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(旧)レターパッド  作者: センター失敗した受験生
第三章 タテノツキ・フェスタ編
36/63

約束

もうすぐ三章も終わりごろですかね、自分でも先が見えません(笑)

第二十三の旅「詳細は後ほど!」


「私はこの国、タテノツキの王女。レイス・ハートマイトです」


 予想外の発言はもう慣れたと思ったが、まだまだのようだ。


「…本気で言っているんだよな?」

「はい、本気です」

「はぁ…。あぁ、全部繋がったよ。市場区でのことも、宿場区での対応も、なぜ家のことを深く教えなったのかも」


 瑛は今日の一日の流れをダイジェストで想像し、辻褄があっていくのを理解していった。


「騙してしまったこと、本当に悔やんでいます。でも、あなたがいなければ追っ手を振り切れませんでした。だから、せめてこの景色をお礼にと見せたかったのです。怒って…いるでしょうか」

「……怒ってはいない。俺が素性を言わなくても良いと言ったのも確かだ。でもこんなに大事なことだったなんて…。俺はてっきりどっかの御令嬢レベルとばかりに思っていたんだぞ」

「御令嬢……。はい、正解ですよアキラ、やっぱり凄いです!」


 どうやら本当に悪気もないらしい。


「いや、誰だって見れば分かるだろ。もしかして気づかれてないとでも?」

「えぇ、分かることなのですか!?」


 そしてどうやら本当に世間知らずのようだ。


「……。もう良い。それで、何故こんなことをしているんだ」

「はい、ええとですね。外の世界が見たくて警備の少ない本日、脱走を計画したのです」

「脱走だと、王女が外の世界を見るためだけにか?」

「えぇ」


 瑛は脱そうという言葉をこんなにも間近で聞くとは思ってもいなかった。せいぜいフィクションの世界が似合っている言葉なのだが。


「結局訳ありみたいだな。あのイヌはそれを止めるための警備兵か」

「いえ、ドグは兵士などではありません。私の大事な家族です!」

「…家族か」

「はい、家族です」


 家族と言う響きに、すでに懐かしさを感じていながらも、彼女の他者への思いの素直さを見せ付けられた気がした。それにしてもだ、


「でもあの見た目からして、よく戦場に駆りだされてるんじゃないのか?」

「戦場?」

「アキラは何を言っているのですか。戦争なんてこの世界では何十年も起きていないとお父様は言っていました」


(……そういうことか)


 

「あぁ、すまない。冗談だよ。傷だらけだったから何してるんだろうと思ってな」

「なるほど。ふふ、ドグはドジでいつもよく転ぶらしいのです。ワンというもう一人家族がいるのですが、よく話を聞かされています」

「確かに逃げるときもドジを踏んでいたな、見た目ってのは信用できないということか」

「えぇ、ですから、彼にしてしまったことは気にしないでください」


(そうは言われても、やはりこれは悪いことをしたな…)


 瑛はレイスが何故外に出してもらえないのかを確信し、彼女の無垢を傷つけぬように、真実を隠すことにした。それがきっと周りにとっての願いなのだろうと信じて。


「それで、これからどうするつもりなんだ」

「決まっています、外の世界を見るのです!」

「そうか、どこまで行く気だ」

「行ける所までですね」


 彼女のアバウトな表現には確かな夢が詰まっている。どうしたものだろうか。


「すぐにお前を保護しに国が動くぞ」

「それでも私は行きます、アキラと共に」


 レイスの思いはやはり揺るがない。それも大事だが、何か一つ聞き捨てならない事があるのに瑛は気が付いた。


「本気って事か、頑張れよ。……ん、今俺と共にと言ったか?」

「はい、これからよろしくお願いしますね、アキラ!」


 なぜか当然のことのように話が進められている。


「いやちょっと待ておかしいだろ、何故俺が入っている。一人で行けよ」

「ふふ、残念ながらアキラは付いてくるしか選択肢がないのです」


 レイスは勝ち誇った笑顔を見せている。さっきの大人びた表情が嘘のようだ。


「何を言っている。お前を連れ帰れば何の問題も」

「残念ながらあなたは我が国の兵士に抵抗し、更には市場を王女の手を引いて荒らしていきました。ドグはこの国でも顔が広く皆から慕われています。客観的に見ればどう見たってあなたが悪者で王女誘拐犯なのです。ほとぼりがさめるまであなたはここにはいれないでしょう」


 彼女の言い分によると、瑛は現在反逆中な訳であり、今戻れば罪として扱われる可能性もありえるし、そんな彼をよく思うものなど誰もいないだろうと言うことだった。確かにこれでは都ではとても居づらい。だが、これではまるで、はめられている。


「ほとぼりって、騙すつもりはなかったと言っていたのに、結局はめたのか!?」

「いえ、私はそんな非情な人ではありません。元々は一人で行くつもりでしたもの。でも、あなたに出会えた。これはもう運命なのです」

「そんなもの信じるだけ無駄だ。それに一度見ただけのやつの顔など誰が」

「その耳にかけている物が民の記憶に残っているでしょう」

「眼鏡……。」


 何故どいつもこいつも眼鏡なんだ。


「そういうことです、さぁ、私の手へとあなたの手を添えてください。先ほどはあんな状況でしたからできませんでしたが、約束の証です」


 そういうと、彼女は手も平を瑛へと差し出した。


「…」

(考えろ、大丈夫だ。どうせすぐに二人で行っても結界で立ち止まって確保されるだろう。それに、この国に恩を売る気もない。ここでの一番の目的である天野と明日見の身柄の保証、それはもうすんだ。情報収集は他の街でも出来るだろう。なによりレイスは自分の意志を結構通してくる。ここで諦めさせるのは難しいだろう。かといって一人にさせるのも心配だ。さっきの闘技区のことを思い出せばもっと心配だ)


「アキラ…?」


 少し長く考えすぎたのだろう、レイスが首をかしげる。


「ん、あぁ、すまない。負けたよ、どこへでも連れてってくれ。何のためかは知らないけどな」

「理由も詳しく話せず、不満はあると思います。それでも私はアキラなら信じられます」


 そういうと彼女は瑛の手を握り、嬉しそうな笑顔を見せた。


「おいおい、追い込んでいるのか。まぁ確かに光栄なことだが、そう易々と人を信じるなよ」

「友達を疑う人なんていませんよ」

「た、確かにそうだな」


 (信じる…か)


 二人が話す間にも空では何発も花火が上がっていき、その数にはもう終わりが近づいてきた。今が絶好の機会なのかもしれない。


「よし、そうと決まれば、早くここを去ろう。策はあるのか?」

「ふふ、私は今日の日を、昨日から楽しみにしていたのですから」


 どうやらレイスは予想以上に考えているらしい。怪しい笑みを見せながら瑛へ計画の内容を話すと、彼は酷く驚いた。


「無計画じゃないんだな」

「私、これでもちょっと賢いんですからね!?」

「冗談だよ、その言葉を信じさせてもらうぞ」

「ふふ、もちろんです」

「じゃあ、まずはここから降りないとな」

「お、降りる…ですか。そうだ、アキラ」


嫌な予感がする。この空気はどう考えても、何かさせられる。


「また、先に下へ降りて、私の身体を上から受け止めてもらえたり出来ないでしょうか」

「嘘だろ…」


 一日に何度と訪れる困難に瑛は振り回されながらも、終わりそうなパレードの中、二人は都を出るために屋根上を後にした。

瑛が一番主人公している気がしなくもないです

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