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霊魂管理局 地縛霊回収課  作者: わしお
1章 - 鎖の花が咲く夜に

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第20話 霊魂管理局本部

 冥界。そこは死した魂が向かうべき死後の世界。魂は十人の王による裁判を受け、生前に犯した罪を償い、新たな世界へと転生する。

 霊魂管理局本部は、その冥界の中心部にある巨大な建造物だ。寺院のような(おもむき)ある外観は、数千年以上前、「霊魂管理局」という名称が生まれる前から姿を変えていないという。


 高さ三十メートルはあろうかという巨大な正門へ、死した魂が列をなして歩いている。その反対側に位置する裏門の前に、突如として巨大な金庫のような扉が現れる。ギィという鈍い音を立てて扉が開き、蓮と沙斗琉は冥界の地に降り立った。

 むわりと立ち込めた熱気に、蓮は一瞬顔をしかめる。湿度は真夏の東京より低いが、長袖のパーカーで来るような気温ではない。


「あっつ……。変わんねーなここは」

「来たことあるの?」

「一回だけ。雇用契約書書きに」

「あー、なるほど」


 蓮は自身が開いた扉を閉じ、裏門の前に立つ門番に名札を見せる。門番が道を開け、蓮と沙斗琉は霊魂管理局本部へと足を踏み入れた。

 歴史ある外観とは裏腹に、内部は現世でよく見るオフィスのように近代的な造りをしている。冷房も効き、外ほどの暑さは感じない。無機質な廊下を歩きながら、蓮と沙斗琉は(せわ)しなく走る獄卒(ごくそつ)とあいさつを交わした。


 指定された部屋へ向かう途中、裁判中の魂が過ごす区域を通りかかった。机と椅子(いす)と本しかないそこでは、死者たちが祈るように手を合わせている。険しい表情の彼らは、判決を待っているのだろうか。


「えっ、蓮さん!?」


 突然聞こえた高めの男性の声に、蓮と沙斗琉は同時に振り向く。そこには眼鏡をかけた少年が、大きな瞳をめいっぱい見開いて立っていた。


(まもる)


 野呂(のろ) (まもる)。一カ月と少し前、蓮と沙斗琉が冥界に送った幽霊だ。驚いた様子で駆け寄る守に、沙斗琉は緩く手を振った。


「久しぶりだね~。元気にしてた? って、死んだ人に言うのも変だけど」

「あ、はい! 僕はなんともないですけど……。え? 蓮さん、死んじゃったんですか?」

「死んでない」

「あれ? じゃあなんでここに??」

「蓮の扉って、実は生身でも入れるんだよ」

「あっ、そうなんですね!? よかったぁ……」


 守は胸に手を置き、ほっと息をつく。


「また来世で、って言ったのに、もう会っちゃいましたね」

「いいのいいの。守くんが元気そうで、お兄さん嬉しいよ」


 守が照れくさそうに笑みを浮かべる。柔らかな雰囲気の守につられて、沙斗琉は自然と口元が緩んだ。


「裁判はどう? 順調?」

「次の裁判が少し遅れているみたいですが、順調だと思います! あんまり怖くも痛くもないですし……」

「あ、生前の行いが良かった子だ……」


 沙斗琉は口元だけ微笑んだまま、遠い目をする。苦い思い出があるのは明白で、守は違う話題を探して視線を彷徨(さまよ)わせた。


「次の裁判って誰だ?」


 守が話題を見つける前に蓮が尋ねる。守は助かったと言わんばかりに、蓮に笑顔を向けた。


閻魔(えんま)大王だと聞いています。今更ですけど、本当に冥界に来たんだな~って感じがしますね!」

「……まあ、そうだな」


 歯切れの悪い蓮に、守はきょとんとした顔で首をかしげる。


「あれ……? 死後の世界と言えば閻魔大王じゃないんですか……?」

「普通はそうだろうな……」


 蓮は眉根(まゆね)を寄せ、ぽりぽりと後頭部を()く。


「あいつ、大王とか言われるほど立派な奴じゃないから。あんまり期待するなよ」

「え? あ、はい……」


 沙斗琉が苦笑いを浮かべて蓮を見る。守はよく意味を理解しないまま、小さく首を縦に振った。

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