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MIMIC~魔法剣士ミミちゃん~  作者: かっつん
魔法剣士ミミちゃん!
14/15

第1楽章の記録:第1小節


「なんだって……!?巨大隕石が、ここに!?」

「フェ・ル・マータと名乗るテロリストの仕業か!?」


場所はイギリス、ロンドン。各国の首長が一堂に会する、国際議会。生き残った国の長が今後の事を話し合う中、突如鳴動するアラートに、議会は騒然となる。


「衝突まで約5時間。被害は言うまでもなかろう」

「ひ、避難を……!」

「待て。この議会が行われるタイミングに攻撃を仕掛けると言うことは、我々を狙っているのは明白。仮に逃げたとて、ここを捨てる訳にいかぬのは承知のはず。この地を失えば、結局我々の敗北は同然。違うか?」

「……、……」

「それよりも、対応を考えるのが先だ。諸国で持つテロリストの情報を共有されたい。最近発見された、マナ……とやらを求め我々を滅ぼそうとしているのは共通認識と思うが、その他情報がある国は挙手を頼みたい」


手を挙げたのは、日本の首長。


「我が国では、『鏖の儀』と呼ばれる先日のテロにて、テロリスト達の声明を受け取った。『我々はフェ・ル・マータ。人類と言う名の原罪。それを刈り取る者なり』……との事。依然研究段階で実用性は分からないが、マナからは莫大なエネルギーが取り出せる事から、これを求めているのは間違いないだろう」

「確かに、マナのおかげで、魔術という新たな技術革新が起きている。魔術に長けた者を『魔術師』と呼ぶとか。ここイギリスでも、魔術を使える者が騎士団を結成、魔術騎士、シュヴァリエと名乗っていると聞くが?」

「あぁ。彼らのお陰で魔術の使えぬ我々が生き延びることが出来ているのは事実だ」

「そんな得体の知れぬ者に命を任せるなどと」

「しかし、事実我々は彼らに護られている。先日のテロ被害は分かっている範囲で3000人規模の被害者が出ていて、全員行方不明。彼らがいち早く察知し、我々を避難してくれたおかげで、今回の議会も開けたのだ。それに、今回の議会の守衛も買って出てくれている」


議会の喧騒を裂くように、アメリカの首長が手を挙げる。


「では、今回の件は『魔道団』に任せてみてはどうだろう」

「魔道団だと?魔術師が結成した、あの団体か?」

「許されない。そんな小規模団体にこの星を任せるなど、我々人類の沽券に関わる事態だ」

「意地になっている場合か?既に地球上の人口はテロリストによって半減しているのだぞ!もし今回の隕石がフェ・ル・マータの仕業であれば、我々の持つ兵器は通用しない。それは各国承知の筈だ!対抗できる手段が無いのだぞ!」

「しかし……!」


埒のあかない議論が続く中、イギリス首長は議長に尋ねる。


「議長、時間がありません。決断を」

「……事態は一刻を争う。今回の対応は魔道団に任せるとしよう」








―――――――――



「……で、俺がその特攻隊の隊長、と」

「その通り。ハワイ諸島に本拠地を構えたボク達が、こうして転移魔術で移動しているのは他ならぬイギリス支部の要請でね。ホラ、あそこに隕石が見えるだろう?」


 魔道具、ナックルを装着しつつ、指を鳴らす少年テイラー・クリフトと、彼よりも幼い見た目をしたエリー・プラチナが、転移魔術にて高速で飛行している。エリーの指さす先には、遠い空の向こう、天に薄く張る雲を裂くように隕石が顔を覗かせていた。


「……まぁ、続きを聞かせてくれ」

「『賢者の石』によると、隕石あれはイギリス本土に衝突するとある。現在ディスコードとの闘いにおいて、イギリス付近の魔術師を失うのは大きな痛手となる。それはわかるね?」

魔術騎士シュヴァリエとか言ったな。俺はまだ会ったこと無いが、ソイツらに任せればいいんじゃないのか?」

「現在彼らは一般者ノルマルの護衛にあたっている。つまり人手不足、ってヤツさ。『賢者の石』は隕石の衝突まで2時間と言っている。ただ、知っての通りこれまでのディスコード襲撃によって、地球上の人口は半分まで減っている。イギリスは特に深刻だ。魔術騎士かれら以外、一般者はほぼ全滅したと聞く。一部の皇族と政治家だけが魔術師の補助で生き残っているだけ」

「……それで、作戦は?」

「レディの作戦はこうだ。一般者から弾道ミサイルを貰い、魔術で射出、隕石にぶつける寸法だ。テイラー、君にはその操作を行ってもらう」

「……姉御らしい豪快な作戦だ。しかし、イギリスの弾道ミサイルは世界条約で廃棄されたはずでは?」

「今私たちはスペインに向かっている。あそこであれば軍もまだ機能している」

「なるほど」




魔道団スペイン支部。支部と銘打つが、イギリス支部の魔術師と合わせても数名しかいない。その数名が閑散としたマンション街の一室に集まっている。


「レディ。テイラーを連れてきたよ」

「ご苦労、エリー。悪かったね、寝るところに急にお願いしちゃって」

「……これ、パジャマじゃなくて、ボクの魔道衣なんだけど」


レディ、と呼ばれた女性が豪快に笑う。


「いや、すまんすまん。似合ってるよ、エリー」

「じゃ、ボクは本部に戻るから。テイラー、武運を」

「あぁ。ありがとう」


エリーが踵を返し立ち去るのを見届け、レディはテイラーの方へ向き直る。


「さて、テイラー。作戦の概要は聞いているね?」

「……ああ。姉御らしい豪快な作戦だと思ってるよ」


レディ、ミラード・"Rレディ"・ダガーは手を叩き、音頭を取る。


「よし、皆集まってくれ!作戦前ブリーフィングを始める!本作戦の指揮は私、ダガーが執る!」


魔術師が円になり、地図を囲む。立体映像で描写されるのは、イギリス上空、そして巨大隕石だ。


「隕石には奴らの魔力が纏われている。近づくモノは全て跳ね返す、斥力波だ」

一般者ノルマルの持つ迎撃兵器は当たりすらしない、ということか……ならば、ここから直接弾道ミサイルで狙撃したとしても、意味が無いのでは?」

「良いことに気付いたね。そこを、一般者ノルマルにも協力してもらうのさ」


レディは不敵に笑い、皆を誘導する。

一行が向かうはスペイン空軍基地。魔道団支部であるマンションから徒歩10分程度に位置する空軍基地には、1機の戦闘機が待機していた。


「君が魔道団の団長、レディ・ダガーだね?」

「そういう貴方はレオ中将。ご協力感謝する」

「政府からの特命と聞いた。我々も出来る限りのバックアップはするつもりだ」


空軍基地長のレオ中将の案内で、魔術師一行は会議室へ案内される。


「……、作戦は先程聞いたが、正直唖然としている。魔術師の考える事はよくわからん、というのが率直な感想だ」

「ははっ。だが、理に適っているだろう?実行はこのテイラーが行う」


レオ中将はテイラーを見ると、驚きの声を上げる。


「まだ子供じゃないか」

「うるせぇガキ扱いすんじゃねぇ」

「そうやってムキになるのがガキだと言うのだテイラー」


レディがテイラーの頭頂部を拳で小突く。


「レオ中将。彼は齢こそ我々よりも若いが―――」

「……レディ、それ以上は大丈夫。テイラー、失礼した。実力は外見に依るものではない、それは我々も承知している」

「……わかりゃいい」

「話を戻そう。本作戦では、弾道ミサイルの他、戦闘機を出撃させると聞いた。レディ、ここまでは合っているな?」

「その通り。その戦闘機に、弾道ミサイルを積載する。いや、厳密に言うと『弾道ミサイルを持ったテイラーを積載する』、かな」

「どうやって彼に持たせるのかはあえて聞かないでおこう。頭が痛くなりそうだ。……そして、隕石近くまで戦闘機で近付き、弾道ミサイルを魔術で発射。戦闘機と乗組員はその足で帰還。作戦は以上だな?」

「完璧ね、中将」


レオ中将は少しだけ眉を顰めつつも、作戦の内容を紙に書き取る。


「……仔細承知した。こちらの腕利きのパイロットを1名派遣する。戦闘機の操縦においては我が軍で右に出る者は居ない。テイラー、貴殿は弾道ミサイルでの狙撃に集中してくれ。補助装備として積載している小型ミサイルもある。何かの補助となればよいが……レディ、その他我々に何かすべき事はあるか?」

「では、作戦準備を進めてもらいたい。私達はこれから戦闘機とミサイルに魔術を施したいのでね。作戦開始は20分後でよいかな?」

「承知した。ではその様に伝えておく」








「お前が、この戦闘機に乗る魔術師か?」


出撃準備の暖機運転。戦闘機のエンジンの轟音に紛れ、パイロットが準備運動をしているテイラーに話しかける。


「そうだ。よろしく頼む」

「中将の言う通り、確かに子供だ。ちょうど俺の娘も、生きてたらお前くらいの年齢としだった」

「『だった』?」

「……俺の妻は、娘は、奴らに殺された」


テイラーは準備運動の手を止め、パイロットに向き直る。


「この作戦は、弔い合戦ということか」

「……作戦を完遂したとて、2人は帰ってこないがな」


掻き消されそうなほどの小さい声で、パイロットは言う。テイラーは言葉を返さず、拳を突きだした。


「?」

「だが、お前は生きている。生きて、生きた証を未来に伝えるんだ。それが弔いとなる」

「……すまない、水を差した。今回の作戦、俺達が人類の希望となる。絶対に成功させるぞ」

「あぁ。もちろんだ」


パイロットは笑って拳を突き合わせる。テイラーは笑みを浮かべた。





各々が準備を進める中、魔道団の通信が響く。


『あー、あー。テステス。こちらエリー・プラチナ。レディ、聞こえるかい?』

「通信良好。本部そっちはどうだい?」

『マリアナ・キャビン、テイラーのバイタルは正常にモニタ出来ています。準備リンク完了です』


レディはそれを聞き、満足そうに頷く。


「うん。よろしい。レオ中将、始めてもよろしいか?」


レオ中将はマイクに向かい、雄々しく叫ぶ。


「これより我が軍は、魔道団の指揮にて行動する!スペイン軍に恥じぬ行動をするように!良いな?」


通信機の向こうから、威勢の良い返答が轟く。


「……だ、そうだ。レディ」


それを聞いたレディは、満足そうに頷き、両手を叩く。


「"Ready to Fight,Kids?"(用意は良いか小童共?)」


魔道団も小規模ではありながらも彼らと同じ返答を轟かせた。












戦闘機のエンジンの轟音轟く中、テイラーは弾道ミサイルを担ぐ。風が空を切る。辺りの景色がまたたく間に変わっていく。山をギリギリのところで越えた瞬間、巨大隕石の全貌が明らかになる。


「レディ!こちらテイラー、目標を肉眼で確認!」

『了解。狙撃ポイントに着いたら報告してくれ』


通信を終えた頃、隕石が一際輝く。

刹那、テイラーの頬を、魔力弾が掠める。


「ッッ!管制室!目標から高密度の魔力攻撃を確認!」

『やはり一筋縄では行かないか。各位に告ぐ!本作戦はこれよりプランBへ変更する!一般者は無音分解の虞あり!魔術師以外は撤退せよ!』


魔力弾は弾幕のように、戦闘機へと振り注ぐ。


「パイロット!撤退命令だ!」

「……いや、行かせてくれ。この程度の弾幕、あの時に比べれば屁でもねぇ。たとえこの身千切れようと、お前という希望を目的地まで届けるさ」

「……死ぬ気か?」

「俺は死なんさ。お前が言ってくれただろう?『生きた証を未来に伝える』とな」


パイロットの言葉に、テイラーは強く頷く。


「振り落とされるなよ!!」


戦闘機が激しくローリングし、弾幕を回避する。テイラー、パイロットの視線は隕石を見つめていた。



「姉御!ポイントに到達したッ!」

『よし!そのままぶん投げろ!』


テイラーはレディ弾道ミサイルをぶん投げる。それと同時に遠隔で発射剤が点火し、ミサイルは轟音を立てて真っ直ぐに隕石へと向かう。


「いっっけぇぇぇッッ!!」







『あぶない!!!』


本部のキャビンの叫び声。それと同時だった。戦闘機に、特大の魔力弾が着弾した。


「お……おい!パイロット!!」


衝撃こそあれど、テイラーおよび戦闘機は魔術シールドのお陰で無事だったが、コクピットの中から応答がない。

代わりに、無音分解された黒いススのような「人だったもの」が座席に残るだけだった。


「……っっ!」


テイラーは苦悶の表情を浮かべ、膝を付き、拳を突き立てた。


「なにが……未来だ……なにが……希望だ……っ!」


追い打ちをかけるかの如く、本部から通信が届く。


『弾道ミサイル……失速しています』

『斥力波の影響か!?これでは着弾出来ない!!』


弾道ミサイルが、隕石の斥力波に押され着弾しない。操縦手を失った戦闘機も、あとは墜落するだけ。

通信を無言で聞いていたテイラーは、平手で自らの顔を叩き、レディに進言する。


「……姉御。プランをB-ダッシュへ変更だ。許可を」

『……わかった。許可する』


レディが静かに応答する代わりに、本部からレオ中将の驚きの声が響く。


『テイラー!?何を!?』

「説明は後だ!とにかく俺のナックルにありったけのマナを送れ!!」


墜落しつつある戦闘機の装甲を引っぺがし、機体に残っていた小型ミサイル2機を乱暴に取り出す。


『まさか!?』

「……その『まさか』だ。パイロットが俺に託した希望を、消してなるものか」


テイラーの眼が決意で光る。小型ミサイルの1機をぶん投げ、ミサイルが点火する反動を狙い、ミサイルの上に飛び乗る。


「うおおおおおおおおおおっッッ!!」


まるでミサイルでサーフィンをするように、テイラーは飛ぶ。落下しつつある弾道ミサイルの真下を目指す。

1機目のミサイルの燃料が尽きてくると、すぐさま脇に抱えた2機目のミサイルの尻を叩き点火させる。


「オラァ!次だッ!」


2機目のミサイルに飛び乗る。弾道ミサイルの燃料が尽きたのか、次第に落下する速度が速まっていく。


「っ、間に合えッッ!」


直下にたどり着く。巨大な弾道ミサイルの影が、テイラーの姿を覆いつくす。

テイラーが振り上げた右腕が一回り肥大する。ナックルに強い光が宿り、テイラーを明るく照らす。


「持ちうるマナを総動員!全ツッパだァ!!!」


強く握りしめ直した拳は、大地に振り下ろされた。何度。何度も。


「足りねェ分は勇気と根性で補えッ!」


ひび割れは次第に隆起し、幾重にも重なる地層を積み上げていく。弾道ミサイルが持ちうる燃料を使い果たし、ゆっくりと地層の上に着地する。


『即席の発射台を作ったというのかッ!?しかし燃料もない、どうする!?』

『案ずるな、レオ中将。こんなこともあろうかと1人待機させているさ』




隕石着弾予定地から50km離れた地点、そこに1人の魔術師が待機していた。


「まったく……戦闘は専門外、と言っても皆聞き入れちゃくれませんね」


着弾予定地を広く見渡せる山の頂に立つ魔術師、ツバストニー・コクーンは呆れつつも魔術回路を稼働、魔法陣を展開させる。


「レディの人使いの荒さにも困ったものだ」


巨大隕石の巻き起こす斥力波の影響で、辺り一面に突風が吹き荒れる。ツバストニーの掌が青く光る。


「この地に宿るマナ達よ、少しばかり私達人類の為に働いてもらいますよ……!」


掌を隕石に向ける。魔法陣が術者の周囲を回り、周囲のマナをかき集め、術者の掌へと集中させていく。

魔力の塊を、鋭い槍へと換装。発射台となる術者は魔法陣をアンカーとし固定。


「……発射シュートッ!!」


音速を超えた槍が隕石の斥力波を突き破り、深々と突き刺さる。突き刺さった槍から伸びる青白いマナが、ミサイルへと振り注ぐ。




『テイラー、今です!このマナを道糸にして、思いっきりぶちかましてやりなさいッ!』

「サンキュー、ツバストニー!」

『待てテイラー!発射に必要な燃料はもう無い!どうする気だ!?』

「言ったろ、ありったけのマナを送れ、って」


テイラーは上を見上げる。弾道ミサイルの噴射口を見つめ、不敵に笑う。


「俺のナックルが燃料になるッ!戦友アイツの気持ちを、無駄にはしないッ!」


隕石が間近に迫る。テイラーは腰を低く落とし、左手を伸ばし狙いを定める。


「ここ一番!踏ん張らねぇと俺達に明日は無い!」


脇を締め、腰の位置に右手を構える。その思いに応えるように、テイラーの拳が真っ赤に燃え始める。


「人類の未来に……光あれぇぇぇぇッッ!!!」


思いっきり、拳を天に突き上げる。

その拳戟は弾道ミサイルの発射剤となり、ミサイルは勢いよく飛び上がり、隕石に着弾。




閃光。




弾道ミサイルの放った光と爆轟で、辺り一面は白夜の如く染まり上がる。

その光が落ち着くころ、隕石だった小石が降り注いできた。


『やった……!レディ、隕石撃墜完了です!』


管制室に歓声が沸き上がる。





『……テイラー?』


応答はない。


『テイラー!?返事して!テイラー!』


本部のキャビンの叫び声を、ひとつの音が遮る。


「ぐがー……」

『……えっ?』


テイラーのいびきだった。


『て、テイラー?』

「んあ、なんだようるせえな。こちとら日本からハワイ、ハワイからスペイン、スペインからここまですっ飛び続けて疲れてんだ。寝かせてくれ」

『……これだからガキだと言うのだ……』


テイラーのいびきが通信網中に響き渡る。

通信越しのため姿こそ見えないが、彼のいびきが偽物である事は誰もが理解していた。






犠牲を払ったが、人類は生き延びた。希望を持つ者、託す者。希望それを受け取り、継ぐ者。

これは第1楽章の最中、後に魔道省となる組織「魔道団」が関係した、初めての作戦であった。

また、後に五戦譜スタッフ・ノーテーションと呼ばれる5人にとって、初めての作戦でもあった。

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