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「今度から殴る蹴るの暴行を入れても良いんだけど……。なんか人間的に終わった気がしてねー……。やっぱりやるなら拘束とか、シバきとか……まだ人間性を保てるような……」
困ったように溜め息をつくと、こめかみを人差し指で押さえる。
その思想が人間的に終わっている。人間の域を越えて変態の域に君臨しようとしている。
氷室は見ていられないのか、明後日の方を向いている。頬に冷や汗が伝い落ちて、なんとかこの場を保ってるという感じだ。
「先に氷室ちゃんの手当てを終わらせた方が良いんじゃない?」
塊の提案に氷室の背筋が真っ直ぐに伸びる。恐る恐る此方を振り向いて、目線を下に向ける。視線の先には閏日さんが居た。
閏日さんは特に気にした様子もなく、寝そべったまま手招きしている。私は氷室と場所を交代する為、パイプ椅子を離れる。
「すみません……」
怯えた声でそういう氷室と擦れ違い、ソファに腰掛ける。隣には塊がふんぞり返っていて、目蓋を擦る。これだけ見ると、ただの変な集団である。主に変な性癖を持った。
幸い氷室の怪我は浅いようで、数分で手当てが完了した。氷室の定位置であるソファに腰掛けると、所長が穏やかな声でこう言った。
「今日は特に大切な話は無いから、早く帰ってゆっくり休みな」
「えっ……でも……」
「大丈夫。氷室が居たら、トラウマじゃ済まないような事がこれから起きるから」
「はいぃ!!」
戸惑う氷室に対し、脅しとも取れる笑顔を浮かべる。彼女は真っ青な顔をして小さく頷くと、鞄を片手にドアの前に立った。漆黒の髪を揺らし、膝の辺りまで頭を下げると『さようなら』と短く挨拶。それに対して私達は手を振った。
「塊もだよ」
「はいはい。じゃ、紅葉ちゃん。またねー」
軽く手を振ると、黒い背中を見せたまま歩き出す。氷室と違って挨拶もせず、そのまま歩き去っていく。素晴らしく対照的だ。
「塊を返す必要ってあります?」
「悪乗りして、閏日の腕折ったら仕事に支障を来すでしょ?」
閏日さんの身の心配は全くしていない。寧ろ仕事の心配をしている。まぁ……肝心の閏日さんは『それだけじゃ足りない』と文句を言うだろうが。
罅荊は束ねられた赤毛を指で梳きながら此方に来ると、閏日さんの顎を掴んで無理矢理自分の方を向かせる。とどのつまり海老ぞりの状態で腰に負担が掛かる訳だが、それさえも快楽に変わるようでとろけた表情を浮かべている。
「本当に卑しい豚ですね。そんな状態になってもまだ足りないだなんて……」
人を見下した目がこれほど似合う奴はそう居ないと思う。しかしそう感心しても居られない。正直、傷が開きっぱなしなところをずっと我慢しているのだ。私は付き合っていられず、閏日さんの元まで来ると見下ろしながら吐き捨てた。




