学園
通りすぎていく景色を眺めながら、思う。
結局、リオのお父さんは一度も会わなかった。
娘が倒れたのに見に来ないのかな?
リオが倒れたときに見に来たと思っていたけれど、ずっと一緒にリオの側にいたお母さんが『見てないわね……』と言ってたし………。
家族ってそういうもんだっけ?
………
絶対に違うっ……。
これはまた……家族の間に何かがありそうだな……。
でも……小説には、仲の良い家族って書かれてたけど……
内容が違う……?
そう考えながらやっと気づいた。
この制服……可愛いわね……。
小説には、詳しく書かれなかったけど、ピュアホワイトのベースカラーにネイビーブルーがアクセントカラーとして入っている。それも、ワンピースに近く、コスプレみたいなのが新鮮だ。
「……初めての学院か。……ううん、リオとしては、何度も通った場所、なんだよね」
◇◇◇◇◇◇
馬車は静かに、学院の門の前で止まった。
窓の外に目を向けると、広々とした石畳の広場と、荘厳な校舎が目に飛び込んでくる。美しい塔とステンドグラス、整えられた庭。まるでおとぎ話に出てくるお城のようだった。
(わぁ……これが、リオの通っていた学院……)
思わず息をのんでしまう。
扉が開き、馬車から降りると、制服のすそがふわりと風に揺れた。
胸の奥が、少しだけドクンと高鳴る。
緊張なのか、不安なのか、それとも――期待なのか、自分でもわからない。
でも、ひとつだけはっきりしているのは、
(ちゃんとやらなくちゃ……リオの代わりに)
という強い決意だった。
門をくぐると、あちこちから生徒たちの声が聞こえてくる。笑い声、挨拶、誰かの名前を呼ぶ声――
活気に満ちた空気が、すぐに私を飲み込んだ。
その中で、私は――リオとしての一歩目を、踏み出した。
瞬間だった──
さっきの騒がしさが嘘のように、この場が凍りついた。
私を見た人はみんな黙っている。
シーンと沈む学園と重い空気。
リオ……私に向けられたのは、軽蔑、嫌悪、そして――拒絶のような視線だけだった。
「ねえ……あれって、リオじゃない?」
「信じらんない……よく来れたよね」
声を潜めているくせに、わざと聞こえるように話しているのが分かる。
私の存在そのものが、ここでは“異物”だった。
「こっち見た……やば……」
教室じゃなくて、舞台に立たされた気分だった。
誰も拍手はしない、ただ冷たい視線だけが降り注いでいた。
視線、声、沈黙……すべてが、私をここから排除しようとしているみたいだった。
これは……思ったよりひどい状態だわ……。
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