つまらない
物語り進めたいけど日常も書きたい
第二十四の旅「これがうちのやり方だから」
-ライプ ピンピ宅-
「もう、今日は、動けねぇなぁ…」
「四時間、ぶっ続けって、部活じゃないんだし…」
「ルイさん多分、適度ってのが、分かんねー、タイプだわ、あれ」
「人と触れ合ってないと、誰でも、そうなっちゃうよね」
「とりあえず、今は、休もうぜ」
「賛成…」
隼人と水希は昼のトレーニングの後、やる気満々のルイに呼ばれ三時から七時まで訓練をさせられた。
(つーか明日からじゃねぇのかよ…)
風呂から上がり、飯を済ませ、布団に顔をうずめながらルイの言葉を思い返す。
水希も同じように、疲れのあまりかだらしのない格好で大の字に寝転がっていた。
隼人は一瞬妹の雪を思い出し、家族の事が思いやられた。
「なぁ、水希」
「なぁにぃ〜」
「俺ら、いつ頃になったら帰れんだろうな」
隼人は父が家にいないときのだらしない家族のことを気にかけた。ちゃんと朝起きれているのだろうか。
「まだこっちに来て二日目でしょ、そんな甘くないわよ」
「そうだけどよ、心配じゃねぇのか?家族の事」
「なになに、ホームシックってやつ?
「ちげぇよ、真面目に言ってるっつーの」
「真面目にかぁ」
水希は天井へ両手を伸ばし、勢い良く身体を起こす。
「心配な訳じゃないよ。多分お父さんも困ってる。でも、家族の事忘れちゃうくらい、私はこの世界で必死なの。隼人みたいに余裕なんて持てないよ」
「…また書いてんのか?全部」
「うん、これがうちのやり方だから」
そう言うと水希は鞄の中からノートを取り出す。
「ライプにいる五十七人の事、せっかく居させてもらうんだからしっかり心に残さなきゃね」
彼女がノートを開くと、そこには沢山の名前と特徴や、尋ねて知ったのであろう皆の好みなどが書いてあった。
「まだ二日目なのに、よくそんだけ書けるもんだな」
「うちは隼人みたいにスラスラと喋ったりなんて出来ないからさ、皆のことよく知ってそれに合わせようかなって。今日は十人の人とちゃんと話せたんだ」
水希はノートの一ページを大切にめくっていく。
「…そんなに相手の事知って、疲れねぇのか。会話なんてその場しのぎであわせちまえよ」
「そうしたいけどさ、うちは隼人みたいに器用じゃないから。こうでもしないと言葉を返すだけで精一杯」
「俺と話す時みたいに駄々こねとけば良いだろ」
「それは駄目」
「何でだよ」
「何ででも」
水希はいつものようにそっぽを向く。
「まぁ、俺はお前が羨ましいけどな」
「え、何で?」
「自分に足りないもん良く理解して、それに向き合えてるだろ」
「隼人は、向き合えてないの?」
「かもな」
隼人はどこか触れにくい雰囲気を発している。
「何か困ることあったら言ってよ、力になるから」
「別にそこまでで深刻でもないから、気にすんな」
「ふーん、じゃあそうさせてもらうけど」
水希はそう言うと腕を後ろに回して組み、胸を張りながらゆっくりと腰を曲げた。今は外用の服ではなく部屋用のTシャツであるため、比較的ラフな状態だ。
「にしてもずいぶん慣れたもんだな。さっきはこの服嫌だとか言ってたのによ」
「え、何その言い方。こっちジロジロ見ないでよ」
「なっ、いきなり態度豹変させんなよ。別に見たって問題ねぇだろ!?」
「問題ある、だってっ…」
「だって?」
(だって、この服なんか妙にフィットしてきて身体のラインがはっきり分かっちゃうっていうか、恥ずかしいっていうか…)
「ううん、何でもないわよ!今からまた色々書くからさっさと寝て。疲れてるんでしょ」
「何でいつもこんなに濁されんだ?」
隼人は誰かに答えを求めるかのように言った。
「気分屋なの、許してよ」
「冗談だよ、もう慣れたっての。がんばんのも良いけど、ちゃんと睡眠は取れよ」
「隼人は早寝すぎ。でも、ありがとう。少ししたらうちも寝るね」
「あぁ、それじゃあおやすみ」
「うん、おやすみ」
隼人が寝付き、部屋が静まり返る頃、水希は黙々とノートにこの世界のことを書き込んでいった。




