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ロバート教授の幻獣生態調査記録  作者: ロバート・クロフト
第十一章 一九八一年 石灰岩採掘跡周辺における小型家畜急死事例および局所植生枯死帯の調査
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第一節

**一九八一年九月十四日 南方石灰台地、サン・ヴェル段丘村着**


石の多い土地では、獣の話も石の言葉で残る。

森なら「消えた」、湿地なら「沈んだ」、高原なら「白く見えた」と言うところを、石切場や段丘畑のある村では「固まった」「割れた」「目を合わせるな」と言う。

それが単なる比喩でないこともあるし、逆に、ただの崩落や乾きすぎた土を、生きもののせいへ言い換えているだけのこともある。

私がこうした土地でまず気をつけるのは、石化や毒や視線にまつわる話が、どの程度まで本当に同じ対象を指しているのかという点である。

人間は「見てはいけないもの」の話を、非常に手際よく一つへまとめてしまう。


サン・ヴェルは、石灰台地を削って作られた段丘畑と、古い石切場と、小さな巡礼礼拝堂とから成る村だった。

畑では葡萄と香草が作られ、村外れでは鶏や山羊が少数ずつ飼われている。

家々の壁も畑の囲いも皆白っぽい石で、そのせいで朝と夕の光が強く、影の境が硬い。

遠目には明るく清潔に見えるが、歩いてみると土は乾きやすく、石垣のすき間には爬虫の好きそうな熱が溜まっていた。

私は着いて半刻ほどで、この土地が「何かがいても不思議ではない」種類の場所だと感じた。

それは直感にすぎないが、こういう直感は案外、地形のほうが先に与えてくれる。


大学からの依頼文は、今回も対象の名を避けていた。

**「石灰岩採掘跡周辺における小型家畜急死事例および局所植生枯死帯の調査」**

書面としてはもっともである。

実際、この一帯ではここ数年、鶏や若い山羊が、外傷の乏しいまま急に死ぬ例が断続的に出ていた。

畑の隅では、石垣沿いにだけ黒ずむ草帯ができ、井戸水に異常はないのに、家畜小屋の壁の低い位置へ妙な擦れが残ることがあるという。

だが村の者は、そんな回りくどい言い方はしない。

宿の主人は、私の紹介状を読むより先に、

「バジリスクを見に来たんでしょう」

と言った。


この名は、竜よりもなお扱いにくい。

竜は大きいぶん、見間違いもまた大きく、観察者の側に逃げ道がある。

ところがバジリスクだのコカトリスだのと呼ばれる類は、たいてい小さく、証言は近距離で、しかも恐怖が先に立つ。

目が合うと死ぬ。

息で草が枯れる。

影が毒を持つ。

そうした話は、たいてい一度広まると、現実の観察をほとんど受けつけなくなる。

私は宿の主人に、まず死んだ家畜のことだけを訊いた。

すると彼は肩をすくめて、

「死ぬのはたいてい若いのです。大きい山羊は滅多にやられない」

と言った。

これは記録に値した。

怪物譚にしては妙に具体で、しかも生態の側へ寄った言い方だったからである。


午後、村長格の老人と、畑の見回りをしている若い司祭補から、話を別々に聞いた。

老人は、バジリスクは昔からいるが、人間が石切場を深く掘らなくなってからはむしろ減ったのだと言う。

一方、司祭補はそれを迷信だとして、実際には夏の乾きと蛇毒と鼠害がごちゃまぜになっているだけだろうと見ていた。

この食い違いはありがたかった。

最初から村じゅうが同じ怪物を信じている土地より、反対の見方が残っている土地のほうが、証言の外形が安定する。

私は二人の話を聞きながら、ひとつ共通している点だけを拾った。

問題が起きるのは、村の井戸や家屋の中ではなく、石切場の縁と、そこから続く段丘畑の最下段、そして礼拝堂裏の古い納骨壁のあたりに限られているということである。


日が傾く前に、私は石切場を見に行った。

採掘はすでにほとんど止み、今は崩れた切り面と、半ば埋まった荷上げ道が残るだけである。

白い岩肌はところどころ灰色に焼け、下のほうには崩落した石と乾いた草が積もっている。

見たところ、バジリスク伝承にありがちな「毒の沼」めいたものは何もない。

むしろ乾いていて、蛇やトカゲや鼠が好みそうな裂け目ばかりが目につく。

私はそこをひとまわりし、まず爬虫の痕を探した。

だが、期待したほど明瞭なものはなかった。

細い這い跡はいくつかある。

小鳥の羽も落ちている。

しかし、どれもこの土地に普通にいておかしくないものの範囲を出ない。


少し気になったのは、荷上げ道の脇の草帯だった。

黒く枯れている、と聞いて想像したよりは弱い。

むしろ、草の先だけが縮れて、根元は生きている。

土壌全体が毒されている感じではなく、地表近くで繰り返し熱か、あるいは刺激の強い排泄物でも受けたように見える。

私はそれを指で触り、匂いを嗅いだ。

硫黄臭はない。

ただ、乾いた苦味のある匂いが少しある。

植物そのものの苦味かもしれず、これだけでは何とも言えなかった。


石切場の下手、崩れた石垣の影で、私は最初の見当違いをした。

丸い頭と低い胴が、白い石の縁を素早く横切ったのである。

距離は近く、角度も悪くない。

私はとっさに双眼鏡を上げた。

しかし次の瞬間、それがただの大きなイシトカゲだと分かった。

高山鷲を竜と見かけた時ほどではないにせよ、少し腹立たしかった。

こうした土地では、普通種の側がそれらしく見えすぎる。

そのたびに記録の熱を下げていかないと、あとで全体が膨れてしまう。


夕方、礼拝堂裏の納骨壁を見た。

低い石壁のあいだに古い骨箱を納める棚があり、今は半分ほど空いている。

村ではもう使われていないらしいが、乾いて暖かいせいで、小鳥や鼠が巣に使っているという。

もし小型の捕食性幻獣がいるなら、こういう場所は魅力的だろう。

私は棚の低い位置を一つずつ確かめた。

鼠の糞、鳥の羽、乾いた蜥蜴の尾。

そこまでは予想どおりだった。

ただ、一つの棚だけ、石の縁に異様に細い擦れがあった。

爪でも牙でもない。

もっと硬く、しかも一点に近い接触が、同じ高さで何度か当たったような筋である。

私はそこで初めて、伝承の「視線」や「毒息」よりも、むしろ嘴や角質の口先のようなものを想像した。

ただし、それもまだ想像にすぎなかった。


その夜は、石切場の真上ではなく、礼拝堂裏の石垣の陰で待った。

村の者の話では、家畜がやられるのはたいてい夕方から夜半前で、完全な真夜中はむしろ静からしい。

私はこの種の証言をすぐ信じはしないが、少なくとも観測の時刻を絞る手がかりにはなる。

日が落ちるにつれ、石灰壁の白さが青へ変わり、影の縁だけが妙に硬く残る。

この土地では、暗いものほどよく見え、白いものほど形が崩れる。

人間が「視線で殺す」と語る対象がいるとすれば、こういう見え方が手伝っているのかもしれなかった。


しかし、その晩に得られたのは姿ではなく、音だけだった。

礼拝堂の裏で、小さく、乾いた音が二度したのである。

石と石が軽く打ち合わさるような、しかし人為よりはもっと短い音だ。

私は身を低くして待った。

やがて納骨壁の下の草が、ごく狭い幅で揺れた。

風ではない。

だが幅が狭すぎて、そこを通ったものの大きさがかえってつかめない。

私はしばらく視線を凝らしたが、結局そのまま何も出なかった。

気づけば自分の首と肩に無駄な力が入っていて、石の冷たさだけがよく分かった。


観測としては薄い。

だが、何もないとも言い切れない。

私はそういう中途半端な夜の記録を、捨てないほうがよいと思っている。

翌朝の地面が、その夜の薄い気配を説明してくれることがあるからだ。


宿へ戻ってから、私は短くまとめた。


**石切場と納骨壁の双方で、小型ないし中型捕食性種の利用を疑わせる条件あり。

ただし現段階では、蛇類・大型トカゲ・普通の夜行獣と区別しうる決め手に乏しい。

草の枯れ帯、低い擦れ、納骨壁の一点接触痕、乾いた接触音が同一対象に由来する可能性はあるが、なお保留する。

家畜急死の件についても、対象を特定するまで毒性や視線作用を前提としないこと。**


これでようやく、土地の輪郭だけは見え始めた。

バジリスクという名をそのまま使うには、まだ材料が薄い。

だが、名を笑って捨てるには、細かな条件が寄りすぎてもいる。

こういう場所では、焦って分類名を置くより、まず地面と石のほうを信じるべきなのだろう。


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