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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十九章 一九六五年 北東辺境小集落における反復的夜間侵入および林縁火光の継続確認
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第三節

**一九六五年九月四日 ラーデン谷を発つ前の記録**


再訪の朝は、初めて来た時の朝より静かに感じられる。

土地のほうが静かなのではなく、こちらが余計な期待を少し減らしているからだろう。

初回の遠征では、火が見えればそこへ意味を多く置き、足跡が出ればそこから全体像を急いで引きたくなる。

再訪では逆に、前と同じことがどのくらい同じで残っているか、その持続のほうが先に目につく。

ラーデン谷でも、発つ前の私にはそれがいちばん大きかった。


朝のうちに、私は谷の入口の畑、焼畑跡、炭焼き小屋跡、尾根古道の空地を、前日と同じ順で歩き直した。

畑の端の抜き跡は、やはり林縁寄りへ偏っている。

焼畑跡の火床は小さく、木の実の殻と小骨が混じる。

炭焼き小屋跡の奥には編み屑と柔らかい被覆材らしきものが寄せられ、尾根の空地には浅い圧痕と、乾いた皮や殻が残っている。

一つひとつは派手ではない。

だが、初回には別々に見えていたものが、今回はかなり自然に同じ生活の線へ並んだ。

谷の対象が変わったのか、こちらの見方が少し落ち着いたのかは、たぶん両方だろう。


村へ戻ってから、私はヨアヒムと、その叔父にあたる若い使いへ、できるだけ簡潔に見立てを話した。

彼らが欲しいのは学術上の名称ではなく、畑の端で何が起きているかの言い方である。

私はまず、「夜に来るものは単に畑だけを狙っているのではない」と言った。

次に、「上の火床や古道の空地まで含めると、村で消えるものは谷の上の生活の途中へ入っている」と説明した。

使いの男は最初あまり納得していない顔だったが、ヨアヒムはむしろ静かに聞いていた。

父親と同じで、地面から話を受け取る癖があるのだろう。

「では、全部追い払えるわけではないのですね」

と彼が言う。

私は、

「少なくとも、畑の外れの作り方で減らせるものと、減らせないものとがあります」

と答えた。

これは弱い答えに聞こえるかもしれない。

だが、ラーデン谷ではその程度の言い方のほうが本当だった。


発つ前の整理として、私はノートへこうまとめた。


**ラーデン谷再訪により、初回遠征で別々に見えていた村の被害地、焼畑跡の火床、炭焼き小屋跡の素材寄せ、尾根古道の堅果利用と空地圧痕とが、かなり無理なく一続きの利用線として読めるようになった。

谷の対象は、四年の隔たりをもってなお、根菜の少量持ち去り、低い火床、小型の運搬具らしき編み、大小個体の踏み線利用など、同系の反復を保っている。

一方で、資源の比重には差があり、木の実や柔らかい被覆材の利用が前回より目につく。

したがって本対象は、村の側から見れば反復的侵入であるが、谷の側から見れば季節的資源を含む広い生活線の一部として理解するほうが自然である。

なお、初回に比べ、火床周辺・下方草帯・上方古道の活動点が同時に見え、単一の“群れ”像より、複数の作業点を持つ小規模単位としての理解が適当と思われる。**


初回の私は、ラーデン谷で見たものを、かなり早く「群れ」や「集落」の語へ寄せた。

再訪の今回は、そこを少し抑えて書けた気がする。

もちろん、それで相手の生活を十分に読めたとは言わない。

ただ、村で失われるものの量と、谷の上で使われるものの種類とが、ようやく一つの紙へ乗るところまでは来た。

再訪というのは、その程度の違いが出るだけでも意味がある。


私は見出しを、初回の記録に合わせて

**谷林火編民(旧称ゴブリン系)**

と書き直そうか少し迷った。

だが結局、本文の中に地方呼称として「ゴブリン」を残し、見出しは変えなかった。

現地の人間も大学の書類も、まだその名でしかこれを束ねていない。

こちらだけが急いで別の名へ移っても、かえって線が切れる気がしたからである。

学術上の整理は必要だが、現地で生きている語を消すこととは別である。

その区別も、この再訪で前より少し分かった。


ラーデン谷の記録は、これでいったん閉じる。

また別の季節や別の事情でここを開くことがあるとしても、少なくとも今の私には、初回の遠征だけで感じていた粗さはだいぶ減った。

畑の被害、夜の火、尾根の空地。

どれももう、互いに無関係な断片ではない。

谷の中で、人の住む線と、別の小さな生活の線とが、少しずつ重なり、少しずつ擦れている。

ラーデン谷では、最初から最後まで、そのことだけが変わらず残っていたのだろう。


馬を引いて谷を下りる途中、二つ目の村の上の焼畑跡が一度だけ見えた。

草の戻りかけた斜面で、昼のうちは何もいないように見える。

初回に来た時も同じ光景だったはずだが、今回はそこへ火床の位置と空地の圧痕と、下の畑の抜き跡まで一緒に浮かんだ。

土地は変わっていない。

変わったのは、たぶんこちらの紙の置き方のほうだった。


### 一九八三年春 整理のための短い注記


この再訪の記録では、当時の私が初回の見立てを誇示するのでなく、どこが粗く、どこが持続していたかを見直せている。

それだけでも、若い頃の遠征としてはかなり大きい。

初回の私は、被害の外側に生活があることを知った。

再訪の私は、その生活が村の被害語とどう重なるかを、ようやく同じ紙へ置き始めた。


もっとも、なお保留すべき点は多い。

大小の差、火床ごとの作業配分、編み材の変化など、いまならさらに長く見たいところはいくつもある。

それでも、この再訪は、初回の記録をただ言い換えるのでなく、見る順番そのものを改めたという意味で十分な価値があったと思う。

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