12 騒ぎはリオの努力で
(見間違えただけだよね? 見間違いだったよね!? 私が幻覚を見ただけに違いない! うん! きっとそうだ! 迷子になって、目が疲れたんだけだよ! じゃないとおかしいもんね!)
だって、流石に初日で、まだ朝なのに……また問題があるとか、ないはずだし!
ほら、今だって平和な教室が──
ドアに近づき、ドアが開くと同時に「──……大事なものだったのよっ!!」と思考を消す声が届く。
(見たくない、見たくない、私は見たくない……いや、まだ希望はある! きっと幻聴も聞こえるようになっただけだから!)
たらたら流れていく汗を感じながら、意を決して教室内を見た。
「申し訳、ございません……」
(うわぁ、幻覚でも幻聴でもなかったよぉ……。さっきから事件に遭遇する倍率多くない? 授業も、というか、ホームルームさえ始まってないんですけど?!)
……私は違っていたから……。なに? リオはトラブルメーカーでもあるわけ!?
それともこの世界の貴族……登場人物がめんどくさいだけ??
不満を抱いていると「謝れば済むと思っているわけ!?」とつり目をした子が手を振り上げたのが見えた。
(危ない!)
気づけば、足が駆け出していて、バシっ! という音とともに頬がジーンと痛む。
(リオ、ごめん)
リオに謝っていると、急に飛び込んできた私につり目の子はびっくりしたように、目を見開く。
「あなた、リオ!?」
周りの公衆もざわつく。
「なんでリオが!?」
「何を要求されるんだ?」
「学園に来たって噂は本当だったのか」
(聞こえているんですけど!? 助けるのもダメなわけ? じゃあ、あんた達が助けなさいよ!)
そんな考えを頭から追い払う。
ざわつきを無視して、つり目の子と向き合った。
「あなたの大事な花瓶を割ったこの子は確かに悪いけど、それでも暴力はダメだよ」
「なっ……」
会話をしながら、そのものの時間を戻す魔法はないか、頭の中で考える。
(仮にもここは物語の中……そういう魔法もあるはず……)
すると、まるで自分が学んだかのように──誰かの手が導くように、すらすらと、欲しい魔法が浮かんだ。
どんな大きさのものまではこれ、これ以上はこれを使う。そして、使われる魔力の量も、なぜか分かる。
自分はまだ魔法を見たことがなければ、使ったことも、もちろんない。さっきの考えもどっちかというと賭けだった。
これがリオの知識だと理解するのに、時間はかからなかった。
(リオ……あなた、どれだけ努力したの……? こんな風に知識を定着させるなんて、普通は無理よ……)




