勇者の資格 8
「…………おちついた?」
「……うん。」
おっかなびっくり、恐る恐る問いかけるルドルフに
ずびっと鼻をすすりながらルルが答える。
ネズミに囲まれてから一時間程。
声が枯れても泣き続けた結果、体力をだいぶ使ったのかうとうととルルは船を漕ぎはじめていた。
壊れ物に触れるように優しく髪を撫でられている安心感から強くなっていく眠気と戦いながら、ルルはルドルフを見上げた。
「ねー。ルドルフにーちゃん。」
「んー?寝ても良いよ。おうちには送っておくから。」
「やっ!!」
がらがら声で強く声を出したからかルルは少しだけ咳き込む。
心配そうなルドルフを後目にルルはあっという間に呼吸を整える。
泣きすぎて真っ赤に染まった頬と目を擦りながらしゃがんでいるルドルフを見上げなおす。
大人にお願いをするのには、この姿勢が一番だとルルは知ってるのだ。
「にーちゃんの部屋に泊まっちゃ、ダメ?」
「……だめ、かなぁ?
僕は居候だし、給料から部屋代引かれてるといえ、一人用の部屋だからね。」
「けちんぼだあぁ。」
「んー、親方さん……ルルのお父さんの許しがあるなら考えるけど。」
「とーさん、キライ。」
ぷいっと、頬を膨らませてそっぽを向く。
「ルルはいえでちゅーなの!
とーさんは知らない!」
「家出って………。」
「とーさん、お墓参り一緒にいってくれないの!
とーさん、お墓参りしないの!だから、しらない!」
「……えっと、あのお墓は…。」
「かーさんのなの!」
「亡くなってからどれくらい?」
「一年くらい。」
「…………それは、その。そのうち、来るんじゃないかな?」
「来ないし。」
ぶすくれた、様子でルルは言葉を続ける。
「だって、とーさん。
朝、新しいおかーさんいるかって聞きやがりやがったもん。」
……どんな、意図があったかは分からないけど悪手である。
最悪である。
ルドルフの中の親方の評価が急下降しているも片親の。
女の子の父親なんてそんなものなのかもしれない。
「それに、かーさんとおんなじ色の私の髪。
かーさんみたいに伸ばしたいのに、伸ばそうとすると怒られるし。」
恐らく親方はルルの母の死を受け止めきれていないだけなんだろう。
酒が入ったときの親方の子煩悩っぷりに絡まれる身としてルドルフはそう、考える。
だけれど、あの不器用な親方のことだ。
真っ直ぐに愛情を向けられず、妻の面影を子に見るのすら苦痛で遠ざけて。
それは、勘違いするだろう。
親方にもへたれな所があるんだなーなんて思いながら連れ帰って料理長に相談するかな?なんて考える。
幸い、ルドルフが考える間に腕の中の子は眠ってしまった。
このまま、親方の家に戻しても良いけど。
流石にそれはルルちゃんに口を利きてもらえなくなりそうなので、考えを却下する。
さて、どうするか。
ルルを抱え直しながら立ち上がり辺りを見渡す。
そういえば、このネズミのこと聞くの忘れていた。




