時間を戻す魔法
頭の中で感動しながら、こんなに分かりやすかったら自分でも使えるかも……と考えて口を開く。
「この花瓶を元通りにすればいいのかしら?」
「できるわけないわよ。上級魔法だし、魔力も使うのよ。習ってもないわ」
(えっ!? そうだったの?! リオは天才か? 学園を通う意味とは?)
そんな疑問が頭に浮かぶ。
……まぁ、直したいと思っているみたいだから、いっか。
周囲のざわめきが遠のく。
私の意識は、ただ花瓶の欠片だけを見つめていた。
頭の中に浮かぶ詠唱。
「――《時間》、巻き戻れ」
言葉が空気に溶けていく。
一瞬の静寂。
世界が息を潜めたかと思うと──胸の奥で何かが弾けたような感覚が走る。
指先から淡い光が広がり、空気が逆流するような音が響いた。
床に散った花瓶の破片が、淡い光を帯びて──ゆっくりと宙へ浮かび上がる。
逆再生のように、ひとつ、またひとつ、割れる前の姿へと戻っていく。
(これが……時間を戻す魔法……綺麗ね)
光の粒が、破片とともに宙を舞う。
ひとつ、またひとつ──淡く揺れながら、私の瞳に溶けていった。
次の瞬間、知らない景色が頭に流れ込んだ。
(っ! これは……花瓶が見てきた景色…?)
「……戻った?」
誰かの小さな声。
私の手は、まだ光を帯びて震えていた。
(これが、リオの見ていた景色……)
まるで、魔法をどうやるのか、体が覚えているように、ほとんど体が動いていた。
……長年の癖のような。
(こんなになるまで、何年かかったの……?)
手の震えが止まらない。
胸の奥が、知らない記憶とともに疼いていた。
「まさか……。そんなはずは……」
誰かの震える声が、こぼれた。




