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絆のクラフトマスター ~兄妹で挑む救世譚、鍛冶師の【武器スキル創生】で最凶の魔王を討つ!!~  作者: 羽羽樹 壱理


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師を越える【天使偶像の白弓】――⑤


 ◇



 鋼《はがね》には、クロムバナジウム系スプリング合金を芯《コア》に、外被《がいひ》として析出硬化《せきしゅつこうか》系ステンレス鋼《こう》を選んだ。


 特殊な熱処理と高めの焼戻しで靭性《じんせい》とばね性を確保したスプリング合金は、高い弾性限と疲労強度を獲得するに適しており弓の“しなり”を得やすいが、耐食性に難《なん》がある。


 そのためステンレス薄板《うすいた》クラッド(クラッド・異なる金属を重ね合わせ、圧延《あつえん》や圧着《あっちゃく》によって一体化した複合材のうち、比較的薄い板材に加工されたもの) の複合ラミネート構造(異なる材料を層状に積み重ねて一体化した構造)で、耐食性と更なる強度を確保した。



『靭性《じんせい》やばね性の追求もそうだけど――『微細な振動を共鳴させやすい形』にしたい! 弓を武器にするにおいて、周辺周囲に気を配る繊細な察知能力って絶対《ゼッタイ》の要素だから、それを補助する形状性質にしたいんだ。微細な振動を共鳴させやすい形にすれば、共鳴振動の具合によって魔力の流動も分かりやすくなって【天(・)使(・)の(・)肉(・)片(・)】の(・)特(・)性(・)にもマッチする。だからこの方向性を追求したかったんだ!』



 金属を一定温度に保持して硬化を得る時効技術によって、ステンレス薄板クラッドの靭性《じんせい》バランスを調整。針の穴を無限に通すような神経を使う工程にも労《ろう》を要したが――【天使の肉片】を精錬素材として叩き上げる工程に比べれば、天国のようだった。


 ひたすらに心と腕っ節を求められる作業。


 ひたすらに、本当にひたすらに――どうしてそこまでと思ってしまうほど頑《かたく》なに形を保ったままの【肉片】を、他の手段は見つからなかった、どちらが勝つかと向き合うつもりで叩き上げた。


 融和《ゆうわ》の予兆を見せたその後が地獄のように長かった――――精錬を経て。


 ステンレス薄板クラッドの時効硬化調整に入った時は、思わずその神経削る繊細な作業に、ボクは天国を見た。



『クロムバナジウム系スプリング合金を芯《コア》に、析出硬化《せきしゅつこうか》系ステンレス鋼《こう》を外被《がいひ》とする複合ラミネート構造を考えてる。重量調整の観点から見て、どうかな? ――それじゃあこの方向性で試してみよっか。――どう、兄貴《アニキ》、創作意欲は湧《わ》きそう?』


 ――最高に。




「――その白弓《しらゆみ》は、【使い手の魔力を取り込み増幅させる】特性を有しているのだねェ」




 お師匠様はここに至っても、雑談調子で仰《おっしゃ》った。


「攻勢の機《き》を窺っていたのは、『取り込まれた魔力は時間経過で増幅していく』という特性も相まってのことかな? ――――だがしかし。どうにも……現実を読み解《と》く観測において、それだけとは思えないねェ。フム、秘められた力……。観測ピースが導き出せない、なんだろう」


 ――お師匠様が知覚する世界には、いったい、どのような彩《いろ》が満ちて見えているのだろう? 分からない、こればかりは計り知れない。


「まあいい、少し踏み込んで戦おうかな」


 お師匠様はそう言った。


 ボ(・)ク(・)の(・)目(・)の(・)前(・)――目と鼻の先でそう言った。


「――――!?」


 少し じゃ ない――ッ!!


 数歩の間合いのみ神速を体現できる歩法はそもそも、お師匠様の挙動を手本とした技術、やらなかったから出来ないというわけではない――!


「フッ――……」


「素晴らしい、冷静の水は淵《ふち》からこぼれず……。少しだけ――キミが理解できてきた」


 その呟きと同時に、静かな声がボクたちを裂《さ》く。



「【属性転換《マジックコンバート》】」



 少しだけ、キミが理解できてきた。なれば。


 スタートライン、もしかしたらボクの現在位置は、そこかもしれない。


 では。


 お師匠様。


 モニカのほうは?



「《意思》⇒《生体限界超常知覚》。――《脳制御機能《プロテクティブインヒビジョン》》⇒《臨界解放制御《リベレーションオブコントロール》》。《脳疲労》⇒《超全能感》」



「――――!?」


「【天使偶像《てんしぐうぞう》の白弓《しらゆみ》】は」


 三射《さんしゃ》が飛《ひ》する間《ま》に、告げる。


「使い手の魔法を取り込み、強力な魔力増幅効果を及ぼします」


 飛来した三射の、光状《こうじょう》の弓矢は、全て――――ボクに被弾した。


「弓にストックされた魔法は使い手の意思によって、光状《こうじょう》の仮想物質として出力される」


 矢が射止めた背から――天使の象形《しょうけい》を模《も》した、輝く光の翼が出現する。


「――ヤバいねェ、本当に分からん」


 さしものお師匠様も、事象の読み取りに難儀しているようだったけれど――解き明かしてみると、それは至極、単純な事情なんです。


 お師匠様。


 白き弓矢は、ボクたちの歩みそのものを込めた武器です。


「つまり、これはボ(・)ク(・)た(・)ち(・)が創り上げた武器《アビスハウル》です、お師匠様」




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