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灰の龍は退屈が嫌い  作者: 白色野菜
狩人の章
37/54

静かすぎる森の中で

「まただ…。」

森の様子がおかしくなったのはこれで二度目。

一度目は山に龍がやってきたとき。

今みたいに森全体が息を殺して、怖いくらい静まり返っていました。


ただ、気配を殺しているだけで確かにこの森に生き物はいるのです。

アレンさんも不思議がっていましたが、僕も不思議です。


だって生まれたときからこの森と共に生きていますが、こんな風になったのは始めて見るから。

もちろん、森の寿命は僕よりもずっとずっと長いから、もしかしたら前にもあったのかもしれないですけど。



静まり返った森は緊張感に包まれて空気がピンっと張った感じがします。

思わず少し猫背ぎみな僕の背筋もピンっとのびていつもより少しだけ視線が高くなりました。


緊張からかよく跳ねる心臓を落ち着ける為に、弓の弦の調子を確かめるために糸を弾きます。


べんっと鈍い音が聞こえると少しだけ落ち着きます。


本当は狩りの最中に音を自分から鳴らすなんて鉄拳ものですが、今日の森の様子じゃ夕飯はキノコのスープになるからいいんです。

キノコ………もきゅもきゅいうのあまり好きくないです。


それに、キノコは暗いところが好きなのでもっと森の奥に行かないと。

奥にいくのは久しぶりなのでついでに森主様にも挨拶をしないと。

最近は森に他所の人が居るからなかなか会えなかったので少し拗ねているかもしれません。

だって、寂しがりやですし彼。



弓の弦を緩めて、森の奥へと進みます。

狩りの途中で弦を緩めるなんてなに考えてるって?

だって、張りっぱだと直ぐに駄目になりやすいですし。

正直僕、接近戦は苦手な部類なのでこっちから奇襲かけられないなら獲物狙わないし。

僕が獲物として狙われたら逃走第一ですし。

僕が弓の弦を張り直す気配を読める相手って、大体撃っても避けられるので矢の節約にもなるんですよ?


まぁ、他の森を知ってる両親曰くそんな狩り方が出来るのは獲物に逃げられても直ぐに次が見つかるこの森ならではって言ってたので異常な狩り方なのは知ってますけど…。



気配の薄い森を歩いていると、右の方から鳥の声がします。

この切羽詰まった鳴き方は何かに襲われているのでしょうか?

森が静かだからかその声はやけに響いて………あれ?少し声の量が多すぎませんか?


鳥は群れで移動するから、一度に狩れる数は人数分。

狙撃が早い僕でも二匹取れれば上々です。

一匹狩っている間に他の鳥には逃げられるのが常なんですが…まるで、群れごと襲われているような鳴き声の多さ。


鳥が飛び立つ気配もしなければ鳴き声が遠ぞいたり、近づいたりする様子もなく。


耳を済ませて様子をうかがっていると、唐突に鳥の声が途絶えました。

いくら耳をすませても、もう鳥の声が聞こえることはなく。

元通り、静かすぎる森が帰ってきました。


……よそからながれてきた猟者か魔物か。

後者なら少し狩りすぎな気もしますが彼らは名の通り魔術が使える動物なので鳥を群れごと狩るのも不可能ではないでしょう。

大きな群れの長が魔物であるのは稀にあることですし。


前者だと少し問題です。

ここの森は別に誰かの領土として人間が管理しているわけではないので法としては問題ないですが、森主様がいらっしゃいます。


生活以上の狩りを続ければ森の敵と判断されて森主様に、排除されてしまうかもしれません。

他所の人は、通貨を稼ぐために自分が食べる以上の狩りをよくするみたいですし。


自業自得とも言えますが、だからと言って放って置くのもかわいそうなので何時も一言だけ忠告することにしています。


弓の弦を張り直しながら、僕は鳥の声が途絶えた方向へ向かいます。


出来ることなら戦闘にはならないことを祈りながら。

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