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(旧)レターパッド  作者: センター失敗した受験生
第三章 タテノツキ・フェスタ編
38/63

身に染みる平和

最近寒くなってきましたね

風邪ひかないようにせねば

第二十五の旅「ベッドに入れる喜びを」


−シルド城−


正と愛はシルド城内にある客室に案内されていた。


向かいには笑顔のワンと恐ろしい喧噪のドグが座っている。


確かに笑顔だが、それでも少し難しそうな顔で、ワンが話を切り出した。


「それで、結果的にアキラもレイスも見つからないという事ですか…」


その笑みが苦笑いである事に気づいたのはこの時だ。


「あぁくそったれ!レイス一人ならこんな苦労はしねぇのによぉ。あいつら本当にどこに行きやがったんだ!?」

「いつもの屋根上は確認したの?」

「おいおいワン、脱走中の奴等がのん気に花火なんて見てたらそりゃアホだぜ」

「確かにそうだね…」


どうやらどちらもお手上げのようだ、二匹とも探し回った風な見た目をしている。


事実、僕らがパレードを見ている間にも都内を走り回っていたのだろう。


「あの、本当に瑛君がご迷惑をおかけしてすみません」

「本当だよ全く、あいつをちゃんと見とけっての」

「大丈夫ですよセイ。悪いのはドグの見た目なんですから」


ワンはフォローしてくれたのだろうか、それともドグをからかいたいだけなのだろうか。きっと前者だろう。


とりあえずドグはワンの方を向き、殺気立っていたが、ワンはそれを軽くあしらう。


慣れたものだ。


「これから私達、どうすれば良いのかな。導衆君と、会ったことはないけどレイスさんは見つからないし。導衆君がいないとこの世界でどうやっていけば…」


(あ、あれ。一応まだ僕がいるんだけどな…)


どうやら僕は明日見さんから無意識に戦力外通告をされているようだ。彼女の弱々しい表情が僕には少し辛かった。


「そうだね、瑛君がいないと答えにたどり着くのは厳しいかもしれない。でも、警備の人達が今外を見回ってくれてるし、門番を通さなきゃ外に出られないんだから、きっとすぐに二人とも見つかるよ」

「そうですね、門番にはしっかりと伝えてあるので問題ないでしょう。今夜もう遅いので、お二人はこの城でゆっくり休んでください。部屋は用意しています」


そう言うとワンは懐から二つ鍵を取り出す。


「え、良いんですか!?僕らそんなつもり…」

「大丈夫ですよ。アキラと話はつけてありますから」

「導衆君が?」

「えぇ、彼は優秀です」


僕らはワンから部屋の鍵を受け取ると、今日はもうゆっくりと休むことにした。


一日ぶりの布団に入れることに明日見さんも嬉しそうだった。


瑛君は一人で色々事を進めようとしている。彼は僕らを信用していない訳ではなさそうだけど、初めから単独で情報を集める気だったのだろう。


これまでに見た事のないほど綺麗な部屋で、僕らはそれぞれ深い眠りにつくことにた。


瑛君は今も王女様と逃げ回っているのだろうか、明日になればちゃんと会えるのだろうか。僕は瑛君の賢さを知っている。それが余計に不安を煽った。


辺りを見回してみると、どうやら生活用品は僕らの世界とあまり変わらないようだ。


この世界にも時計はある。


今は午後九時だ。人々の就寝は早いらしい。


健康的だが、今の若い僕らには辛いだろうなと、僕は一人で考えていた。


明日は何が起こるんだろうか、どうなるのだろうか。そんな事は一切分からないが、今は不安でも前を向くしかないのだろう。実際運良く僕らはこうして安全な夜を迎えられている。瑛君もきっと無事だろう。


(平和ってこんな状況になると、身に染みてくるなぁ…)


今日のパレードを思い出しながら、何かいい夢が見れることを期待し、僕は静かに眠った。

ちゃんと正と愛は違う部屋で寝てますよ

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