第2話 おわりはじまり。
満月が頂点に届く時、それは一斉に発動した。
山頂の境内にいる私の眼下には相模平野と月の光を反射する相模湾が広がっている。各地で転移魔法陣の術式が光の輪となって夜空に浮かび上がるのが見えた。
その魔法陣を繋げるように目の前にいる男が連結魔方陣を展開していく。
各地のコアポイントにいる者と念話で確認しながら慎重に術式を展開していく。やがて横浜西部から伊豆半島、箱根から丹沢山脈をたどり相模原方面までを連結魔方陣が繋ぎ、夜空に大きなドーム型の魔方陣が展開されていく。
もし、この連結魔方陣を夜空から見下ろしたら、ものすごく美しい幾何学模様を形成しているのだろうと想像し少しニヤリとしてしまう。
私の名はヤエ。【有機の魔女】と呼ばれている魔法使いだ。
そして目の前にいる連結魔方陣を展開している男が、のちに【大魔王】とか呼ばれる魔術師アサオである。
なぜ私がここにいるのかって?
それは保有する魔力量が豊富で、他人に魔力譲渡が出来ること、さらに転移魔法のサポートが出来るからだ。この場所は転移魔方陣の核となる中心部分である、熟練の魔法使いであり経験豊富なアサオにも保険は必要だ。
やがて連結魔方陣の光が神奈川県中部と南西部から伊豆半島の一部まで丸く包みこんでいく。念動力を使い地球の重力場から少しだけ抜け出して地面が浮上し始めたのを感じる。
次の瞬間、小さな横揺れが続き地面の上昇が止まる。
目の前のアサオがプルプル小刻みに震えながら叫ぶ!
「魔女ぉ〜!!ちょっとこれはヤバイかもーー!!予想以上に魔力の消耗が・・・」
どうやらアサオの魔力が切れそうになっているらしい!連結魔方陣を展開している感じだとまだ魔力量に余裕はあったと思うんだけど、、、私も逐一確認してたんだけどなぁ〜
「まじっすかー!?」
驚きの声をあげつつも、冷静に魔力譲渡の魔法を展開しアサオの背中から魔力を流し込む。アサオの体越しでもものすごい勢いで魔力が消費されているのがわかる。これでは足りない!!
言葉には出さないが、アサオも同じように感じたようだ。彼は召喚魔法を詠唱し『真理の扉』を召喚した。
マジで命の危険を感じるレベルのネガティブで陰鬱な禍々しい気を放っている。
「ちょ・・とお、お前まさか私を等価交換の材料にする気じゃないだろうな?」
こんな空気の中にいると下衆な勘ぐりまでしてしまう。
アサオは飄々とした笑顔を浮かべつつ、真理の扉と取引をしている。
真理の扉は何でも望みのものを与えてくれる。いや、正確には望みのものと交換してくれるのだ。人体錬成や死者の蘇生なんてことも出来るが、それにはもちろん対価が必要だ。ちなみにこの時代でも禁忌であり、禁呪として指定されている。ダメ!ゼッタイ!!ってやつなのだ。
「まぁどうせ虫歯の治療中だったし・・・やらなきゃ死ぬなら前借りするしかないわな〜」
躊躇なく己の肉体を差し出して魔力を得ることを選択できるのがこの男の凄いところである。
歯とそれだけでは足りず脇腹の骨を1本失うことで魔力を得たアサオは連結魔方陣を月の引力に固定する。
これで落下する危機は回避できた。
次に浮上した大地を包んでいる連結魔方陣を結界化していく。永続的に展開されるように術式を組み込んだ結界魔法が完成したところで魔力が切れたようだ。
「いや〜〜まさか『真理の扉』を開くことになるとは思わなかったよ。マジでダメかもって一瞬思ったからね・・・」飄々としながらアサオが言う。この男からは底が知れない器の大きさみたいなものを感じる。
転移魔法は失敗したが大崩壊は免れた。結界も張ることができた。
「生きてて良かったっすよ!・・・」普通の人なら『真理の扉』の前で正気は保てないだろう。安堵しつつ魔力譲渡で魔力を使い切った私と同じく魔力切れのアサオは、その場でヘナヘナと崩れ落ちる。
今頃はもう『プランB』に移行しているのだろう。
そう想いつつ意識が遠のいていくのがわかった。
もうちょいプロローグ書くか、閑話で進めるか考え中です。
プロローグは2020年くらい、実際のストーリーはそこから15年後の2035年くらいを考えています。




