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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
新領域を目指して~放牧地区域~
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依頼をこなす日々

ゲオは全くこちらに構わず森を破壊し土や穴をこじ開け動物やモンスターを掘り起こし飲み込んでを繰り返していた。ちょっと気が引けるけど、後ろから思い切り斬り付けた。返り血を浴びないよう直ぐに距離を取る。ゲオの背中に付いた傷からキラキラした水が流れ、地面に染み込んでいく。


「お兄様!」


 ラティの声に我に返る。その綺麗に流れる様子に見惚れてしまった。ゲオ全体を改めてみるけど無視して同じ行為を続けていた。ただ背中の傷から水が流れ続けていてその影響か動きが鈍くなっている。


「一体こいつは何なんだ……」


 結局そのまま見続けてしまい、やがてゲオは内部の水を吐き出したのか地面に突っ伏し皮だけが残った。僕たちは仕方なくそれを持ってマオルさん達の小屋まで行きそこから馬車に吊るして町に戻った。ギルドに提出するとそのまま受け取ってもらい依頼達成となった。


報酬はブロンズ五の報酬だったけど、強敵を倒したって感じじゃないので貰って良いのか戸惑っていると


「貴方たちにはあれを見て欲しかったから、ギルド長と相談して依頼を出したのよ」


 とミレーユさんに言われた。あれが何を意味しているのか分からないけど、どれを見てもあの生き物が一番不可解で生物の研究をしている学者の中には、科学の発達で星を汚されたのでそれに対する白血球のようなものではないかと言う人も居るらしい。


「各地で報告が相次いでいるわ。この調子だとそのうち上位固体が現れるかもしれない」

「……気をつけます」


 今後も討伐依頼を出すと言われた。相手はこちらを無視しているし、叩くのは通用しないけど斬るのは通じるので刃物で斬ればすぐ終わる。だけど皆気味悪がって受けようとしないらしい。ギルドランク上位者の責務にするしかない状態まで行ってしまったようだ。


「あまり良い気分ではありませんが、ランクが上がるなら仕方ありません。誰かがやらないといけないようですし」

「だねぇ。報酬は次回から安いけどギルドへの貢献度を増やしてくれるって言うし、この調子ならシルバーまでいけるかな?」


「どうでしょう。上手くいけばいけるかもしれませんわね。シルバーから先が大変なようですわ。二依頼も難しくなるし簡単な依頼は町などから直接の依頼は別として、ランクが上がらなくなる。私たちも気を引き締めていかないと」


 ギルドのテーブルで二人でお茶しながら話す。放牧地に荒れ地と二つ領域を入れるようになった。狩猟も生態系保護の為に必要以上は駄目。そして許可を得ずに領域に侵入して荒らしている人間が居るのでそれの取り締まりも常時依頼としてあって、捕らえて突き出せば報酬が出る。


そういうのもあってマオルさんの家の近くに小屋を建てたんだ。狩猟で取った野生動物の肉を処理するのも教えてもらっているので、行き来するよりは時間が遅ければ泊まれる場所が欲しかった。いつまでのマオルさん達の生活領域を占拠のは心苦しいし。


「兄貴!」


 ゲオ討伐初日から暫くは放牧地の観察や鉱山の警護などの依頼をこなし、数週間が過ぎたある日の朝。二人でのんびりギルドのカウンターで他愛の無い話をしていると、ギルドに誰かが飛び込んできた。見ると例の荒くれ冒険者さんだ。


「あ、居た居た! 姉御兄貴! 良かった居てくれて!」

「……いつから僕らは姉御兄貴になったんだ」


「何ですの? 騒々しい」

「す、すいません。例の小屋、大分形になってきまして!」


 僕とラティは顔を見合わせ輝かせる。ついに小屋が完成したようだ。馬車を出し荒くれ冒険者さんとギルド審査員さんと共に放牧地に向かう。するとそこには設計図通りの小屋が出来ていた。僕たちは感嘆の声を上げつつも、中を見ないとと思い中も見る。素晴らしい出来だ。一月弱で完璧ではないにしても雨露凌ぐのには全く問題ないレベルの小屋が出来た。


「こちらでもチェックしましたが依頼通りに出来ていると思われます。今後のケアは必要でしょうが、依頼人から預かった報酬をお渡ししますね」

「お願いします」


「あ、ありがとうございます!」

「え、こんなに?」


 五人はギルド審査員さんから渡された小さな袋を開けて中を見る。前回の銀貨十枚を五人に分けて渡した。材料費こっち持ちで足が出るけど労いの意味も込めて奮発した。日当銅貨五百はこの辺りでの肉体労働の基本給より良い価格で、ギルド審査員さんからも即OKが出た。


日当についてあまりに低いと問題があるのでギルド審査員さんは相手との交渉が大変らしい。それも給料のうちと言っていたけど楽じゃないよなぁと思った。

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