円墳の闇その三
「危なっ」
少し考えに集中してしまって避けるスピードが鈍り、ヒトデ型と意図せず至近距離になった。毒針が出てきたら叩き折るかひも状のものが出るなら掴もうと構えた瞬間、ヒトデ型の皮膚がパリッと音を鳴らし僕の髪の毛がふわっと浮いた。
転がるように下がり直ぐ起きる。ヒトデ型は動きを止めて仁王立ちしていた。
「キャオオオオオ!」
ヒトデ型は叫びながら体を光らせ放電し始める。そのお陰で見えなかった今の場所の円墳の広さがわかるようになった。体育館くらいの高さがあるようだ。それに先の方はまだ高くなっている。
「マジ?」
「薄気味悪いですわね……」
チーさんとラティの視線の先である天上を見上げると、そこには無数のヒトデ型が張り付いていた。
「撤退しろ!」
我先にと元来た道を戻る一同。僕は殿に残る為、ヒトデ型と格闘を開始する。この世界の全ての生き物を見たわけじゃないけど、あれは異質だ。この星の外から来たのかこの星の誕生から居たのか。避けながら素早く当てて引くをやってみる。電気は発生したけど、痺れは感じなかった。この篭手の伝導率が低い素材が入っているのかもしれない。
思い切って力をこめて殴り飛ばしてみたけど大丈夫そうなので、蹴りは出さずに戦う。
「お兄様!」
「気にしてるの?」
チーさんとラティが応援に駆けつけてくれた。襲い来るヒトデ型を三人で連携しながら処理しつつ後退する。チーさんは流石豹族って感じで電気が発生する前に素早く引いているし、ラティは鞭を使用し動きを止めて僕らが処理しやすくしてくれていた。即席にしては凄いと思う。
ただなんとか凌いでいるものの、恐慌状態になっているので皆早く下がれない。敵の数は減らないし道は段々狭くなるので余計詰まってしまう。
「気にしているとかじゃなくてただあれが何なのか知りたくて」
「殿を請け負うなんて律儀じゃないか!」
ヒトデ型と乱戦しつつ後退していると、斧を両手に持った青いプレートアーマーの人が現れヒトデ型を蹴散らしていく。声からして恐らくボルザグさんだ。ギルド長以外で自分より上のランクの人の戦いを始めて見るけど、圧倒されそうになる。
両手に持っている斧は柄を短くしているものの刃は大きいままで重量はかなりあるはずなのに、枝でも振り回すように斬り付け更に手で遊んでも魅せる。
「おいおい俺に見とれてる場合じゃないぞ?」
そう言われて視線を追うと、倒したヒトデ型を飛び越えてヒトデ型が口を大きく開けて突っ込んできた。
「流石だなサクラダ」
殴り飛ばそうとしたけどその前に蜂の巣になって地面に転がる。後ろを向くとサクラダがライフルのような形のボウガンを構えて岩の上に居た。
「おいお前たち、外まで来るか?」
ボルザグさんにチーさん、ラティと外へ出る頃には大分ヒトデ型も減っていた。それでも追ってくるかと思ったけど、外に出た僕たちに興味を失ったように奥へと去っていく。
「さ、引き上げようか」
「あ、はい。すいません」
「謝る必要は無いさ。あのまま中まで進んで襲われたら逃げられず全滅していただろう。な、サクラダ」
ボルザグさんは斧を背中に背負いながら視線の先の相手に問いかけた。僕も視線を向けるとサクラダが親指を立てて満面の笑みを浮かべていた疲れる。
「いやぁ楽しかったなぁ」
「全然楽しくありませんわ……」
皆と一緒に引き上げる時、気になって振り返って円墳を見る。これは何なんだ。あの奥には一体何が……。
「気になるか?」
驚いて振り向くと、ライラック教授がそこに居た。
「今回は引き上げるがまた暫くしたら潜る。その時はまた誘うからもう少し強くなっとけ」
「え?」
「これは恐らく星の息吹の一つ。なんでか知らんがほっとかれてる。その理由をワシは知りたい」
意味深な言葉を残してライラック教授はボルザグさんが引いて来たロバに乗って先に言ってしまった。
「なんだかなぁ。皆色々知ってるって感じで……」
どうにも気持ち的に喜べないなぁ。厄介事処理班じゃないんだけど。




