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異世界狩猟物語  作者: 田島久護
新領域を目指して~放牧地区域~

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世知辛い話と仕事の紹介

 肩透かしも良い所だ、と思って息を吐きながら天井を見上げて直ぐに向き直る。


「報酬の方も不味いですよねやっぱり」


 そう言うとリュクスさんは苦笑いをしながら頷いた。結局大変だった割に報酬は銀貨十枚。派遣の仕事の日当レベルしかない。


「私が言うのもなんだが、我々もギルドも覚えが良くなった、という話だ」

「まぁしょうがないですよね」


 何か揉め事になれば町が対処するんだから多少は仕方ない。今後町が得をしたらその分また覚えが良くなるって感じだ。


「とは言え流石にヴァンパイアの件の報酬も安すぎる。議員の中からも少し酷すぎるのでは? という声もあってね。これを」


 目の前に一枚の紙が出された。よく見ると放牧地一帯の狩猟権と書いてある。正直素直に喜べない代物だ。町公認として行動範囲が広がるのは良いけど、良い様に使われるだけな気がする。


「基本マオル殿が管理をしているので、特に君に対して義務は無い。勿論生態系を乱したりするのは駄目だし、鉱山も見つけた場合は採掘権を買ってもらわないとならない。これの特典としては、特別任務が出るのと報酬が他よりも高い」


 危険度も上がるって訳だ。他よりも高いとは言うけど旨味も薄い。税金でやりくりしてるからしょうがないと言えばしょうがない。僕も税金払ってるし、この町の議員は議員報酬は無く名誉職だ。なのでやってるのは地元の名士。それだけ絞っても渋いのだから経済がまだ上向きじゃないんだろう。


「景気が良くなって報酬が増えるのを祈ります」

「そうだね。私たちもそれを望んでいる。君も知っての通り議員たちも地元名産品の拡販や市場の拡大なども色々対策している。マダムにも御協力頂いているので良くはなってきてるんだ。君のもたらす素材も大いに貢献してくれている。故に皆の覚えも良い」


「それでこの報酬額は冒険者側としてはしんどいですね」

「名誉の部分が多いからね。ただ名誉というのは大事だ。それ自体が直ぐ腹を膨らませないが繋がる」


 でなきゃ引き受けないんだよなぁ。僕は苦笑いしながら頷き今回の件はこれで御終いになる。マオルさん家のガラスの保障と壁の補修は町が負ってくれたので、貰った銀貨十枚をラティと分ける。その日はのんびり過ごして次の日。馬車にお土産を積んでマオルさんの家まで行く。


「まぁご覧の通りよ」


 家の補修は済んでいた。ただ放牧地の先に小屋が出来ている。


「警戒を強めた」

「そうだ。野郎が口を割らなくても事件が起きたのは確かだ。傷付いた白い狼も居る。ただ町の境までは行けない。間違って相手を刺激するのも不味いからな。様子見するより他無いって訳だ」


「長期戦になりそうですね」

「お前さんもこの一帯で動いてて何かわかったら知らせてくれ」


 お土産を渡しマオルさんとマミさんとラティでお茶をして帰る。この一帯で動く場合マオルさんたちに挨拶をしてから潜る為、僕も小屋を建てたいと言う相談もした。


「こんにちは」


 一旦ギルドの住まいに帰ってゆっくりして夕方、外に出るとギルド前に屯していた冒険者たちがいて声を掛ける。


「げっ」

「げっ、とはご挨拶な」


 その面子はこの町に来たとき僕らに喧嘩を仕掛けてきた人たちだ。彼らのレベルはブロンズ一。


「何か用かブロンズ五の康久さんがよぉ」

「仕事欲しくない?」


 その言葉にそこに居た五人は目を丸くして見合う。


「な、何のつもりだ!」

「何のつもりも何も仕事頼みたいんだけど。報酬も出すし」


 僕の言葉に信じられない、と言った顔をしている。


「ちょっと手が足りなくて。知らない人よりは知ってる人に頼みたいな、と思って。それにこれ上手く言ったら更に仕事があります」

「ま、マジかよ」


 僕は微笑みながら頷く。半信半疑ながらも仕事が貰えるならと僕に付いてギルドの中に入る。


「お兄様捕獲しましたのね」

「引き受けてくれるみたいだよ」


「有難うございます。日当は一人銅貨五百で如何?」


 その言葉に唸り声を上げる。


「な、内容は」

「簡単ですわよ。貴方、この間町外れの小屋の建築に参加してましたわよね? お兄様に最初に喧嘩売った方。貴方に指揮をお任せしますから、この図面通りの小屋を建ててくださいまし。少し改良しても良いですわ。材料費はこちら持ちで。お兄様が放牧地一帯の狩猟権を頂いたので、今回の仕事上手くやっていただければその後も……」


 盛り上がる荒くれ冒険者たちと悪い顔して微笑むラティさん。こういう紹介から仕事を通して繋がっていき、評価される仕事をすればランクも上がり更に仕事の幅も広がる。怠けていてもブロンズ初級であるゼロ帯でも仕事はある。ただとても簡単なものでほぼ福祉の為に仕事、あってもなくてもいいもので仕事という形をしているだけの代物だ。


なにくそ、と思う者とただその日暮を出来れば良い者と其々に合った階層がこの町にもあった。僕が見た感じこの人たちはなにくそと思ってがむしゃらにやっている人たちに見えた。


「よ、喜んでやらせてもらうぜ康久さん!」

「よろしくお願いします。出来上がり楽しみにしてますよ」

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