勇者の資格 7
「ふぇぇぇぇっ。」
「ちゅうちゅう。」
……なんと、言えば、良いんだろう。
繰り広げられている、奇妙な光景にルドルフの言葉が詰まる。
声にしたがって行った方向にあったのはお墓だった。
大きな丸石を置いただけの簡素な墓。
単体で存在するそれが墓だと分かるのは、少女が摘んできたお花がこれでもかと飾り立てられているからだ。
その墓の足元で少女は泣いている。
少女の周囲の地面は見えない。見えないほど、灰色の毛並みで埋め尽くされている。
そして毛並みは波打つように個別に動き、時おりピンクの尻尾が見え隠れする。
「……うわぁ。」
大抵の怪奇現象に耐性のあるルドルフですら呻く光景。
一歩、わざと音を立てて踏み出せば一斉にネズミ達がこちらを向く。
光の反射で赤く見える目に狼狽えながら、ルドルフは中央の少女へ呼び掛ける。
「ルルちゃん……だよ、ね?
どうした、の?」
「ひっく。」
ルルは、ルドルフの声にようやく存在に気づいた。
相手を確かめるために涙でぼやけた目をこすって、懸命に下唇を噛んで泣き声を止めて。
「るどるふにーちゃあぁぁっ!」
「うわぁっ!踏んでる!踏んでるよ?!」
小さな猪のように一直線に向かってくるルルを抱き止めながら視線はネズミに向かう。
ネズミ達は何匹かルルに踏まれたものの平気らしく、包囲網をルドルフを中心にしたものに切り替えている。
気になるのか、チラチラと此方に視線を向けるものの基本は円の外へ警戒が向いている。
なんだろう、これ。
泣きわめいて、子供らしい言語になら無い言葉の羅列を子持ちでもないルドルフが、聞き取れるはずもなく。
ルルの背中をゆっくりと撫でながら落ち着くのを待つしかなかった。
日が傾き始めた頃の話である。




