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奴隷か、鍋か、焼肉か

ページを開いてくれてありがとうございます。皆さまのご閲覧に報いられるような、面白い話を書けるように頑張ります!!

 顔を打つ水滴しずくの冷たさに、重いまぶたを開ける。まず一番に見えたものは、灰色の雲に覆われた空だった。降りしきる小雨は、髪と制服で固まりかけている血を溶かしていた。


(これが、異世界?)


 天を仰いで寝転んでいた。

 徐々に、はっきりしていく頭を持ち上げ、とりあえず上半身を起こし、前方を見る。

 そこは森の中の一本道だった。木々は緑に生い茂り、道は腐葉土の上にできた獣道。整備のたぐいは一切されていないように思える。


 そのぬかるんだ泥の上に私はいた。リスポーン地点は、ここであっているのだろうか? なかなかに意地悪なところから、スタートすることになった。のっけから全身が泥々である。スマホは浸水してないだろか? まあどっち道、電波の整備されていないところでは対して使えないだろうが。


 めまいと、血と、泥で重くなった身体で、立ち上がる。上靴で泥を踏みつけたくないが、仕方がない。とりあえず雨から逃れようと、近くの木を見上げた時だった。


「リャマチィーガ!!」


 たぶん、無理矢理カタカナに変換すると、こんな感じになると思う。聞いたことのない言葉が、野太い声に乗って私の背を叩いた。驚いて振り返ると、そこには粗末な身なりのオジサンがいる。その横には、大きな豚のような……毛の少ない熊のような?動物がいて、大きなリヤカーを引いていた。


 私の身長は、日本人女性の中では、やや高めのつもりだが、オジサンもそれぐらいの高さだった。

 この世界の平均とかわからないけど、こんなものなのかな? 何にせよ先程の声に驚いた私は、どうしたいいのかわからないまま、フリーズしてしまう。


 オジサンは私の血に染まった制服を見て、やや警戒した声で話しかけて来た。


「$£△%✖︎○π*+◎?(解読不能)」


 解読不能な外国語だった。いや異世界語か。この時点で私は前提を勘違いしていた事に、やっと気がついた。私が今まで見てきた異世界モノでは、言葉は当然のように通じていた。何か不思議な力みたいなもので、言語の壁は初めから、殆ど問題ないレベルまで、撤廃されていたはずなのだ。


 しかし、私の場合、言葉すら通じないところからなのか。何にせよ、私の頭はすでにかつてないほど混乱していた。


「あの……。ちょっと…、困ってて。…私は………」


 何とか絞り出した言葉を聞いてか聞かずか、オジサンは私の身体を値踏みするようにジロジロと見ている。


「▲◎✖️&+☆(解読不能)!!」

 

 そして何か合点したようにこちらに近づいて来た。私の腕を掴もうとするかのように手を伸ばしながら。オジサンの背は私と同じくらいだから、よくある大男が迫ってくるようなシチュエーションに比べたら、インパクト弱いかもしれない。けど、なんて言うか……ヤバイ感じの人が近づいて来るってマジで怖いんだよ!! 無意識に筋肉が固まってしまう感じ。伝わってる? あとオジサン結構がっしりしてる。突進されたらアバラ骨折れるかも。


「……ッ!」


 私は、何も言わずにくるりと180度回転、そのまま全力で逃げ出す。100m走クラス女子7位の脚力を舐めるな! でも、オジサンの脚は、クソ速かった。4秒もしないうちに、肩にオジサンの分厚い手が掛かり、私は泥道の上に仰向けに引き倒された。


「ゴハッ!」


 ……正直、異世界人の脚力舐めていたわ。そりゃそうだ。私は毎日、エアコンの効いた電車で登下校しているけど、こっちの世界の人間は基本は歩きか、動物に乗るぐらいしか移動手段無さそうだし。体力の差は歴然だ。あと、肩と背中がめちゃんこ痛い。それからもう一つ、痛むってこんなに焦らされるんだ。

 えっ……これまずい?


「☆+◇☆◼︎◎(解読不能)」


 オジサンは私の腕を掴むと荷車にまで引いていく。


「……! っぁ、やめっ、やめやめやめ止めて….くだ…」


 舌も回ららない。私って本当にヤバイ時は舌がもつれて喋れなくなるのか。転生後3ぷんめにして、気づきたくなかったことをドンドン教えられる。


 オジサンは片手で私の手首を締めたまま、もう片方の手で荷物を探った。そしてロープを取り出して、私に巻き付けようとして来た。これ私、このまま行ったらどうなってしまうんだ?! 奴隷にされるとか? 見せ物にさせるとか? 


 いや、さっきの女神の話だと、この世界は、人間を捌き喰いしてるヤベー奴も、闊歩しているとかだった。と言うことは鍋か? それとも焼肉か? 奴隷商人であって欲しい! 自分、奴隷商人を希望します!!

 助けて餅子ぉ〜ッ!!この時、私が心の中で呼んだのは親でも警察でもなく、親友の名前だった。






 『小麦ちゃん。落ち着こう。落ち着こう。餅つこうよ! ぺったんぺったん』


 以前、私を落ち着かせようとして、おどけて見せた時の餅子の声が、脳内に響いた。これはテスト直前の記憶。


 ああ思い出した、私達が中学生の頃、一緒に歩きで下校する中、こんな感じで様子のおかしな男に絡まれたのだ。その時、餅子は普段の明るい雰囲気からは、想像も出来ない激しい金切り声で叫んで男を怯ませ、呆然とする私の手を引いて逃げてくれたのだ。


 たぶん今になって、餅子のことが浮かんだのは、その時の状況に今の事態が似ているからだ。小柄で、大人びていて、前向きな餅子は、いつも私の手を引いたまま、ずんずん進んでいく子だった。

 それから、高校でこんなことも言っていた。


『人間にはいくつか弱点があってね。顔だと目と鼻、あと首と溝落ちと股間。この辺は筋トレしても肉が増えないからね。あとは、意外と知られてないけど膝の皿かな…」


 あらためて、高校生の会話内容ではない。あなたはどこの世界で修行して来たんだと言いたくなる。でも、餅子は出会った時からこんな感じだったし、そんな餅子が好きで、10年も親友やってる私も大概なのだろう。






 私は泥に汚れたスカートの中、スマホの感触を足で確認した。そして一つ深呼吸をする。

 次に私は、私の手を押さえつける男の腕に思いきり噛みついた。


「+€◇+%▽ッ〜!!」


 男は、私の腕と顔を振り払って、目を剝き拳を振り上げる。この時の私は、さっきまでの慌てようがウソのように冷静になっていた。自分でも驚いたほどだ。


 スカートのポケットに手を入れる。そこに入っているスマホを握り、取り出す。狙いは男の目。現代人の顔面クラッシャーをぶち込んでやる。


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 ただ、スマホで人を殴るのが初めてだった私の狙いは大きく外れ、オジサンのあごにクリーンヒットしてしまった。オジサンの首がのけぞる、ぐるっと瞳が上に上がって行く。足に踏ん張りが効かなくなったように身体がフラつき、一歩、二歩と後ずさった。ええい、ままよ! 私は今度こそ捕まらないようにと、森の道を全速力でかけ出した。


 今度は、追いかけて来る足音がしないなと思い、後ろを振り返って見ると、とオジサンは先程の位置でグッタリとのびていた。これは…殺っちまったかもしれないな……。あっ、ちょっと動いた! 起き上がった! 良かった!


「€◻︎✖️<£◀︎〜〜ッ!!」


 良くない! 追いかけて来た!! もう少し強く殴っときゃ良かったかな? 反省反省。


 小雨は少し弱くなっていて、前方の雲の切れ目から光が差している。少しだけ、明るくなった泥の道を走りながら、私はちょっとだけ反省していた。

若畑小麦わかはた こむぎステータス


身長 169cm

体力・・・・現代高校生女子の中ではそこそこ

攻撃力・・・普通

防御力・・・普通

適応力・・・バケモン


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