表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
2章 - 天に溺れる罪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/63

第52話 喜べない釈放

 葵に夕樹と会うことを懇願(こんがん)された翌日、蓮と晴翔は霊魂管理局に呼び出されていた。

 理由は察しがついている。それは喜ばしいことのはずなのに、蓮と晴翔の表情は固い。


「郷間の稼働停止を解除する。晴翔は事務に戻るように」


 稼働停止を告げたときと同じ会議室で、変成王は淡々と告げる。蓮がちらりと晴翔を見ると、晴翔は困ったように眉を寄せていた。

 蓮は視線を変成王に戻す。


「犯人はわかったんですか?」

「いいや。だが一昨日、また浮遊霊が天道に入ったことが確認できた。そのとき郷間は自宅にいることが、晴翔の報告でわかっている。もう監視は必要ない」

「でも……」


 晴翔が何か言いかけて口を(つぐ)む。懸念しているのは当然、晴翔と夕樹が話す機会を失うことだ。

 変成王は机にひじを立てて指を組み、不思議そうに晴翔を見る。


「何か問題があったか? 一応こちらでも郷間の魂を監視して、晴翔の報告と食い違う点はないことを確認しているが」

「問題は、ない、けど……」


 晴翔の態度はいまいち煮え切らない。夕樹には会いたいが、その約束を霊魂管理局に知られたくないのだろうと、蓮には容易に想像がついた。

 しかし、蓮にも晴翔に監視を継続させる理由は見つからない。夕樹と会う約束をしていることを話せば尚更(なおさら)、晴翔は事務に戻されるだろう。


(そもそも晴翔を事務担当にしたのは、兄貴を探しに行かせないためだろうからな……)


 夕樹の失踪について、蓮は表面的な情報しか知らない。しかし晴翔が夕樹を探していることは、普段の態度から明らかだ。

 蓮は変成王に目を向け、ゆっくりと口を開く。


「わかりました。少しだけ、晴翔と話す時間をいただけますか?」

「わかった」


 変成王は理由も聞かず、すぐにうなずき部屋を出る。扉が閉まるのと同時に、晴翔は勢いよく蓮に体を向ける。


「蓮、どうしよう……」

「どうしようもないな。俺は沙斗琉ほど口が上手くないし」

「嘘とかつかなそうだもんね」

「人狼でなら」

「ゲームのノリでなんとかできない?」

「無理だろ。相手は地獄の裁判官だぞ」

「だよね……」


 しばらく沈黙が続く。蓮も晴翔も、変成王を納得させられる理由は思いつきそうにない。

 先に沈黙を破ったのは蓮だった。


「……俺と葵の二人で会ってくる」


 誰にとは、蓮は言わなかった。万が一誰かに聞かれていたとき、夕樹の名前を出したら面倒なことになりかねない。

 晴翔は不服そうにうつむき、口をすぼめる。


「でも……」

「下手な嘘ついて、俺まで冥界に拘束されたら困る」

「それは、そうだけど……」


 晴翔が納得する様子はない。しかしそんなことは蓮も想定済みだ。


「飲み込めないのはわかるが、今は怪しまれないことの方が大事だ。聞いておきたいことを教えてくれ」


 蓮が小さな手帳とペンを晴翔に渡す。現世の物に触れるのが苦手な幽霊もいるが、晴翔は得意な方だと蓮は感じていた。

 蓮が思った通り、晴翔は手帳とペンを取り落とすことなく受け取る。晴翔は少し丸い文字で、すらすらと文字を書いた。

 ノックの音が聞こえ、晴翔は手帳とペンを素早く返す。蓮はそれをさっと受け取り、ポケットにそっとしまった。

 ガチャリと扉が開き、変成王が顔をのぞかせる。


「そろそろいいか?」

「はい」


 蓮は何事もなかったかのように返事をする。晴翔はまだ不満そうな様子だが、それは想定の範囲内なのだろう。変成王はいぶかしむことなく部屋に入ってくる。


(最初から俺の監視より、晴翔の様子見が目的だったのか……?)


 魂を監視できるのなら、晴翔が蓮を見張らずとも問題はなかったはずだ。本当の目的は蓮の監視ではなく、晴翔を回収に戻せるか試していたのではないかと蓮は思う。そしてきっと、晴翔はその試練を突破できなかったのだろう。

 変成王は扉の近くで立ったまま、蓮と晴翔を見る。


「話は以上だ。わざわざ来てもらって悪かったな、郷間」

「いえ……」

「晴翔、事務室に戻るぞ」

「……はぁい」


 晴翔は不機嫌を隠しもせずに返事をする。変成王が部屋を出ると、それに続こうとした晴翔がちらりと蓮を見る。その瞳には後ろ髪を引かれる思いがにじみ出ていた。

 蓮は晴翔にまっすぐ視線を返し、小さくうなずく。晴翔は何かを堪えるように口を引き結び、蓮にうなずき返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ