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灰の龍は退屈が嫌い  作者: 白色野菜
狩人の章
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勇者の資格 5

灰色の空は憂鬱だ。


マリーは忙しく駆け回りながら、そんなことを思う。

雨が降りそうだと、仕事を切り上げて早めに酒場に転がり込んでくる連中が多い。

そうなると、もう忙しくて忙しくて。

ルドルフも帰ってこないし。

本当に、肝心なときに役に立たない奴なんだから。

眼福なクランさんも、帰ってきて直ぐ出かけちゃったし。


「マリーちゃん、こっちにもエール。」

「はいはーい。」

「こっちは、野菜の酢漬けなー。」

「それよりも今日は鶏肉の良いのが手に入ったけど。」

「ほーー、ルドルフの坊主か?」

「違う違う、今日来た旅人さんが売ってくれたの。途中で獲れたんだって、生け鳥よ?珍しいでしょ。」

「猟師以外で生け捕り捕まえるとは、腕のある旅人なんだな。

酢漬けの次に貰うか。」

「こっちにも、鳥くれ。」

「はーい。おとーさーん、鳥二人前ね。」

「料理長と呼べっ!」


賑やかな食事風景。

雨が降り出したのか、軽く濡れて駆け込んでくる人も増えた。

それでも、ルドルフは帰ってこない。


「いらっしゃ……ちょ、ちょっとちょっと泥だらけの格好で酒場に入ってこないでよ。」

「る、ルルは。ルルちゃんは来てないか?!」

「見てないけど……。」

「ルルちゃんがどうかしたのか。」

「おとーさん。」

奥の厨房から、マリーの父が顔を見せて血相を変えて駆け込んできた青年を見る。

ズボンのすそは泥だらけで、所々に草が付いている。

おそらくこの悪天候の中、駆け回ったのだろう。

マリーもその父も顔色の悪い頬がこけたような人相に心当たりは無いものの

ルルという子供の名前には心当たりがある。

確か、鍛冶屋の娘で今年7になるはずだ。


「か、鍛冶屋にナイフの研ぎを頼みにいったら店番のルルちゃんが居なくて……。

 親方に聞いたら、作業場から慌てて出てきて。

 そのまま俺に酒場に行くようにって……。」

「野郎共っ、雨が降り出す前のルルちゃんの居場所。心当たりある奴は?!」

宿屋の主人の野太い声に、酒場が一瞬静かになってからざわめき出す。


ルルちゃん? 井戸で遊んでなかったか。 

そいつは昨日だろ。心配だなぁ、最近森も物騒だし。

俺、見たぜ。朝ここで飯食ってた。そういや、そろそろ。いやもっと後だろ。ほっときゃその内帰ってくるって。

あの子がねー、日が落ちるころにゃ家に帰ってるだろうに。

町の癒しだよなぁ。癒しだな。


ざわつくばかりで

「………誰も見てないんだな?」

「あのー、ルルって子は、どんな見た目で?」

そう、声を上げたのはふくよかな体系の商人だ。

そうだ、町の連中以外はしらねぇよなぁ。そりゃぁ。

知らず知らずのうちに焦っていたらしい。

宿屋の主人は深呼吸をして焦りに蓋をする。


「ルルは七つ。薄い小麦色の髪をした女の子だ。今日の服装はーーー。」

「あれだ、お気に入りの空色のワンピースだったぜ。朝見た限りじゃな。」

「だ、そうだ。」


「その子なら今日、見ましたよ。」

そう、答えたのは今日来たばかりの旅人だった。

鳥を生け捕りにした、腕の良い旅人。

緊迫感が伝わっていないのか人の良さそうな微笑を浮かべたまま、静かになった酒場に響く言葉を紡ぐ。


「森と村の道中で会いまして。花畑、でしょうか?そこで火傷治しの薬草と花を摘んでいましたよ。

 私が村に来る前ですので、まだ日が高い頃の話ですが……。」

「あそこかっ!……おい、旦那。親方が何処にいったか知ってるか?」

「し、しらねぇよ。言うだけ言ってどっこいっちまったよ。」

「完全に暴走してんな……そこのエール飲んでない二人。念のため花畑を見てきてくれ。

 旦那は鍛冶屋に戻って親方が帰ってきたら酒場に来るように……いや、引きずってでも連れてこい。」

「お、俺は腕力と体力には、自信がないんだ。親方にすごまれたらびびっちまうよ。」

おもわず、酒場の連中が揃って溜息をつく。

そこは快く請け負うのが男だろうよ。

脳筋というなの肉体労働者の多いこの場で彼の言い分を理解するものは居ない。

かろうじて、商人が苦笑いを浮かべているぐらいだ。


「…………それなら、マリー。そこの男と一緒に鍛冶屋に行ってくれ。お前なら、大丈夫だな。」

「積もったツケで脅してでも連れてくるわよ。」

気の強い彼女は胸を張って、請け負ってみせる。


「それと、私が見た花畑まで案内しましょうか?あの草原は中々広いでしょう?」

「助かるが……客にそこまでしてもらうのはな。」

「いえいえ、こういう時は持ちつ持たれつですから。」

「そうかい?……なら、よろしく頼む。」


こうして、小規模ながらルル捜索が始まった。


ルドルフは、まだ帰らない。

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