第十三話 【二階層】序
本日より第二章 【二階層】となります。
よろしくお願いします。
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【速報】式神使いが配信デビュー 2
821:名無しの探索者
結局、式神使いどうなった?
822:名無しの探索者
>>821
別スレ情報。あの館に辿り着いたシルバーパーティー"アンブレラ"、連絡途絶えたらしいぞ。
823:名無しの探索者
>>822
は? まじそれ?
ガチで消えんの? どこ行くの?
824:名無しの探索者
知るか。前から探索者がまだ突然消えることあったけど、これが原因?
825:名無しの探索者
>>822
ギルドが近づくなって注意喚起出してるけど、行く奴は止めても行くだろ。探索者にいくら言ったところで逆効果。
826:名無しの探索者
吸い込まれる直前に雷華様や風華様が光に戻るのが見えたが、マジであいつ使役してたんだな。
827:名無しの探索者
>>826
注目するのそこで草
828:名無しの探索者
でもさ、扉がダンジョントラップだとして、見つけた式神使いって有能だったのでは……?
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ガチャガチャと俺の配信用カメラをいじり回していた白夜が、「貰っていい?」と尋ねてきた。
「いいよ」と俺が答えると、「ふんっ」と掛け声とともに、白夜はカメラを宙へ放る。
投げられたカメラは空中で紙のように薄くなり、そのまま霞むように消えていった。
そして今──俺は二階層へ潜る前に大量の食料(ほぼ三色団子)を手渡され、鳥居の前に立たされている。
「じゃ、配信は任せて!」
元気よく手を振る白夜の横で、白雪が静かに微笑んでいる。俺と視線が絡むと、白雪は小さく頷いてくれた。
背後の鳥居が淡く光を帯びる。先ほどまで見えていた向こう側が漆黒の闇へと侵されていった。
その途端、二度と味わいたくないと思っていた感覚が襲ってくる。大事な何かまで奪っていってしまいそうな凄まじい引力に身体を掴まれた。
「頑張ってー!」
ぶんぶんと大きく手を振る白夜と、小さく手を振る白雪。
対照的な二人の姿。そのどちらもが応援してくれていることが伝わってきた。冷え切っていた指先がじんわりと熱を取り戻す。
二人の姿が、急激に闇に飲み込まれる。
それが、俺が一階層で目にした最後の光景だった。
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暗闇から吐き出され、トンッと軽い音を立て、つま先から地面に着地する。
──良かった。今度は上手く着地できた。
とりあえず無事に第二階層へと辿り着けたことに安堵し、小さく息を吐き出した。
周囲へと視線を向けると、鳥居の前にひっそりと佇む社が見える。
「あれか……」
社の前には、白夜が持っていたものとよく似た巻物が、御供物のようにそっと置かれている。なんだか不思議な存在感を放つそれに、目を奪われてしまった。
そのとき、手に嵌めたブレスレットがじわりと熱を帯び、その存在を主張してきた。
「ん?」
視線を向けると、青と緑の二つの珠が点滅している。風華と雷華が宿る珠。
怒っているかのように明滅を繰り返し、熱を帯びた二つの珠は、次第にその輝きを強めていく。まるで、「早く出せ」と訴えているかのようだった。
「やばっ……」
慌てて二人の名前を呼ぶ。
「風華、雷華」
名前を呼んだ途端、待ってましたとばかりに二つの光が飛び出してくる。
「遅いっ! なにしてんの!?」
「蒼真、危ないところだったよ? なに呑気に団子食べているの?」
出てきた途端、今まで見たことがないくらいに眉を吊り上げた二人の視線が俺に突き刺さった。
雷華の周りにはビリビリと電撃がほと走り、風華の黒髪が風に渦巻かれている。
「いや、でも」
「でもじゃない! 見てるこっちの身にもなって!」
「ごめん……」
雷華が叫ぶと、落雷が地面を震わせた。
二人を危険に晒したくなかったと言うのは俺の言い分だ。それ以上の弁明は出来ず、俺は言葉を飲み込んだ。
責める視線に耐え切れずに視線を落とす。諦めるような大きなため息に、思わず肩が揺れた。
「雷華、怒ったところで無駄。どうせこの人は、私たちを危険な目に合わせたくないとか、そんな馬鹿みたいなこと思ってるのよ」
冷ややかな風華の声に身体を縮こませた。小柄な二人の存在がとてつもなく大きく見える。
「もういい。次はないから」
「はい」
「危険に陥るたびに戻されるなら、私たちが居る意味はないのよ?」
「分かってる」
風華の念押しに恐る恐る視線を上げると、冷ややかな視線とぶつかり──思わず息を呑んだ。
その瞳の奥の光はゆらゆらと揺れていて、今にも消えてしまいそうで。その唇が小さく震えていて、怒られるよりも心に堪えた。
「ごめん、二度としない」
風華の瞳を見つめ返してゆっくりと口を開くと、揺らめいていた瞳に輝きが戻った。
唇を噛み締めていた風華の口元がわずかに緩む。小さく吐き出された息で、長い黒髪がふっと揺れた。
「はぁ……だって、雷華。いい?」
風華の言葉に雷華へと視線を移す。そこには、大きな瞳に膜が張り、今にもこぼれ落ちそうな雫を讃えている雷華がいて、俺はギョッと目を見開いた。
先ほどまでの怒りはどこにいってしまったのか、無言で見つめてくる沈黙に、責め立てられる方がまだマシだと思ってしまう。
「……もうしません」
口からこぼれ出た言葉は、思った以上に情けなく静寂に溶けた。
黙って頭を下げると、雷華が顔をゴシゴシと拭う布の音だけが聞こえた。
「約束だからねっ!」
普段と変わらない口調で吐き出された言葉が痛々しくて、俺は胸を貫かれた。
「私たちは、貴方の式神なの。契約結んだんだから、取り違えないでね」
そう言った雷華は、俺にくるりと背中を向けた。
「ほら、待ってるよ」
雷華の白く細い腕がゆっくりと持ち上がる。その指先には、ここへ来たときに目にした小さな社が、静かに佇んでいた。
「第一試験……だね?」
雷華の丈が短い巫女服の裾が、ふわりと揺れる。
ゆっくりと振り返った雷華は、今まで見たことがないほど穏やかな笑みを浮かべていた。




