読者だってセックスしたい(第6話)
「例えば、バナー広告の表示枠があったとするでしょ?」堀田が言った。「そこのバナーには、色々な企業や個人が広告を載せたいと思っているわけ。でも表示できる枠数は決まっているから、全てを載せる事はできない。そこで、システムが都度オークションで入札を受け付けて、一番高い値段を付けた広告を表示させているって仕組み。このオークションは、鳴海くんがスマホやPCで目にする殆ど全ての広告で行われていると考えて差し支えないわ」
「なるほど」僕が言った。「それで、さっき金山が言った、クリックあたりの入札額、ってのが理解できたよ」
僕の言葉に堀田は頷いた。
「問題は、幾らで入札するのが最適かってことだ」金山が言った。「twitter広告の場合、入札額をシステム任せで変動させる自動入札と、自分で上限額を決められる手動入札があった筈だ」
「その通り」堀田が言った。「自動入札と手動入札のどちらがコスト効率を上げられるか、って話」
「単純な印象だけれど」僕が言った。「自動で任せた方が最適化されるように思うけど、違うのか?」
「落とし穴ね」堀田が言った。「少なくともtwitter広告においては、自動入札よりも手動入札の方が安くあげられる場合が多いわ。経験上、1日あたりの予算上限を1,000円程度での実施において、自動入札でクリックあたり100円前後がtwitterの広告システムから提案される場合、手動入札だと20円くらいまで落としても1,000円を消化できるわね」
良く解らない。
「CPC20円で1日予算が1,000円なら、50クリックが獲得できるって事だよね」僕が言った。「自動入札だと10回程度って認識でOK?」
堀田が首肯した。
「オークションだから、手動入札で上限額を安くし過ぎると、今度は入札で勝てなくなってしまう。だから、例えば5円を上限で入札した場合、入札負けで表示される回数が極端に少なくなるから、1,000円分を消化する前に1日が終わっちゃう。手動入札の難しいところは、この調整ね。以前は10円上限でも1,000円くらいなら消化できたけれど、最近は利用する人が増えたのか、CPCは高くなっている印象。それでもGoogleでリスティング広告をやったり、FBを使うよりも安上がりになる場合が多いわ。というのも、twitterの場合、広告自体がリツイートされて、その先でクリックが起きた場合、支払いが発生しないの。だから、広告がリツイートされればされるほど、コスト効率は上がっていく」
「逆に、興味もないのにリンクをクリックばかりされると、広告主の立場からすると困るって事だね」
思いのほか合理的な仕組みだ。そして、1日上限1,000円程度の設定であれば、個人でも大したコストをかけずに広告が可能だ。確かにこれは、うまく利用できれば強い武器になり得る。特にライバルとなる中高生は使える予算に限りがあるから、多くの金を広告に使える、という意味では、間違いなくオトナのラノベの戦い方だ。
「広告の仕組みを知る事は重要だが、たかが手段だ」金山が言った。「ターゲティングを終え、ペルソナまで作ったんだ。いよいよクリエイティブの作成に入る」
「そうね」堀田が言った。「まずは、目を引くコピーと画像が必要。それから、その広告を具体的にどんな人に、いつのタイミングで出すか、を決定する。タイミングは意外と重要で、twitterにターゲット層の人が多くいる時間帯がいいのは間違いないのだけれど、多すぎるとタイムラインが一瞬で流れてしまって目に留まらない」言いながら、堀田はホワイトボードを一旦スマホで写真に撮ると、消し始めた。「まずはツイート本文を作るわよ」
あ、そこは広告でも同じなんだ。
「140文字以内で作ればいい感じ?」
「その通り。リンク文字数も含むけどね」堀田が言った。「でも、全部使う必要はない。ターゲット層に端的に伝わって、リンクをクリックしてくれれば広告としては成功なんだから」
35歳のヲタクに響くコピーか…。




