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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
新領域を目指して~荒れ地区域~

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越冬の荒れ地

 その後合流しラティたちには何とか追い返したと説明しその日は終わる。暫くは見回りと関所から外れた道を行く者たちの誘導をし、本格的な冬を迎えたので放牧地は休業となった。これから三ヶ月は一面雪景色になる。荒れ地も夜は極寒となり、生き物は皆冬支度を済ませて冬眠となった。但し何処の世界でも例外は付きもの。放牧地区域は関所を無視して町に来ようとすれば死が待っている。初級冒険者の稼ぎとして雪掻きは大切な収入源だ。そういう事情もあって放牧地区域は比較的安全。問題は荒れ地だ。


「お兄様、またですわ」


 馬車を操りつつ呆れているラティ。ブロンズ五くらいだと扱いやすいのかこき使われる。僕らより上のランクは関所間の指揮と警護をしているのでゆったりしたものだ。


「了解」


 僕はラティの言葉に同じ気持ちだけど感情を乗せずに答える。表に出したら誤射で打ち抜きそうだからだ。荷台に移りボウガンを設置し構えて弦を引く。少し離れた場所でアントウォームに追われている密猟者を助けるべく弦を離した。


「ナイスですわ!」


 荒れ地や砂漠は夜は山より厳しいけど、昼間はこの季節は過ごしやすくなる。特にこの町の近くなら山から風が下りてきて心地良い位だ。で、そんな荒れ地に許可無く立ち入り狩猟を行う者たちが激増する。彼らは越冬の準備を全くしてこなかった、要はキリギリスな冒険者や商人たちだ。


「お兄様、そのくらいで」


 数発アントウォームの頭部付近に弾を命中させると、怯んだアントウォームはすごすごと去っていく。この時期彼らも動きが鈍く、よっぽどでなければ人を襲ったりはしない。


「ラティあの男逃げるぞ」

「逃がしませんわよ!」


 ラティの手綱捌きは流石だ。馬たちも長い付き合いになったので呼吸が合ってあっという間に逃げる密猟者の馬車に近くなる。


「悪いな」


 生憎こんな時期にこの地域で鬼ごっこをやるつもりは更々無い。稼ぎにも影響が出るのでさくっと相手の荷台に飛び移り、背後に回ると首を腕でロックし落とす。直ぐに荷台へ移して馬車の手綱を握り、町へと帰還する。生き物たちは越冬する為に準備を済ませている。そうでなければ死ぬだけだ。そんな場所でどたばたすれば、彼らを刺激し一気に場が荒れてしまう。


何より荒れ地はこの時期の配送ルートとしてデラウンにとって大事な場所だ。特に北東の町の件があったので、この地域には今多くの冒険者が警備に当たっている。但し広大なので中々顔を合わせたりしない。


「ご苦労様です」

「そちらこそ」


 荒れ地側の町の入り口に到着し密猟者を引き渡す。取り調べなどは警備兵たちの仕事だ。挨拶をして馬車もそのまま渡す。警備室で記入された紙を貰ってまた荒れ地へ戻る。これを捕まえる度に繰り返す。勿論ずっと密猟者がいる訳ではないので、輸送中の馬車の警護もしていた。日が暮れるとやっと仕事が終わりとなる。この時間帯に荒れ地や砂漠を行き来するのは自殺行為だ。全ての熱を奪っていくような風と空気が場を支配する。


「すいません康久殿はいらっしゃいますか?」


 夜、ギルドで遅い夕食を取っていると、警備兵が一人入ってきた。


「どうなさいましたの?」

「例のアレでして……」


 申し訳なさそうに言う警備兵。僕は溜め息を吐いて食べかけのチーズパンとローストビーフをそのままに席を立つ。僕を見つけて警備兵は一礼し、先導してくれる。僕たちはギルドに所属していて警備兵は町に所属している。町の管轄ではあるけど有事の際の為に警備兵は割けないという話で、ギルド長と町長は喧嘩になっている。ギルドも税金を払っているし、冒険者も払っている。町から依頼はあるけど料金は安い等々ギルド側の不満もあってそれが噴出した。それでも互いに支えあわなければならない現実は変わらないわけで。


「康久、すまないなあがったばかりなのに」

「いいえお役に立てるなら」

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