士たちも急にパタリと倒れていく


 大丈夫かの?


 我はただの研究者。命のやり取りを常とするような戦闘員ではない。よくわからない状況、敵なのかもわからない状態で魔法を発動して、問答無用で命を奪うような行動はさすがに気が引ける。確認すると気を失っているだけのようなので、少しホッとした。

 

 ふむ、あとはここから逃げ出すだけであるが……この管理室も随分と様変わりしておる。


 周囲を見渡し、この中央管理室も隣の迷宮核の間同様に崩落の後が酷く驚く。

 とそこで、ふと石碑の文字に目が止まった。そこにはこう書かれていたのである。


『魔法工学に多大な貢献を残した我らの師パラケメストここに眠る

 願わくば永遠の安寧を


 神聖歴1256年

 最後の弟子 アルクラテレスがここに記す』 

 

 なんじゃこれは…………。

 

 アルクは我に最後まで(かしず)いておった弟子の一人。我の全ての論文を託して逃した弟子じゃ。


 何が起きておるのだ。まさか、あの反乱軍の襲撃から数十年が経ったとでも言うのか……。

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