【くるえる☆が〜でん!】 The garden of Lily
露骨ではありませんが百合要素薔薇要素(?)が苦手な方はご注意下さい。
冬の長い国で、常に花の咲き乱れる王城自慢の庭園。
そこは、まさに賛美されるべき楽園だった。
咲き誇る香り高き花、柔らかな緑、可憐な鳥の歌―――――何より、麗しい乙女たちの楽しげな囁き声。
くすくすと、密やかな笑い声をたて睦みあう二人の乙女。
氷よりも澄んだ藍色、花よりも柔らかい薄紅。纏う色彩は違えど、互いに抱く親愛―――あるいは、それ以上の―――の情は同じ。
絡み合う手と手、重なる眼差し。微かなもどかしさとそれを掻き消すほどの幸福と愛と美しさに満たされた空間。穢れなき乙女の花園。
そこは、確かに楽園だった。
そして――――楽園から一歩、一歩だけ外れた其処は、ある意味地獄以下の虚しさだった。
その証明の一端をお見せするならば以下。
………………………
「何をなさっているのです、陛下。」
「いや…久方ぶりに庭で憩おうとしたら『男子禁制です』と叩き出されてな。」
「はあ。」
「――――ッいつからこの庭はそんな秘密の花園と化したというのだ!?というかこの庭の、城の持ち主は私だろう!?
私が何者か、言ってみろ、近衛騎士ヴィクトール!!」
「おっしゃる通りでございます、ノルヴィーク国王アルヴィド・マグヌス・ティセリウス、庭園の柵に覗き魔の如くへばりついている我らが賢王陛下。
ですから少し落ち着いて下さい。」
「ああ、俺は霜の山脈のように冷静だとも…!!
くっ、何故だ、何故なのだフレイア…『むさい男子は嫌い』などと言うが、俺はむささとは対極の王子様系イケメンフェイスだと自負しておるぞ!?というか実際王子だったしな。」
「はあ。(…まあ、間違っちゃいないが自分で言うと碌でもないな)」
「イルヴァ!!お前も…お前も、変わってしまった…!!
あの澄んだ眼差しは何処に!?今お前から感じるのは、あたかも“思春期の娘が駄目親父に向ける冷たい視線”チックなものばかり!!」
「はあ。(確かに駄目っぽいのは確かだ、この男)」
「ああっ、見たかヴィクトール!?フレイアがイルヴァにスフレを『はい、あ〜ん♪』とかやったぞ!?受け入れるイルヴァ!そして囁き!頬を染めるフレイア、笑みを浮かべるイルヴァ。
多分『間接キスですね』『イ、イルヴァ様…』とかそんな展開があったのだろうとこの才気煥発聡明叡智たる賢王は推測する!!」
「はあ。(駄目っぽいっていうか駄目だこいつ)」
「くっ、混ざりたいぃ…ッ!!」
「駄目だこいつ。」
「声に出ているぞヴィクトール。
くっ、しかしこうなったら、“女体化の秘薬”を求めるしかないか…!!」
「はあ!?」
「俺がっ、俺が穢れなき乙女、処女王“アルヴァ・マグノリア・ティセーリア”あたりであればあの百合な花園に混ぜてもらえるのだろう!?ならば何を躊躇うことがあろうか!!
南の国に攻め入り、西の国を焼き、東の国を滅ぼしても良い!!
俺は求める、俺は乞う、女体化の秘薬、女体化の術!!何を犠牲にしようと、この冷遇より俺を救う一筋の光を!!
行け、先陣を切るのはお前だ、白銀の無口ヴィクトール!!」
「お待ちください、陛下!?それはいくらなんでも無茶というも」
「さもなくば俺と貴様が薔薇るかだ。」
「この身に代えましてもかならずや!!」
「うむ、その即答っぷりが返って心地よいかもしれん。
安心しろ、見事秘薬を手に入れた暁には、お前にも女体化の栄誉を…」
「 狂王に死を!! 」
ザシュッ!
「―――――…な、何故だ…」
「いや何故だてあんた。」
「ヴィク…トール…」
「………。」
「……“ヴィクトリカ”と、“ヴィクトリッセ”、どっちが好みだ…?」
「狂王に以下略!!」
ズブシャアッ!!
――――――冬の長い国で、常に花の咲き乱れる王城自慢の庭園。
そこは、まさに賛美されるべき楽園だった。
誰もが謳い、憧れるそれは、白銀の兵士により守り通され―――――…
そして、二人の乙女はきゃっきゃうふふといつまでも幸せに暮らしましたとさ。
【The garden of Lily】
―――END:百合の花咲く庭で、貴女と――――
◇言い訳◇
去勢すればいいよ、というのが今までで一番の意見です。
…えー、シリアスキャンセラーを目指してみましたが、とりあえず王さまひでぇ。(色々な意味で)
いや、その、色々幸せにしたかったんだ!でもとりあず三人いっぺんに幸せになるのは無理だったんだ!!それで、ひとまず王様とヴィート君に犠牲になってもらおうと思ったら犠牲の大きさが相当だった!!
そして追い討ちをかけるような狂王と白銀の無口その後↓
「とりあえず女装から入ったらなんとかなるだろうか。」
「知るかボケ。」
「毛皮でも流行らすか。体型隠せそうだし。」
「聞けよバカ。」
「なに、いきなりフリフリすけすけ上腕ニ等筋から背中丸見えのドレスに挑戦するつもりか!!?
いや、賢王と称された俺から言わせてもらうに、流石にガチガチの剣術使いのお前がいきなりそれ着るのはきついと思うぞ。やめておけ。」
「誰が着るか!!?」
「なんだかんだで仲が良いよな、陛下とフォルクング隊長。」
「ああ、なんだかんだでな。」
「オレ、隊長には意外とメイド服が似合うと思う。」
そして城内に響き渡る血を吐くような絶叫。
「こんな国滅ぼしてやる!!!!」
―――――――それは、(ある意味)残酷な箱庭の物語……
完!!
あとは歌姫と魔女逆転阿呆話がひとつ。