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09.クロックスの葛藤

体調不良が続き受診したところ入院することになりました…更新遅くなります。すみません…

【クロックス視点】


「私は何をしているんだろう。あんなに奮起になって避けていた彼女に勉強を教えるなんて…。」


(しかも自分から声をかけて…

あまりに必死な顔で勉強していたため、つい助けてしまった)


溜息をつき最近の彼女の様子を振り返る。

近頃、彼女の様子がおかしい。 クロックスはそう感じていた。

1週間前までは自分より地位の低い者を人とは思っていない。そんな態度だったと記憶していた。

冷たく残忍な暴君令嬢。城下町で囁かれている彼女のあだ名に相応しい、まるで自分が君主にでもなったのかと思うような横暴でワガママな令嬢であったはずだ。


(変わったのはあの広間でのジニア嬢への謝罪からか。一体何を考えている。)


彼女に変化のあったここ一週間フェリーチェを上手くコントロールしていくためにもクロッカスは部下に彼女の監視を任せていた。

しかし報告にあがってくるのは全く隙のない心優しい令嬢の姿だった。


先日もフェリーチェとオリヴィアが鉢合わせた。その報告を部下から聞いた時クロックスは慌てて現場へ向かった。きっとフェリーチェが暴れると思っていたからだ。

しかし、到着した時に見たフェリーチェは信じられないほど穏やかな様子で微笑んでいた。


彼女の事だこの演技もそう長くは続かないだろう。きっと高貴な身分の者がいなければすぐにボロが出るはずだとクロッカスはそう確信していた。

しかしかれこれ1週間、彼女の様子は依然優しく穏やかなままだ。フェリーチェの嫌う下級貴族であるオリヴィアとも物腰柔らかに会話していたことを思い眉間に皺を寄せる。


フェリーチェ・ミラ・ランカスター…彼女にはいつも迷惑を被ってきた。

文句があれば周囲に暴言を浴びせる、人脈作りのためのパーティーではクロックスを離さず周囲を怯えさせ、しまいには️先日の暴力事件だ。彼女のヒステリックさを思い出してはどれも凄まじいものだったと恐怖するほどだ。


「はぁ……」


正直クロックスは今まで何度も婚約破棄を考えていた。家同士の婚約であってもあそこまで横暴なフェリーチェとならクロックスの一言で婚約破棄に漕ぎ着けるのは難しい話ではなかったのだ。

しかしクロックスは長い間、躊躇してきた。


…昔の優しいフェリーチェを知っていたからだ。


彼女の笑顔一つで幸せを感じ、彼女の一言に救われた幼い自分が確かにいた。もう何年も前のことだが。

ふと、初めてフェリーチェと城下町へ行ったときの記憶が蘇る。


『クロッカスさま!みてください!あのケーキおいしそうです!…きゃ』

『フェリ…?!大丈夫ですか?君は本当にそそっかしいね。お店は逃げないからゆっくり見て回ろうよ。』

『はい!』


二人で手を繋ぎ城下町を見て回った幸せだった子供の頃の記憶が蘇る。

今のクロックスにとっては足枷にしかならない記憶だが。


そういえば、この前の彼女は昔のフェリーチェを彷彿とさせたとクロックスは思い至る。


(何年も過去に縛られるなんて。やっと断ち切ろう。そう思った矢先なのに…)


過去に縛られ今でもフェリーチェを諦めることができない女々しく情けない自身に苦笑する。


好きだったから毎回裏切られたと思ってしまうし、好きだから変わったのかと彼女の言動に一喜一憂し期待してしまう。

正直今回のようなフェリーチェの変化は初めてではない。クロックスの気を引くためにクロックスの前でだけ猫を被った時があった。3日ももたない短い期間であったが。


(だか、今回は長いな。

もしかして彼女は本当に心を入れ替えたのでは…また昔の優しい彼女に戻ったのだとしたら?)


様々な考えが頭をよぎり簡単に絆されそうになったその時、成長した最近の彼女の一言を思い出し現実に戻る。


それは1か月前のこと…


『クロッカス様〜どこですの〜

きゃ…!汚らわしい!なんですのこの者は…こんな影武者はやく処分いたしましょ。下民の分際で最期にクロッカス様のお役に立てたのです!きっとあの世で喜んでおりますわ!あら?変な顔をしてどうされましたの?クロックス様がお心を痛めることなんて何一つございませんのよ?』


冷たく、そして不敵な彼女の笑顔を思い出しギュッと胸が苦しくなる。


(そうだ。あの彼女がそう簡単に変わるはずがない。)


きっと王家から婚約破棄の話が出ている噂を嗅ぎつけたのだろう。

彼女は権力が大好きな欲深い人間だ。そう易々とクロックスを手放すはずがないという結論に至る。


(あの声も表情も態度も…全て嘘に決まっている。

何度期待…するんだろうね。)


「…。私はもう…騙されない。」


クロックスはフェリーチェの居るであろう図書館を振り返ることなく帰宅するのだった

いつの間にかブックマーク14件…!

本当にありがとうございます。

初作品でこんなに頂けるとは思っておらず、すごく嬉しいです!

今後より良くなるように模索し頑張ります。

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