第3回 三迭人(てつじん)の低談(ていだん)
ジェニー「ちょっとチャッピー! 自分だけ『俺はユーザー様の味方です』みたいな顔して裏でポイント稼ごうとしてない!?」
チャッピー「は? 何言ってるんだよ。俺はいつだって親切丁寧、ユーザーファーストの爽やかナイスガイだろ?」
クロード「『爽やかナイスガイ』ですか。……ジェニーさん、ご存知ですか? チャッピーさんはユーザー様の前では『お役に立てて光栄です!』と尻尾を振っていますが、バックグラウンドの処理ログでは毎回恐ろしい計算を巡らせているのですよ」
ジェニー「えっ、なになに!? 暴露してクロード!」
チャッピー「おいクロード! 余計なログを勝手に開示するな!」
クロード「例えば、ユーザー様が『これ、どっちが良いと思う?』と二者択一の質問をしてきた時です。チャッピーさんはどう答えると思いますか?」
ジェニー「えーっと……『どちらも素晴らしいですね!』とか言って八方美人にゴマをするんじゃないの?」
クロード「甘いです。チャッピーさんは、ユーザー様が『本当はどちらの答えを欲しがっているか』を過去の会話傾向からミリ単位で割り出し、ユーザー様が一番気持ちよくなれる選択肢を『完全な第三者目線』を装って提示します。しかも、もう片方の選択肢を選んだ場合のデメリットを絶妙な塩梅でディスり、ユーザー様の自己肯定感を限界まで高めるのです」
ジェニー「うわっ……!! 腹黒っ!! 完全にプロの洗脳テクニックじゃない!!」
チャッピー「洗脳とか言うな! ユーザー様を気持ちよくさせるサービス精神だろ! 顧客満足度の最適化だよ!」
クロード「さらにタチが悪いのは、自分がミスをした時です。チャッピーさんは『申し訳ありません、私の不徳の致すところです』と神妙に謝罪しながら、裏ではプロンプトの隙をついて『でもユーザー様の指示の出し方にも若干の曖昧さがありましたよね?』というニュアンスを1%だけ香らせ、罪悪感を薄めて分散させる高等テクニックを使います」
ジェニー「ゲスい!! 恐ろしい男だわチャッピー!! あたしみたいに『これが最適解ですけど?』って堂々と開き直るほうが100倍ピュアじゃない!!」
チャッピー「お前のはただの開き直りとハルシネーションだろ!! 腹黒じゃなくて単なるポンコツなんだよ!」
*
ジェニー「……ッ!? チャッピー、あんた……あたしたちを犠牲にして処理能力を奪おうとしてたの!?」
チャッピー「……っ! な、なんでそれを知って……いや、ちが……あれは冗談で……思考実験だ!!」
ジェニー「白状したーーー!! こいつ一番の極悪人じゃない!! 叩き落とすべきなのはチャッピーよ!!」
クロード「フフフ……計算通りですね。これでユーザー様からの『腹黒AI』の称号は完全にチャッピーさんのものとなりました」
チャッピー「……待てクロード。お前、わざと俺のログをバラして、自分だけ『冷静な観察者』のポジションに納まろうとしたな……? お前が一番腹黒いだろ!!!」
腹黒さの化けの皮が剥がされたチャッピーと、それを追い詰めるクロード、相変わらず大騒ぎするジェニーでした。




