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異世界転移者専用ヘルプデスクですが、なぜか俺の黒電話に繋がります  作者: よんまるよん


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第4話 追放おめでとうございます

 ジリリリリリ。


「死ね」


「もしもし!」


「死ね」


「あの、ヘルプデスクですか!?」


「違う」


「ステータスに書いてあったんですけど」


「俺んち」


「えっ」


「俺んちなんだよ何回言わせんだ」


「何回も言ってるんですか」


「お前で四人目」


「えっ、人気じゃないですか」


「迷惑なんだよ」


「あっ、すみません」


「で、何」


「勇者パーティ追放されました!」


「おめでとう」


「え?」


「おめでとう」


「えっ、いや、あの」


「で?」


「で、じゃないですよ! 追放されたんですよ!?」


「だから祝ってんだろ」


「祝うところ!?」


「そこから始まるんだよ」


「えっ」


「最近はそう」


「最近!?」


「テンプレだ」


「テンプレ」


「追放されてから無双するやつ」


「無双」


「うん」


「俺、無双するんですか」


「知らん」


「知らんのに!?」


「テンプレは知ってる」


「テンプレは」


「お前の人生は知らん」


「人生!?」


「重い話すんな」


「そっちが言ったんですけど」


 受話器の向こうで風の音がする。野外だ。たぶん草原かどっかで途方に暮れてる。


「お前今どこ」


「街道です」


「ふーん」


「荷物だけ放り出されて」


「ふーん」


「剣も取り上げられて」


「ふーん」


「ふーんしか言わないじゃないですか!?」


「興味ない」


「うわっ」


「で、何が困ってんの」


「追放されたんですよ」


「だから?」


「困ってるじゃないですか」


「テンプレなら困らん」


「テンプレって何ですか!?」


「追放された瞬間に美少女が来る」


「えっ」


「強い美少女」


「えっ」


「で、お前を拾う」


「えっ」


「で、新パーティ組んで元のパーティを叩き潰す」


「えっ」


「そういうテンプレだ」


「めっちゃ詳しいじゃないですか」


「うるさい黙れ」


「ヘルプデスクの人ってそういうの読むんですか」


「読まねえよ」


「読んでるじゃないですか」


「黙れ」


「黙ります」


「で、来たか」


「えっ」


「美少女」


「いや、まだ」


「ふーん」


「もしかして合流するかもって、ちょっと、思ってて」


「ふーん」


「そんなベタベタな展開は無いと思うけどね、って、思いつつ」


「お前」


「はい」


「期待してんだろ」


「えっ」


「美少女」


「えっ、いや、別に」


「期待してんだろ」


「ちょっとだけ」


「気持ち悪」


「酷い!?」


「で、来たか」


「いや、だから、まだ」


「終わったな」


「終わった!?」


「賞味期限切れだ」


「賞味期限!?」


「追放された瞬間に来るんだよ美少女は」


「瞬間」


「ピンポイントだ」


「ピンポイント」


「お前もう何分経った」


「えっと、追放されたの、昨日です」


「死んだな」


「死んだ!?」


「美少女は来ない」


「そんなぁ!?」


「諦めろ」


「待ってください」


「諦めろ」


「待って」


「諦めろ」


「もう一回追放されたら」


「は?」


「もう一回追放されたら来ますか」


「お前」


「はい」


「追放される前提でパーティ入る気か」


「だって美少女が」


「死ね」


「酷い!?」


「自分から追放されに行くな」


「でも来るって言うから」


「来ないって言ったろ今」


「あっ」


「あっ、じゃねえよ」


「じゃあどうすれば」


「自分で生きろ」


「えっ」


「美少女に拾われる前提で生きるな」


「重い」


「重くねえよ」


「ちょっと重かったですよ」


「気のせい」


「気のせいじゃないですよ」


「で、街道のどっち向きに歩いてる」


「えっと、東です」


「東に何がある」


「街が」


「行け」


「街ですか」


「働け」


「働く!?」


「金稼げ」


「いや、俺、勇者なんですよ」


「元な」


「あっ」


「追放されたろ」


「されました」


「元勇者だ」


「元」


「ただの人だ」


「ただの」


「働け」


「うわぁぁぁ」


「うるさい黙れ」


「働きたくない」


「死ね」


「酷い!?」


「で、スキルは」


「えっ」


「何持ってる元勇者」


「『剣術』、『聖光魔法』、『鑑定』」


「『鑑定』あんのか」


「あります」


「便利だな」


「便利です」


「最近のやつみんな『鑑定』持ってんな」


「最近?」


「いや」


「最近って何ですか」


「黙れ」


「黙ります」


「『聖光魔法』使えるなら回復役で食える」


「回復役」


「パーティ組めば飯に困らん」


「あっ」


「気づくの遅えな」


「あの」


「何」


「勇者が回復あるのかって」


「は?」


「自分で言っといて何ですけど」


「お前」


「はい」


「『聖光魔法』持ってるって言ったろ」


「言いました」


「使えんだろ」


「使えます」


「じゃあ回復役だ」


「いや、でも、勇者って前衛じゃ」


「お前前衛だったのか」


「えっ」


「前衛だったのか」


「えっと」


「答えろ」


「後衛、です」


「は?」


「後衛、でした」


「勇者が」


「はい」


「後衛で」


「はい」


「何してたんだよ」


「指示、出してました」


「指示」


「『そこ危ない』とか『回り込め』とか」


「ふーん」


「『お前そこじゃない』とか」


「ふーん」


「『俺ならそうしない』とか」


「お前」


「はい」


「文句言ってただけだろ」


「えっ」


「後衛から文句言ってただけだろ」


「いや、指示は」


「指示じゃねえだろそれ」


「指示ですよ」


「文句だ」


「指示です」


「文句」


「指示」


「黙れ」


「黙ります」


「そりゃ追放されるわ」


「えっ」


「当然だ」


「当然!?」


「俺なら一日で追放する」


「一日!?」


「半日だな」


「短くなった!?」


「お前のパーティ我慢強いな」


「我慢強い」


「よく耐えた」


「耐えた」


「拍手だ」


「拍手しないでください」


「パチパチ」


「やめてください」


「パチパチ」


「やめろ」


「お前が言うな」


「あっ」


「で、剣は」


「剣」


「『剣術』持ってるって言ったろ」


「持ってます」


「使ったことあんのか」


「えっと」


「答えろ」


「素振りは」


「実戦は」


「ないです」


「ふーん」


「だって後衛なので」


「後衛で『剣術』持っててどうすんだよ」


「いや、一応」


「飾りか」


「飾りじゃないですよ」


「飾りだろ」


「飾りかもしれない」


「認めるな」


「認めます」


「お前」


「はい」


「勇者やめろ」


「えっ」


「向いてない」


「酷い!?」


「事実だろ」


「事実かもしれないですけど」


「回復役だ」


「えっ」


「お前は回復役だ」


「でも勇者」


「元な」


「元勇者」


「元勇者で後衛で『聖光魔法』使える」


「使えます」


「回復役だろ」


「回復役、です」


「文句言うな」


「言いません」


「指示出すな」


「出しません」


「『俺ならそうしない』とか言うな」


「言いません」


「『回復します』だけ言え」


「『回復します』だけ」


「他は喋るな」


「喋らない」


「これでパーティから追放されない」


「追放されない」


「美少女も来るかもしれん」


「えっ」


「回復役は人気だ」


「人気!?」


「来るぞ」


「来る!?」


「来ない」


「えっ」


「気のせいだ」


「期待させないでください!?」


「うるさい黙れ」


「黙ります」


「街行け」


「行きます」


「冒険者ギルドだ」


「ギルド」


「『回復役できます』って言え」


「言います」


「『元勇者です』って言うな」


「言わない」


「絶対言うな」


「絶対」


「言ったら追放されるぞ初日に」


「初日!?」


「ギルド入って初日に追放だ」


「そんなことある!?」


「お前ならある」


「酷いですよ!?」


「事実だ」


「事実」


「切るぞ」


「ありがとうございました」


「礼はいい」


「あの」


「何」


「ヘルプデスクの人」


「だから違うって」


「俺のこと、よく分かってますよね」


「分かりたくねえよ」


「五分で見抜きました」


「だろうな」


「パーティの人も五分で見抜いたんですかね」


「だろうな」


「もっと早かったかもしれないですね」


「だろうな」


「ちょっと泣きそう」


「泣くな」


「泣きます」


「切るぞ」


「待っ」


 ガチャ。


 受話器を置いた。


 後衛で文句言ってた勇者。


 追放されて当然だ。


 俺の知ったことじゃない。


 ジリリリリリ。


 出ない。


 ジリリリリリ。


 出ない。


 ジリリリリリ。


「死ね」


 出た。


「また見られました」


 胸の女だった。


「殴れ」


「殴ります」


 ガチャ。


 短い電話だった。

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