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MIMIC~魔法剣士ミミちゃん~  作者: かっつん
魔法剣士ミミちゃん!Re
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第14話:いままでのおさらい

魔道省、2階会議室フロア―――

夕暮れの日の光が僅かに差し込む廊下を、魔道省管理部長官テイラー・クリフトが歩く。その後ろをとぼとぼと歩く2人の双子の少女がいた。


「おねぇちゃん……」

「……なるようにしか、ならないと思う」


妹、ミミ・Cクリス・マーティンは、姉に不安そうに話しかける。姉、レイラ・Cクリス・ノクターンは、そんな妹を少し気遣いつつも、自らの手をもう一方の手で握りしめていた。


「……あのな」


テイラー長官は立ち止まり、小さなため息をつくと、2人に振り返り言う。


「何も取って食おうとしている訳じゃあない。作戦も終わったばかり。姉妹で激闘した後だろう。身体を労りゆっくり休んで欲しいのが本心だ」


ぶっきらぼうにテイラー長官は続ける。


「だが。組織で行動する以上、規律は守らねばならん」


廊下の壁を2度、ノックする。力が強すぎて廊下中に爆音が鳴り響く。ミミとレイラは思わず耳を塞いだ。


「どうぞ」


ただの壁から声がする。テイラー長官は廊下の壁の何もないところを掴み、ドアノブを捻るように手首を回す。


「さぁ、入れ」


テイラー長官が腕を引くと、廊下の壁だった場所が扉のように開いていく。中は教室程度の広い部屋だった。大きな円卓の向こう側に、2人の男女が椅子に腰掛けていた。


「失礼します……」

「やぁやぁ。はじめまして。ミミ・C・マーティン。そしてレイラ・C・ノクターン。どうぞかけて下さい」


机に肘をつき、指をこねくり回していた男は、明るく親しげな挨拶を交わし、椅子へと着席を促す。


「テイラー。ログを見ましたが、今回の指揮も見事でした。やはり管理部に任せたほうが、普通魔術師達の動きがよいですねぇ」

「……戦闘部長官のお前が留守だったから臨時で立っただけだ」

「いやはや、何度も言いますが私は戦闘は専門外ですのでねぇ。本来なら私が長官を務めたいくらいです」

「ふっ、どの口が言う」


部屋の壁にもたれ掛かり、立ったままのテイラー長官は低い唸り声のような音で短く笑う。男は軽く手を叩き、ミミ達の方へと向き直った。


「さて、本題に入りましょう。ミミさん。私達の事は知っていますね?」

「は、はい。ツバストニー・コクーンさん。それと業務部長官のデオン・セレナさん」

「大正解です。よくお勉強していますね」


ツバストニー長官はその開いているか閉じているか分からない細い目の目尻を下げつつ、小さく拍手をするも、その手はすぐに止まった。


「……お2人を呼び出したのは私です。我々も未確認だった邪教団幹部を名乗るミーナ・ピチカート。そして同じく未確認の邪教団勢力。あの場で何があったかは解析中ですが、とにかくあなた達は彼女らを退けた。とりあえずはご苦労さまでしたと言っておきます」

「あ、ありがとう、ございます……?」


ミミはぎこちなくも礼をする。レイラも黙って頭を下げる。


「さて、未確定の話に時間を費やすのもよくない。今日はとにかく事実確認だけをしましょうかねぇ。まずはレイラさん。体調はどうですか」


ツバストニー長官がレイラの方を見る。


「魔力波長で判定は終わっていますが、念の為の確認です。貴女はもう操られてはいませんね?」

「……はい。今はミミのため、みんなのために、この力を使います」

「うん、よろしい。邪教団の精神操作をどう振り切ったのかは、また詳しく調べさせてもらうとします」


ツバストニー長官は満足そうに頷き、ミミの方へ向き直る。ミミは思わず姿勢を正し直した。


「さて。お次はミミさん、あなたの『命令違反』についてだ。戦闘部長官として話を聞いておきたくてですねぇ」

「っ、あの」

「私の質問が先です。余計な口は慎むように」


ミミの言葉をへし折るように、ツバストニー長官が表情を変えず少しだけ声のボリュームを上げる。


「……続けますよ。先ほどの『鏖の儀』にて、ディスコード殲滅及び逃げ遅れた住民の保護。開始直後にトラブルに見舞われたとはいえ、初陣とは思えない素晴らしい働きでした。問題はそのあと」


ツバストニー長官の細い右目が僅かに開く。その眼光は、ミミの顔をしっかりと見つめていた。


「本作戦の指揮官であるテイラー長官の待機命令があったにもかかわらず、貴女は単身で魔法剣士反応のあった方角へと突っ走った。事実ですね?」

「で、でも……」

「事実ですね?」


再度繰り返すようにツバストニー長官が念を押す。『二度同じ質問をさせないでください』。まるでそう言うかのように。


「……はい」

「ちょっとツバストニー。これじゃあ尋問じゃない。ミミちゃんが萎縮しちゃってるじゃないの」


見かねたセレナ長官が割って入る。


「まだこの子達は子供よ?」

「子供、だから何です?私はただ、命令に背いてまで、同じ作戦にいた仲間を置いてまで、自らが敵うかも分からない敵対する魔法剣士に会いに行く行動原理を知りたいだけ。そこに大人も子供も関係ないと思うんですがねぇ」


ツバストニー長官の言葉を聞き、ミミが少し涙ぐむ。しかしそこで折れるミミではなかった。手の甲で目を拭うと、その目はあの時見せた光が宿っていた。


「確かに、ちょっと前におねえちゃんに敵わなかった……」

「質問の答え以外は……」

「それでも!」


ツバストニー長官が制止する声をさらに遮るように、ミミは椅子から立ち上がり続ける。


「それでも!操られたおねえちゃんに会えるチャンスを待ってた!おねえちゃんを元に戻すため!邪教団からおねえちゃんを取り返すため!居てもたってもいられなかったんです!」


ツバストニー長官は右手で顔を覆い、ミミの言葉を聞く。


「確かに、テイラー長官は待てと言った!でも私はあんな状態のおねえちゃんを放っておけなかった!どれだけ無茶だったとしても、おねえちゃんを救いたかった!」

「ミミちゃん……」

「……テイラーさん、ツバストニーさん。命令に背いてごめんなさい。でも、私は間違った行動をしたとは思ってません。おねえちゃんも、サキも、私が助けるって決めたから」


無言。背後のテイラー長官は壁にもたれかかりつつ、腕を組み誰にも気付かれず口角を上げる。ツバストニー長官は背もたれに体を預け、少し上を見る。


「……まったく。とんでもない人材が来たものですねぇ」

「ええ、まったく」


セレナ長官もテイラー長官同様、腕を組んでミミの言葉を聞いていたが、その腕を解き優しくほほ笑んだ。


「命令違反したのは間違いない。けれど、自分が信じる正義を疑わず真っ直ぐに突っ走る。まるでどっかの誰かさんみたいね」

「えぇ。信念というものは時に組織の秩序よりも強力です。管理する側に立ってみれば、厄介極まりないことですがねぇ」


ツバストニー長官が微笑む。


「今回は事情も事情でしたし、不問とします」

「えっ?」

「まぁお座りなさい」


ツバストニー長官の言葉に拍子抜けしたミミを、座るように促す。


「てっきり私達、もっと怒られるのかと……」

「おや、それがご所望でしたか?」

「……いや、嫌ですけど」

「でしょう?ではセレナさん、告示を」

「了解……ミミちゃん、レイラちゃん、我々魔道省は貴女達2人を正式に『魔法剣士』と認めます。魔道省職員として、来たる邪教団の脅威に対し、人類の為存分にその力を振るいなさい」


ミミ、レイラは顔を見合わせ、再度セレナ長官の顔を見る。セレナ長官は困惑した表情の2人を交互に見て、微笑む。


「これからよろしくね、って事」

「そういう事です。貴女達は魔道省としても貴重な人材。魔道生物と契約した魔法剣士というのは、それだけ強大な力だと言う事です。そんな『力』を持つ者を間違った方向に進ませては、我々も先人たちに顔向け出来ないのでねぇ」


長官2人が満足そうに繰り返し頷くのを見て、テイラー長官が続ける。


「……この達の目には、いつか見た『決意の光』が宿っている。まだまだ技量は幼いが、私達を超える人材にもなりうる存在だ」

「そうね。テイラーもエリーも、そうやって言うのも頷けるわ。私も、一目見てそう思ったもの」

「……一旦話はまとまりましたねぇ。邪教団フェ・ル・マータの思惑は読めない事ばかりだ。貴女達には職員としてキッチリ働いてもらいたい……とはいえ。貴女達はまだ学生。学ぶべき事はたくさんあります」

「ええ。クリス校長には、レイラさんの編入手続きを進めてもらっています。出動令が無い平時は、引き続き学生として過ごすように」

「……は、はい!ありがとうございます!」


ミミとレイラは長官に頭を下げる。その後、2人は顔を見合わせ、笑った。



















聖クリス学園教室―――


「という訳で、編入生を紹介します」


担任のヨハン先生が、レイラの名を黒板に表示させる。


「……レイラ・C・ノクターンです。ミミの双子の姉です。よろしくお願いします」


生徒の視線がレイラに集まる。レイラはその視線を恥ずかしそうに反らしていた。

ひとしきりの挨拶を終え、レイラはミミの隣の席につく。ヨハン先生の朝礼を聞きつつも、ミミはレイラに耳打ちする。


「そういえばおねえちゃん、教科書とかってどうするの?」

「教科書はまだ届いてないから、ミミに見せてもらえ、って」

「そっか!」


ミミは嬉しそうにレイラの席とくっつける。レイラはその顔を見て、小さく微笑んだ。


「では授業を始めます。今日はいままでのおさらいから―――」



同じ学び舎で、同じ事を学ぶ。生き別れた姉妹の、いままでのおさらい。

一緒に本を読んだことも無かった双子が、1冊の教科書を頭を突き合わせるように読む。

妹が姉の横顔を見る。姉は教科書の文章を目で追っていたが、妹の視線に気付き妹の顔を見る。

2人は、クラスメイトに気付かれないよう笑い合っていた。

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