円墳後
それから僕らは夕焼けに染まる荒れ地を停めていた馬車に乗って帰る。今回は手当ては無し。怪我人もゼロだったので、くたびれもうけと言った所だ。
「ようよう各々方、今日は康久殿の奢りで飯だけ食わせてくれるらしい! 飲み物だけ買ってギルドカウンターへ急げ!」
勝手に奢らされるハメになった。だけど失態は失態だ。サクラダには油断しちゃいけない。ボウガンで当てずっぽうで撃ったのは危険が無いかどうか確認する為だし、なんなら天井の違和感を感じて上手くいけば一つくらい落とそうと思って撃った。更に殿の時も背後から僕越しに撃ってきたのは、いつでも狙える位隙だらけだと言いたかったのだろう。
「俺も少し出すよ」
「良いですよボルザグさん。これを機に縁が出来たらその方が助かります」
溜め息を吐きながらギルドに馬車を停めて降りると、ボルザグさんが後から歩いてきた。ボルザグさんは勿論家持ちなので、そちらに馬車を停めている。
「必要経費って奴か」
「そうですね」
微笑むボルザグさんに、僕も微笑んで返す。ボルザグさんに覚えて貰っただけで良しとする。高い買い物だけど。
「明日から頑張って稼ぎませんとね」
「そうだね憂鬱だ」
「それなら良かったら私に付き合いなよ二人とも」
来る時は他の馬車に乗って来たチーさんは帰りはうちに乗っていた。ラティと二人女子トークで盛り上がっていて、ラティにも友達が出来て少し嬉しかった。
「何か美味しい仕事ですか?」
「そうそう。特に康久にとってね」
……二人が何か企んだ顔をしながらこちらを見た。溜め息がまた出る。
「そういう話なら俺も今度付き合ってくれないか?」
「ボルザグさんだとランク高すぎて僕らは邪魔にしかなりませんよ」
「謙遜するな。お前さんの話は良く聞いているし、今回の件でそれなりには見せてもらったつもりだ。出来れば本当のところを見てみたいと思ったのさ。勿論割の良い仕事だ。恐らくチーの仕事と合わせれば今日の食事代なんて余裕で補える」
……サクラダはこれすらも読んでそうで嫌過ぎる。僕は一瞬渋い顔をしそうになったのを、頷くように下を向きながら後頭部を右手で掻いた。
「よし、決まりだな。そうと決まれば心置きなく飲んで食ってしまおう。チー、外に席を一緒に用意しに行こう。どうせギルドは溢れてるし、今日は気持ちのいい気温だ」
「了解!」
ボルザグさんとチーさんはギルドカウンターへと移動した。
「やれやれですわね」
「ホントにね。少ししたらまた二人でゆっくり散歩しに行こう」
そう言うとラティに背中を擦られながらジジ臭いと言われ肩を落とす。そりゃそうだよ何か途中色々あったらしく気付いたら変な能力持ってるけど、元々はただの引き篭もりで死なないしか能が無かったんだから。最近のこの状況が目まぐるしくて一息吐きたくもなる。
「そういやこの間まで引き篭もってたのになぁ……その間に誰かに会ったきがするんだよな。同じような人」
オレンジ色の空は薄い闇へと変わり、星が煌めく。そして流れ星が一つ、二つ三つとゆっくり流れていく。横を歩くラティを見ると、手を合わせて祈っていた。
「それは?」
「空の涙は大きな宿命を終えて流れていく英雄の御魂だと言われていますわ。だから次ではどうか安らかに、そして感謝をと」
空の涙……ここでは流れ星をそう言うのか。何だかロマンチックだなぁってそりゃそうか。宇宙があって、なんてのはまだ分からない世界だからそう言う名前になるよね。
「そうか、じゃあ僕も感謝しよう」
消える前に手を合わせ祈り、安らかなる日を願いそして最大限の感謝を祈りに込めた。
「どうか壮健で」
「お知り合いですの?」
「ううん、何となく」
そう何がどうという訳じゃないけど、そう口から出た。一つは英雄、一つは元神様、一つは道にはぐれた反英雄。そんな気がする。そんな三人が旅をしたらどうなるんだろう。見てみたくはある。




