30 突如に現れた人
(まじですか……)
「……気付いていないとは、思ってなかった」
「なんかすみませんね!」
(もう! そうですよー、気づいていなかったんですよー。仕方ないじゃないですか! 当たり前のように案内されるから)
負け惜しみを心の中で零しながら、ジークを小さくキッと目線を投げる。
「……話してないはずなのに、何を言っているのか分かるんだが……」
「すごいですね〜」
「……あなたたち、仲がいいのね」
ノーコメントにするために、適当に返していると、突然会話に違う声が入る。入ってきた声にびっくりして聞こえた方を向くと、そこにはセリーヌ先生がいた。
「ぅえ!? セリーヌ先生!?」
あんた、まさか、先生がいることを知ってたんじゃないでしょうね。と心の中でジークに問いかけながら、視線をよこす。けど、ジークもどこか動揺していた。
……表情ではないけど、雰囲気? 無口な雰囲気がなくなり、戸惑っているのが、伝わって来る。
「……セリーヌ様、どうしてこちらに……?」
「話し声が聞こえたから、出迎えですよ。……でもまさか、ジークのことが見えているだけでなく、こんなに会話ができる人がいるなんてね? 知り合いだったのですか?」
セリーヌ先生は私のほうに視線を向けた。
「違…」
「いえ! 今日の朝初めて会って、迷子だった私を案内してくれました」
『そんなわけないじゃないですか!』と最初に言いそうになって、慌ててお嬢様口調……まではいかなくても、敬語で答える。……ジークの言葉を遮ったなんて気づきもしないで。
ジークが“……おい”と視線を投げてきたけど、なんのことかわからなくて「……なに?」と小さい声で聞くも、またため息をつかれた。
(本当になんなんだよ! だいだい、私に対してため息つきすぎなんだよ! もう〜⋯⋯なんにもやらかしてないじゃんか、私は)




