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素晴らしくいい笑顔なのだが、目が笑っていない。彼は硝吸鎌が何時も私にするように顎を押し上げると、相手の矜持諸共破壊する勢いで罵倒をした。
「相変わらずえげつない。『どうせ処分されるだけの肥えた豚』ぐらいにしときなよ。お前なんか食う価値もないってさ」
両脇に人がいないため、肘を背もたれにのせてふんぞり返った。ついでに足を組む。なんだかこの態度が物凄く偉そうに見えるのは勘違いでは無いだろう。
罅荊はその問に対して表情を崩した。『貴方も大概ですよ』とでも言いたげだ。そして処刑を命じる赤の女王のようでもある。
「二人共、此処はドマゾを詰って遊ぶところじゃないんだけど。いっそ其処にいる変態とセット販売するよ? それも百円で」
そう言う所長が一番詰っている気がする。何故私が罅荊と閏日さんと一緒に百円で売られなければならないのだ。
と言うか百円って……。人身売買にしても安すぎやしないか?
罅荊は真ん中分けされた赤毛をかき揚げて溜め息をついた。興醒めと言ったところだろう。
反面閏日さんは嬉しそうだ。頬が蒸気している。
「皆……最高よ……!! もっとなじって!! て言うかいっそ踏んで…!!」
閏日さんの言葉を受けて私達三人の眼光が鋭くなる。
私と所長は人前で、特に繊細な人の前ではこんな事をしない。その人の心を穢してまでは言わないし、あくまで『閏日さんが喜ぶからやる』と言ったところだ。
いくら私であってもそこら辺の分別は着いている。
と言うわけで私達は改めて閏日さんを詰る事にした。
「本気で売ろうかな……」
「『この醜い豚を踏んで下さい』の間違えでは?」
「却下。靴底が汚れる」
閏日さんが喜んでいる最中、罅荊は指を鳴らす。蔦のようなものが突然彼女の体に巻き付き、締め上げる。かなり強烈に絡み付いているようで、ぎちぎちと嫌な音を立てる。骨が軋むのではなかろうか?
それを見た私達は“悪趣味だ”と呆れた視線を寄越してやる。
「これで暫くは大人しいでしょう。で、落ちこぼれ」
罅荊の冷ややかな目が私を捕らえる。見下す事とはまた違った、ただ冷たい目。彼は眼鏡の縁を押し上げるとぶっきらぼうに言い放った。
「あまり私の世話にならないように。以上です」
本当は閏日さんを詰る為ではなく、これが言いたかったのだろう。くるりと踵を返すと姿を消した。閏日さんを縛っていた蔦も緩む。ドマゾである閏日さんは少し残念そうだった。
「あーあ……行っちゃったー……。でも狙いは私ではなかったわね」
閏日さんの目が企みがちに細められる。
ドエムな人が見たら、背筋を震わせて喜ぶだろう。……本人がそのドエムなのだが。
閏日さんは切れ長の瞳に抜群のスタイルの良さから、一瞬見ただけではサドと勘違いされる事が多いらしい。当たり前だが本人は凄く嫌がっている。




