荒れ地の円墳
ラティと二人で週の五日は荒れ地で行動し、盗賊からの警備や夜の見回りの依頼をこなした。暫くすると本格的な冬を向かえ、山での仕事は無くなり輸送関連も荒れ地側からのみになる。そうなれば皆下って来てそれまでは荒れ地を望遠鏡を見つつ忙しなく見回っていたものの、ポイントポイントに人が居るようになり単価も下がった。冬の蓄えの少ない人たちの丁度良い稼ぎにもなって、僕たちの出番も減ってくる。
こんな状況になれば盗賊も出て来れない。黒鎧たちも出てこなくなり荒れ地はレジャー施設のような状態になった。
「さてどうしましょうかね」
ギルドでラティと二人依頼と睨めっこする。単価の問題から依頼内容から、ギルドにお金を入れて選別してもらったものを更に選んでいる。依頼に掛かる期間が重なっているものを纏めて行き、更に単価がどれが良いかで受けるものを選んでいる。
「これなんかどうかな」
僕が手に取ったのは単価が良くないし依頼は楽に見える。ただ気になるのは内容だ。
「……気になりますわね」
ラティも理解してくれたようだ。僕たちは受ける依頼の一つにそれを加えてギルドに署名し提出した。翌日その気になる依頼の一行に加わり荒れ地から砂漠近くまで来た。
「こりゃ凄い」
そこには円墳のような物があった。高さは二メートルを優に超え、横幅もかなり広く入り口の前に立つと圧迫感と拒む感じが出ていた。
「ほら行くぞ」
この円墳を研究しているライラック教授に言われ後を追う。年は内緒らしいけど頭と髭は綺麗な白で顔の年輪はからして大先輩なのは間違いない。背丈は小さく体もほっそりしている。鼻が高くワシ鼻で丸眼鏡を掛けていた。
「ライラック教授、今日は何処まで進みますか?」
「慎重に行かねばの。まだ遺跡と決まった訳ではないのじゃから」
僕たちより先にこの一行に加わり警備を担当している冒険者、ボルザグさんがライラック教授に尋ねる。
「遺跡じゃない……」
「何か妙な気がしますわね」
そう、何とは言えないがこの違和感、気持ち悪さ。喜ばしいものでないのは間違いない。あの単価と依頼内容は予測が付かないからあれしか出せないって感じだけど、この時期にリピーターが居ない意味が分かったし、これを僕らに回してきた意図も理解した。
「ギルドにお金を入れて選別させるのは一旦止めた方が良いのかな」
「少し考え直しましょう」
前方で松明を付けてライラック教授と中へと進み始めたので僕らもそれに続く。今この場に居るのは僕らより上の冒険者ばかりだ。それでも安心出来ない雰囲気が支配している。
「君たちここは初めてだね」
僕たちの直ぐ前に居た、豹っぽい獣人が声を掛けてきた。鉄の軽鎧を着て武器らしい武器は無く、少し大きい篭手をしていたので恐らく格闘メインなんだろう。
「ええ。宜しくお願いします。僕は康久、彼女はラティ」
「宜しくお願いしますわ」
そう言うと豹っぽい獣人は一瞬首を傾げた後、何かに気付いたらしく手を叩いた。
「ああ、ああ! 君らか期待の新星ってのは」
「何ですの? その糞ダサ称号は」
「糞ダサは確かにそうだね。でも私が言い始めたわけじゃないし。ギルドでは有名でね。重大事件を二度も解決した凄い奴が居るって。噂では何処かの有力者の子供じゃないか何て話もあったけど」
「そうだったらもっと楽に生きてますよ」
僕が溜め息混じりに答えると豹っぽい獣人はケラケラと笑った。が、直ぐに何かに気付き前方斜め上を向く。僕もそちらに向けてボウガンを構えた。何か動いた気がしたけど。
「やっぱ遺跡なんて有り難い代物じゃなさそうだねぇ」
「ですね。何か気味が悪い」
「勘が良さそうで何よりだよ。事実この隊に加わった冒険者が幾人か消えてる。気をつけた方が良い」
その話を聞いて僕とラティは溜め息が出る。どうやら嵌められたらしい。明らかに嘘偽りある依頼内容だ。それに気付いて豹っぽい獣人にそのまま話すと、なるほどと頷いた。




