「沈む国の王冠なんて要らない」と兄姉十二人が逃げたので、末っ子の私が女王になりました ~お兄様方、国が持ち直したので戻りたい? ではまず、この帳簿を一行読んでください~
最新エピソード掲載日:2026/11/07
「沈む国の王冠なんて要らない。お前にやる」
父王の葬儀の翌朝。大広間で、王太子だった長兄が継承権の放棄書に署名し、ペンを放った。次姉は修道院へ、三兄は留学へ、ほかの兄姉も馬車へ。国庫は空で、帝国の軍は国境の橋の向こう。十二人の署名が並んだ紙の下に、空欄が一つだけ残っていた。
末っ子の私、アンネッタ・二十歳。
「……本当に、いいのですか?」
「要らないって言ってるでしょう、おチビさん」
ぱん、と私は手を叩く。
「はい、決めました。いただきます」
戴冠式に来たのは使用人だけだった。でも私は知っている。この城で本当に仕事ができるのが誰か。洗濯場の女官長、門番の老兵、厨房の料理長。それから――地下牢の、いちばん奥の人。
「女王が死刑囚に何の用だ」
「宰相を、お願いしに来ました」
国が持ち直すたびに、逃げた兄姉が一人ずつ戻ってくる。王冠を返せ、と言いながら。
「ではまず、この帳簿を一行読んでください」
なぜか国境の陣の皇弟殿下まで、塩の値段を値切りに市場へ来るけれど。
父王の葬儀の翌朝。大広間で、王太子だった長兄が継承権の放棄書に署名し、ペンを放った。次姉は修道院へ、三兄は留学へ、ほかの兄姉も馬車へ。国庫は空で、帝国の軍は国境の橋の向こう。十二人の署名が並んだ紙の下に、空欄が一つだけ残っていた。
末っ子の私、アンネッタ・二十歳。
「……本当に、いいのですか?」
「要らないって言ってるでしょう、おチビさん」
ぱん、と私は手を叩く。
「はい、決めました。いただきます」
戴冠式に来たのは使用人だけだった。でも私は知っている。この城で本当に仕事ができるのが誰か。洗濯場の女官長、門番の老兵、厨房の料理長。それから――地下牢の、いちばん奥の人。
「女王が死刑囚に何の用だ」
「宰相を、お願いしに来ました」
国が持ち直すたびに、逃げた兄姉が一人ずつ戻ってくる。王冠を返せ、と言いながら。
「ではまず、この帳簿を一行読んでください」
なぜか国境の陣の皇弟殿下まで、塩の値段を値切りに市場へ来るけれど。
1. 空欄の一行
2026/11/07 12:32