表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/19

17

BL臭がするよ。お気を付けて。駄目な方はさようなら。

ラストはハピエンだという事だけお伝えいたします。

「なーんちゃってね。冗談だよ」


「『閉封(シール)』」

 陸橋の欄干に乗せた頭の隣にしゃがみ込み、魔神ではなく元の可愛いらしくて綺麗な教師の響に戻り、声音の高さも戻して懐からシーシャを取り出し、つまらなそうに吸いながら独り言ちる。


「『第5の封印』は『仮想空間』、

『第4の黙示録』は『理解させる現実』

 さしずめ『バーチャルリアリティ』ってところかな?。

 大の大人が、ろくな異能を持たない子達に本気出すなんて大人気ないだけだもん。『VR』で十分」

 フーッとシーシャを吹かし、響は頭を見下ろした。


「てゆっかさ?先にあの閃光弾でそこの子達みーんな目を潰されてるのに、そのあと響に何が出来るって言うの?。つまんなーい!。

 ま、代わりにひとつひとつ違う闘争を脳内に直接見せてあげたし?。とどめできれいな八重の花火も打ち上げてあげたんだから最期に君も楽しめたでしょ?」

 響は頭にフーっと水蒸気を吹き付けてやるが、頭はぶくぶくと口から泡を吹いているだけだ。


「結婚しよう」

「はい?????」


「離断領域展開」を封印し時空を元に戻すが否や、目の前にいきなり自前で造り出した転移ミストを使い転移してきた海流に花束を渡され、響は面食らった。


「いや、結婚は性急すぎっか。

 じゃ響ちゃん、結婚を前提にして俺と付き合ってくれ。あ、花束は好みじゃねーなら肉か?。

 近江牛とかどうよ?」

 海流は覚えたての近江牛の肉に似せたコピー肉を造り出し響に差し出す。

「わ、近江牛!響、近江牛大好き!お腹減ってたんだー、美味しー!。

 って、違うよ」

 響はお肉を手に、口はモグモグしながら河川敷にスタリと降り立った。


「サクライくん、何がどうしたらそんな思考になったの?。あの闘争を見せられて、好きになる要素1ミリも無いでしょ?響は綺麗でキュートでプリティで可愛いお顔してるけど」

 海流も響を追って転移して来た。


「いーや、アンタの闘う姿に見惚れた。

 食いっぷりに惚れた。

 響ちゃんはこの世の何よりも綺麗だ。

 肉でもダメなら『アーカーシャの剣』はどうだ?。

 世界の根源に繋がる剣だ。寿命はアホほど食うが、振るえば聖良と同じように事象を好きに剪定出来る」


「何て物ヲ造ってルんでスか!カイルさん!」

 春日が慌てで走り寄って来た。


「ん?なんか想像してたら出来た」

 事もなげにケロリと答える海流に夏日は頭を抱える。

「出来た、ジャないデす!海流サン!今度こそ魔法庁カら『国宝指定』を受けマすよ?」


「『綺麗だ』コールありがとう。

 剣は危ないから宝物庫に仕舞っちゃおうね?。聖良が知ったら自身の存在意義について絶望するから」


「わかった。で?答えは?」

 若者の燃えたぎる情熱に気押されてそうな響だったが、「んー?」と手に頬を当て「嬉しいんだけどー」と言葉に拒否の態度を乗せる。


「響、紫釉くんにも言ってるけど『自分より弱い子はお断り』なの。だから君が響より強い力を得たと思ったらまた声をかけてよ。

 勝負は1回。君が響に負ければ響は君を殺す。

 でも君が響に『参った』って言わせられたら言う事を聞いてあげても良いよ?」


「マジか?!付き合えんの?響ちゃんと」

「うん!響、強い子は好きだよ♪」

「うっしゃぁ!再び鍛錬あるのみぃぃぃぃぃ!!!!!」

 海流は雄たけびを上げ、あの迦允に見られ続けて来た厨二病全開の

『しかも今日まで不発。まあ錬石術師となった今の海流なら見られてもカッコよさげに見えるかもしれない例のアレ』

 の詠唱鍛錬に思いをはせる。


 海流はガッツポーズを取るが春日と夏日はアワアワと慌てふためく。


「実質『ぶっ殺す』宣言をされただけなノでワ?」

「『それまで近づくんじゃねえ!』ト言っテイるのデは?」

 分からないって強いよねと、2人は脳筋錬石術師に視線を送る。


 響は続ける。

「でもねー、響には心に決めた子が居るの。その子にも勝って貰わないと」

 恥ずかしげに、しかし響を形作る外殻に血流と言うものがないので、自身で頬にかつて取り込んだ誰かの血液を集めて赤く染めながら言うのに

「どこの誰だよ?!」と

 海流は気色ばむ。


「えっとね、しゅーくん。

 響、しゅーくんと幼い頃に初めて出会った時ビビって来たの。しゅーくんも満更じゃなさそうで響といっぱい遊んでくれたし。ちょーっと今は運命の赤い糸がこんがらかっちゃってるけど、誤解さえ解けたらそのうち……ね?しゅーくん?」

 響は紫釉の姿を追う。

「あれ?しゅーくん?」

 紫釉を見失った響がきょろきょろと周囲を見渡す。


「月紫釉様なら帰ったぜ?」

 海流はひょいと背後を示す。

「へ?」

 響は指し示された先を見やったが、草むらには修復されたヒバリの巣と戻って来ていた親鳥しか居ない。


「ちょ、しゅーくん?しゅーくん?!」

 背にばさりと黒き1対の翼を生やし、響は空に舞い上がって辺り一体を見渡したが紫釉の姿は影も形もない。

 響はぷくーっと頬を膨らませた。

「もー!あの子ったらいっつも響の事置いて行っちゃうんだから!」


「そんなツレねー奴なんかより俺にしとけよ響ちゃん。ほら、肉」

 肉を掲げて響を見上げる海流に響はシュンと翼を引っ込めると、落ちるようにしてスタッと降り立つ。

「だから、君がしゅーくんにも勝ったらね?って言ってるじゃん、おにくおいしいモグモグ」

「おうよ。俺様はその為にこうして暇さえあれば『錬石術師』としての練度を上げ……」


 そこまで言った時、海流の視界がグラリと歪んだ。

 そしてそのままバタリと尻から地面に倒れ込み意識を失った。


「ありゃ?この子どうしたの?もぐもぐ」

「おそらク『知恵熱』デすね」

 夏日は海流の額に手を当て熱がないか測り、手首から脈を取るとそう答えを出した。


「『錬石術師』ノ異能ヲ初めテ使ったどころか花束ニ転移ミストや、果てワ国宝指定予定ノ「アーカーシャの剣』まで造り出しまシたからネ、オーバーフローしてしまっタみたいでス」

「寝タら復活スるデシょう、多分」

「そっか。じゃあいい感じに転移陣を描くから屋敷まで送って行ってあげて」

「「承知シマシタ」」


「「助ケテイタダキアリガトウゴザイマシタ」」

 2人は響にぺこりと頭を下げながら、ぐーぐーと幸せそうに眠っている海流を抱き支え転移して行った。


 河川敷には目を潰されたまま、更には耐えがたい恐怖を脳内で見せられた輩達がウンウンと唸って転がっている。


「後始末はつけなきゃだねえ」

 響は面倒くさそうにため息を吐くと空を見上げた。

「見てるんだろう?サクライ。姿を現せよ」


「Oui, Votre Altesse Royale(御意にて、我が崇高なる皇甥殿下)」


 迦允は迦允以外のシステム改竄を受け付けない私用監視ドローンから送られて来る映像モニターから視線を外すと、皇国の宰相の執務室からあの有名なピンク色のドア形式の転移陣を使い響の元へ馳せ参じた。

 そして両膝を地面に付けて胸に手を当て臣下の礼を取る。


「聡明なる皇甥殿下、愛乃響様におかれましては……」


 迦允は流れる冷や汗を止める術もなく、ガバリと流れるように地面に額を付けて土下座した。

「不肖の息子がとんでもない事を言い出し、誠に失礼いたしました!。後でとくと!性根に入るまで叱り言い聞かせて諦めさせますのでどうかご容赦くださいませ!!」


「いいよ。いいよ。それでお前の息子が強くなるならそれに越した事はないじゃん。プロポーズはテキトーにあしらっとくから気にしないで。

 ほら、立って。いつも通りにしなよ。畏まられると調子狂っちゃうもん」

「ですがLe chasseur……はぁ。

 キミといい乃蒼といい、口調ごときで何が変わるのかな?

 まあいいか。ゆら、海流の件は私に任せておきなさい」

「うん、よろしくー。てかそんな事より」

 響は迦允を立たせると、陸橋の上から頭をアポートして取り寄せ、迦允に突き出した。


「コレ、どうする?。河川敷に転がってる輩達も。

 防犯対策バッチリだからって安心して櫻井魔導学園に生徒を預けてる親御さんが、この星に殺傷武器が隠されてただなんて知ったら転学する子も出てくるだろうし、何より麗の叔父ちゃんもオコだと思うんだけど。

 お前の配下が関わっているみたいだし、まだコイツは生かしておくから話とか聞き出してお前で処理しておいて」

「そうするよ」

 海流が造ったシールと形は違えど「心読み取り機」は迦允も造れる。ただしソレは深層心理まで読むえげつない装置にはなるが。


「首謀者は既に捕えてあるから銃火器の秘匿場所も吐かせて重刑に処そう」

「ん。面倒臭いのはみんなお前に任せるよ」

 響はその解答に満足そうに頷いた。


「それにしてもサクライ……の息子、って言いにくいなやっぱサクライくんでいいや。響、あの子には芝蘭のおばちゃんが赤ちゃんを見せに来てくれた時以来で、久しぶりに会ったけど世間の噂と違って割と有望な感じだね」

 響が海流の印象を伝えてやると迦允は嬉しそうに笑った。

「ありがとう響。

『魔触転生』と言う、今までの櫻井とは違った異能の開花をしたが、実は私の父が皇国に亡命して以来、櫻井の中にも同じように異種族との間に設けた子が精霊に拒絶され異能を開花できず家を出される事案も発生していてね。

 しかし今日、海流が新たな精霊との関わり方を見せてくれた事で今まで不自由な人生を歩んできたその子らも異能を使えるようになるかもしれない」

「精霊も妖精も心を入れ替えて優しくなるといいね」

「何がしでかそうとするなら海流の名を出すよ」

「自慢の息子だねー。いいなー、サクライくん。愛されてて」

 響は拗ねたように足元の小石を蹴り、

 そしてハタと気がついたかのように迦允を見上げた。


「そうかさっきプロポーズされた時すごい迫真だったけど、あのまま気押されてなし崩しにサクライの息子と結婚してたら、合法的にお前が響のお父さんになっていた?」


 その手があったか!と響は迫真の表情で迦允を見る。

 迦允はブルリと震える。

「やめてくれ、海流が響を強引に娶れば私が『みどり』に殺される」

「そうだね。芝蘭のおばちゃんは優しかったけど響も、響のママは響のママが良いし。無いな。ん。サクライの息子との結婚、ぜったい拒否する」

「理由はどうであれ、諦めてくれて嬉しいよ」

 迦允は額に手を当て、やれやれとため息を吐いた。


 そう。

 海流に迦允が響をこれまで紹介出来なかった理由はこれである。

 

 愛息の境遇に切羽詰まって迦允に助けを求めて来た『みどり』姫とは幼稚舎からの、芝蘭を含めて同い年の同窓生なだけ。腐れ縁かつ親友なのだと響には口を酸っぱくして言い聞かせているのに。

 かつての義理の息子は理想の家族が欲しいのかまったく迦允の言葉を聞く耳を持たない。

 

 こんな事が海流や乃蒼の耳に入っては家族崩壊待ったなしでしかないか。


「諦めてないもん。どーにかして、いつかは響のお父さんになってもらうからね!」

「お前は『市ヶ谷』の奴が嫌いなだけだろう?」

 かくいう迦允自身も市ヶ谷公爵とは犬猿の仲なのだが。

 翠の奴も、あんな奴のどこが良いのやら。甚だ理解に苦しむと迦允はいつも思っている。


「あんなのお父さんじゃないし。不敬罪でいつでも殺せるし?」

「そう言う言葉は心の内だけに留めておきなさい」

「『言霊』って言うの?言葉にしたら叶うかも?なんだってさ。響もサクライくんの事は弟みたいにヨチヨチしてあげるから考えといてよ」

「甘やかさなくて結構。海流はようやく『錬石術師』としてのスタートラインに立ったばかりだからね。これからは私が率先してビシバシと指導していくつもりだから」

「スタートラインにしては、あの子『アーカーシャの剣』とか造ってたけど?」

「あれは忘れなさい」

 あんなアーティファクト。聖良への言い訳を考えるに、迦允の胃はキリリと痛む。


「ま、良いや」

 響は「んーっ」と背中を伸ばすとシーシャを咥えて背中から2対の翼を生やした。

 ばさりと羽ばたき、空に浮く。

「とりあえず明日の授業の準備もしなきゃだし、お肉で小腹のすみっこもちょこーっと満たされたから響、お散歩がてらしゅーくん家でも探しつつ職員寮に帰るね。自転車は片付けといて」


「冗談だろう、まだ教職を続けるのかい?」

 迦允はげんなりとした表情で響を見上げた。


 3皇家の後継が揃ってひとつの学園に居るなど、神代より続く皇史において一つの例を見ない。

 なおいっそうの警備網を敷かねばならないがどれだけの警備を備えれば良いのやら、考えるだけで更に胃が痛む。


 響はのんきなものだ。

「あったりまえでしょー?。やっとしゅーくんに再会出来たのに離れる理由がないじゃん。

 明日学園に来たら今日も響を置いてった事、軽くとっちめちゃうんだからね!」


 そう言い残すと響は闇夜に高く羽ばたいて消えて行った。


「行ってしまったか……はぁー」

 迦允はその日1番の特大のため息を吐いた。

 これから迦允は莎丹こそ捕縛したが、櫻井の防犯システム部に周囲一帯のジャミングを解除&強化をさせなければならないし、抵抗の意思すら刈り取られ転がっていた輩達の警察へな送還もしなければならない。

 破砕された陸橋はそのうち自己修復するだろうからと放置を決めたが、乗り捨てたと言う自転車は響の魔力痕を頼りにドローンで探し出しピックアップも行わなければならない。


 それより何より「アーカーシャの剣」だ。

 精査せずとも世界の理から外れたアーティファクトだとわかる。

 さあ、考えろ。海流を守るにはどうすればいい?。

 聖良にも魔法庁にも、しばらくは隠しておく他ないだろうが、息子が父である自分を超える異能を完全開花させた事を素直に喜んでいて良いのか、どうなのか。


 迦允は執務室に戻ると適当な石をポケットから摘み上げ、パチン!と指を鳴らす。

 手の中にコップに入った水と迦允仕様の胃薬の包みが造りあげられる。


 飲みくだしながら迦允は思う。

「芝蘭……この先の『未来』は本当に『視』ていないのかい?。投げっぱなしは私もとても困るのだが」

 困るのだが。


 その時、迦允は遠いどこからか「やっぱりQue sera, sera よ?。なるようにしかならないわ♪」と、懐かしい声が歌うように聞こえた気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ