表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

EXTRA EDITION PART Ⅱ

 あおいが峰石と出掛けた翌日の夜、葛城家に大倉るりが訪ねてきた。彼女は旅行バッグをパンパンにするほどの着替えを詰め込んできており、小さな体でそれを重そうに抱えている。


「今日明日お世話になります」


「いらっしゃい。たかだか一泊二日でそんなに要らないでしょ」


 客人を出迎えた葛城は、苦笑いしながら彼女からバッグを取り上げる。


「だって同じ服で出るとか嫌じゃないの」

 

「洗濯機使うんだから一組あれば十分だって」


 性格的に真逆な面の多い二人は、時として言い争いに近いような会話になってしまう事がままあった。


「いいじゃないのもう」


 大倉は膨れっ面を葛城に向ける。妻のあおいとは違い、喜怒哀楽をはっきりと出す彼女に思わず笑ってしまう。


「何で笑うのぉ?」


「いやだってさ」


 と話を続けようとしたのだが、前回会った時も似たような展開でひと月近く仲をこじらせてしまった事を思い出して口を噤む。


「どうしたの?」


「うん。この前の喧嘩もこんな感じで始まったなって」


 そうだね。二人は互いを見つめ合い、葛城は大倉の腰に腕を回した。


「これから気を付けるよ」


「私も、もう喧嘩したくない」


 二人は体を寄せて笑い合っていると、壁越しから子供たちがその光景を楽しそうに覗いていた。


「いらっしゃいるりちゃん。なかなおりできてよかったね」


 ここは長男らしく拓海が大倉を出迎え、碧と楓も嬉しそうに彼女にまとわり付いていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 大倉は、あおいが前夫との生活にピリオドを打った時期からこっそり葛城と連絡を取り合うようになっていた。当時はこの二人のキューピット役を買って出るつもりで、元妻との離婚をけしかけようと目論んでいた。


 そんな矢先、元妻中里((なかざと)詩織が何故か彼女にコンタクトを取ってきた。詩織はかつての友人網で葛城の不倫情報を入手しており、元夫のケータイを覗き見して大倉を不倫相手と誤解したようだった。


 二人は歳も学校も違うのだが、女子大生専用の賃貸アパートで度々顔を合わせていた。当時の印象では友人も多く人気者だった詩織だが、嫉妬に狂った彼女は夫を返せとわめき出した。


 不倫相手は私じゃない。そう言い返すつもりだったが、子供が出来れば戻ってきてくれると信じて不妊治療してきた、妊娠したと言った(・・・)時は喜んでくれたのにと涙ながらに語り始めた。


 しかしそれは嘘だった事を知っていた大倉は、華やかで美しかったはずの詩織があざとく見えていた。訂正する事すらも馬鹿らしくなり、葛城は離婚を望んでいる、嘘を吐いたあなたが悪いと言い捨てた。


 その後調停という形で離婚は成立、葛城は勤めていた病院を辞めて故郷に戻り地元の病院に再就職する。皮肉にも、詩織はそれから半年もしないうちに別の男性とデキ婚したという風の便りが届いた。


 その後葛城とあおいはめでたく結婚し、一年後に楓を出産した中で勤めていた幼稚園が閉園した。職を失った彼女が再就職に奔走していた中、故郷の友人が勤務している幼稚園で教諭の空きがあると葛城から連絡があった。


 彼の助けを受ける形で再就職を果たした大倉は、帰郷して友人夫婦との交流を増やすことになる。しかし思わぬ弊害として彼女自身が葛城に惹かれ始め、変に素直な性格の為その思いを抑えるのは困難となっていった。


 気持ちを伝えても最初のうちは妻であるあおいを愛しているからと取り合わなかった葛城だったが、峰石との不倫関係が明るみに出たことがきっかけで二人の関係にも変化が現れ始める。互いが胸に秘めている心の膿を共有するようになり、気付けば一線を超える間柄になっていた。


 二人はその事を家族にも話し、子供たちも公認で交際するようになるが葛城の仕事柄二人でデートというのはなかなか難しかった。そこであおいと峰石とのカップルが共に過ごすと決めた日に、大倉が葛城家を訪ねるというスタイルを取り少しずつ仲を深めて今に至る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「るりちゃん?」


 回想モードに浸ってぼんやりとしている大倉に葛城が声を掛けた。


「えっ? あぁ、何?」


「仕事疲れ? 早めに休む?」


 彼は愛人の体調を気遣い顔を覗き込む。


「そうじゃないの、昔の事を思い出してただけ」


 大倉はそう言って笑顔を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ