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魔法を喰らう獣 〜“名無し”と魔王のゆりかご〜  作者: 天乃 朔
第1章 囚われの獣

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1−7.主人のいない魔物

 スピネル家は魔物の血脈――先祖に魔物のいる家系と言われている。

 彼らは自身の血筋に誇りがあり、遠い昔、一族の誰かが『先祖は魔神である』と吹聴してから『魔神の血脈』と自称するようになった。本当に魔神の末裔であるかは、もちろん眉唾物である。

 魔力が強いほど重用されるこの国であるが、魔物の血を引く者は『魔物筋』と呼ばれ忌避されることも多く、スピネル家はその能力に反し一伯爵家にすぎないことを常々不満に思っていた。


 そのスピネル本家の三男として、アンバーは誕生した。幼い頃から大変魔力が強く、一族は権力を引き寄せるものと期待した。期待に違わず彼は士官学校を優秀な成績で卒業し、見栄えも良く、誰もが月の騎士―――近衛騎士になるものと疑わなかった。

 しかし、騎士叙任の際、アンバーは王に跪くことができなかった。

 形だけでも王に頭を垂れ、片膝をつき、おざなりでも忠誠の言葉を発することができなかった。


 ――こんな魔力のない者に跪けるものか。


 彼は先祖返りの魔物筋だった。魔物筋のうち、より魔物に近いと言われる『先祖返り』、彼らは強大な魔力を持つが、主人にのみ忠誠を誓うと言われている。先祖返りは諸刃の剣である。主人によりこの国の忠臣とも逆臣ともなりうる。


『主人のいない魔物』、それがアンバーに冠せられた(あざな)だった。


 主人のいない魔物は危険だ。但し、その主人となれるならば非常に魅力的だ。

 多くの野心ある貴族や富豪がアンバーの主人となるべく名告(なのり)を上げた。アンバーを己の『使い魔』にしてしまえば良い。使い魔は主人に従うのだ。忠臣である己を介して間接的に王に忠誠を誓わせれば、国に恩を売り、大きな影響力を得られる。

 しかし、誰も主人とは認められることはなかった。


 ――ふん、俗物が。


 自身が主人と認められなかった者達は、手を変えた。伴侶こそ主人となり得るのではないかと考え、娘を娶らせようとしたのだ。魔物筋と聞いて最初は拒絶していた娘達であるが、アンバーを一目見た途端、多くの娘達が態度を変えた。アンバーは大変見栄えの良い青年だった。貴族の出身、強大な魔力持ち、そして何より見目麗しい。主人、―――この場合妻となれば、自分だけの理想の騎士が手に入るのだ。娘達が沸き立つのも無理が無い。おかげでアンバーの元には見合い話が引っ切り無しに持ち込まれた。しかもアンバーにとって不幸なことに両親も乗り気で、彼は家から逃げるほか無かった。

 しかし、逃げるにしても士官学校の寮は退寮している。騎士ではないので騎士隊の寮にも入寮できない。結局、逃げ込んだのが彼の次兄が所長を務める遺物管理所であり、所長の権限で形ばかりの臨時職員の身分が与えられた。それでも『飼い主』候補は後を絶たない。


 周囲は早く主を決めろと言う。


 主がいない事で難点があるとすれば、自身が持つ最大の魔力を使用する際に制御(コントロール)が効かないことが上げられようか。

 だが、アンバーは、そんなことは些細なことと思っていた。なぜなら、彼が制御可能である少ない魔力量ですでに他者を圧倒していたからだ。どこに主を持つ必要性があるだろう。そして何より、アンバーは主を持つことに甚だ忌避感を持っていた。


 ――あんな風になってたまるか。あんな無様な姿を晒すくらいなら主など必要ない。


 彼がそう思うようになった元凶が今、目の前に到着した。


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