円墳の闇その一
「君たちは目を付けられちゃったんだね仕方ない」
うんうんと腕を組み頷きながら言われた。誰に、とは聞けなかった。心当たりのある人は居る。自分たちを態々ここに送り込んだ目的は知って欲しい状況があるからか、単純に退治を頼みたかったのか。ここの問題が解決すれば分かるような気はするけど。
「私たちが知っているくらいだから、恐らく心当たりのある人全員プラスアルファじゃないかな」
「最悪ですね」
僕らに何かを知らせたい人と僕らを懲らしめたい人、僕らを利用したい人に僕らの実力を測りたい人。確かにそう考えると心当たりだけじゃないなぁ。注目されるってなるとそれだけ敵も増えるのかもしれない。
「最悪だよね。料金が高いのは命を担保にしてるからなのに、冒険者以外はそれを知っても妬むし」
「あまり良くないみたいですね」
折角家を作るってなったのになぁ。ゲンナリしている僕らを見て豹っぽい獣人は笑う。彼女の口振りからして冒険者以外の依頼側にも居るようだ。勿論真実は確かめなきゃならないけど、可能性は勿論あるだろう。
「まぁ何処に行っても同じだと思うよ? 何だったらまだギルドの力があるここはマシかもしれない。未開の地とかだと現物支給だったりそもそも報酬が無かったりするから」
「貴女は色々知ってらっしゃるのね。凄いわねお兄様」
ラティは感心したように頷いて僕に同意を求めてきた。それに僕も頷いて答える。すると豹っぽい獣人は首を傾げて少しすると、掌を拳でぽんと叩き
「あ、ごめんよ。君たちは名乗ってくれたのに私まだだったね。私はチー。チー・ラクト。豹族の出で一年前にここに移ってきたんだ」
後頭部で手を組み照れくさそうに言うチーさん。この土地に一年間居たってなると色々知ってるんだろうな。仕事でバッティングしたりしないけどどんな仕事をしてるんだろうか。今度聞いてみようかな。
「改めて宜しくお願いしますわねチーさん」
「こちらこそ。なーんだ話してみれば全然怖くなさそうで安心しちゃったよ」
「僕らどんな風に見えてたんですか」
「何せあのヴァンパイアを捻じ伏せた破竹の勢いの二人組みだよ? 先輩とか上位の冒険者に興味すら示さず突き進んでるんだから、同業者として怖いさ」
その時視線を感じてその方向を見ると、皆前へ進んでいるもののチラチラこちらを見ていた。そう言えば大人数での依頼なんて初めてだから気にする機会がなかっただけで、常日頃見られていたかもしれないなぁ。
「お兄さん勘が良さそうだけど鈍感みたいだねぇ」
「否定はしませんわ。ですがその方が良い場合も多いですね。特にこの家業は人の目を気にしてたらあっという間に奴隷でしょうし」
ラティが周りを見ると、さっきまでチラチラ見てた人たちは視線を逸らした。徐々に円墳の天井が高くなり、暗闇も深くなってきた。皆が静かな時が続く。
「なるほどね。二人とも命知らずってだけじゃないのかぁ安心したよ」
「ヴァンパイアは絡まれたから処理しただけの話ですわ。放牧地での話はお兄様がノリにノッてしまっただけで」
「それでもやれる相手じゃなきゃ行かなかった、と私は見たね。それだけでも私はこの仕事、少しは気が楽になったよ。おのぼりさんとか勘違いさんとかの面倒を見なくて済むだけマシだし」
「何やら面白い話をしてるなお前ら」
チーさんの後ろ、隊の前の方から音も無くするっと一人の人物が現れた。ツーブロックにてっぺん付近はもじゃっとし肌は小麦色に焼けたアクティブそうな人物で、鎧は鉄の鎧を着ているけど兜無し。どこか違和感のある人物だ。チーさんは少し距離を取った。苦手なのかなこの人が。
「よっ! 俺はサクラダ。サクラダ・ランヴェイ。北の方からここに移り住んだお前らの先輩冒険者だ宜しくな!」
距離は取ってる筈なのに圧が凄くて押される。ニカッと歯を見せて笑っているだけなのに。これが陽キャパワーなのか?




