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EP 4

「超物流網の開通と、究極のDIYサウナ。〜魔将軍は整いたい〜」

「グレン局長! アスファルトの温度管理、完璧だ! 続いて私が地盤を冷却して完全固定する!」

「おおっ、スアイ部長! 助かる! では私は次の区間の測量と見積書作成に移るぞ!」

 ポポロ・ハイウェイ建設現場では、二人の元・魔王軍四天王が完璧な連携を見せていた。

 イグニスが鉄輪で踏み固め、グレンが大剣で熱して定着させた黒々としたアスファルト。その上を、タローマンの防寒カーゴパンツを完璧に着こなしたスアイが滑るように移動し、「氷結魔法」で急速冷却してガチガチに固めていく。

 圧倒的な『熱』と『冷気』の相乗効果。

 そして夕刻。

「……ボス! ルナミス帝国との国境地点に、道が繋がりました! ポポロ・ハイウェイ、全線開通です!」

 ドローン測量を終えたキュララが、空から歓声を上げた。

「「「うおおおおおっ!!」」」

 ダイヤ、イグニス、そして農家のおっちゃんたちがヘルメットを空に放り投げて歓喜する。

「数千人が数年かける事業を、たった二日で……カナタ様、我々はついに物流の『大動脈』を手に入れましたね」

 リバロンが、感無量の面持ちでアスファルトを踏みしめる。

「ああ。これで俺たちの商品は、三国に爆速で届く。……だが、その前に」

 俺は、泥と汗にまみれた「社員」たちを見渡した。

「ブラック企業じゃあるまいし、働きっぱなしは良くない。今日は『福利厚生』として、最高の慰労会を開くぞ」

 俺はスマホを取り出し、残枠を使ってポチった。

 検索:『超大型・耐熱グランピングテント』200,000円。

 検索:『サウナストーン&ヒノキのベンチセット』50,000円。

【お支払い合計:250,000円】

【利用可能額(残枠):5,470,000円 → 5,220,000円】

 ポンッ、と大量の資材が届く。

「スアイ、あんたのその『絶対に切れない鎖』で、この巨大テントの骨組みを固定してくれ。ダイヤは岩を砕いてかまどを作れ。……今日は全員で『サウナ』に入って、疲れをぶっ飛ばす!」

「さ、サウナ、だと……?」

 スアイの碧眼が、キラリと妖しく光った。

「狭い空間で限界まで体を温め、その後に冷水で毛穴を引き締めるという……あの伝説の温浴法か!」

「そうだ。あんたとグレンの能力があれば、究極のサウナが作れる」

 その言葉を聞いた瞬間、魔王軍幹部たちの目の色が変わった。

 スアイが「無間氷鎖」をクレーンのように操り、一瞬で巨大なテントを設営する。

 テントの中央には、ダイヤが切り出した岩のかまどとサウナストーンが積まれ、イグニスとグレンが火炎ブレスと獄炎の大剣でストーンをチンチンに熱し始めた。

「よし、サウナ室の温度は完璧な95度だ! ……スアイ部長! 水風呂の用意は!」

「任せろ! 『絶対零度・氷結精製』!!」

 テントの外では、スアイが地面に巨大な穴を掘り、魔法で湧き水を生み出して一瞬で『水温12度の極上・氷結水風呂』を完成させていた。

「さあ、お前ら! 汗を流すぞ!」

          ◇

「シュゥゥゥゥゥッ……!」

 サウナテントの中に、熱せられた石に水(と陽薬草のアロマ)がかけられ、猛烈な熱気ロウリュが充満する。

「……くっ、この熱波! 魔王様が放つ『ブラックホール』の重圧に似ているが……不思議と不快ではない!」

 首にタオルの巻いたグレンが、玉の汗を流しながら耐えている。

「ふはははっ! 我輩の竜人の鱗の隙間から、老廃物が抜けていくのが分かるぜぇ!」

 イグニスも目を閉じ、熱気を楽しんでいた。

「限界まで温まったな……よし、水風呂だ!」

 俺の合図で、全員がサウナテントから飛び出し、スアイ特製の氷結水風呂へとダイブした。

「ひゃあああっ! 冷たいっ! けど、気持ちいいいい!」

 ダイヤが叫び、グレンとイグニスも「おおおおっ!」と声を上げる。

 そして、水風呂から上がり、ポポロ村の涼しい夜風を浴びながら、タローマン製の折りたたみリクライニングチェアに深く腰を掛ける。

 全身の血流が巡り、脳内にエンドルフィンがドバドバと分泌されていく。いわゆるサウナトランス状態だ。

「……ふわぁ……。世界が、世界が回っている……」

「……これが、整う、という感覚か……。予算不足の胃の痛みも、ルチアナのパワハラも、全てが遠くへ消えていく……」

 グレンとスアイ。

 かつて世界を滅ぼしかけた二人の魔将軍が、星空を見上げながら真顔で、完全に「整って」いた。

 そして、その一部始終は――上空のドローンカメラを通じて、『ゴッドチューブ』で全世界の神々へ生配信されていた。

『キュララちゃんねる・特別編! 【DIY開拓】元・魔王軍四天王と最強サウナ作って整ってみたwww』

 画面の端には、凄まじい勢いでコメントとスパチャ(神々からの投げ銭)の滝が流れている。

【うおおおお! 魔将軍のスキルの使い道、贅沢すぎるwww】

【スアイたんの作業着姿、機能美の極み! 尊い!】

【グレンの社畜の哀愁に共感して泣いた。スパチャ5万G置いとくわ】

【これぞ究極のスローライフ! アナスタシア世界の開拓配信、神番組確定だな!】

          ◇

「……な、なんなのよこれぇぇぇっ!!」

 同じ頃。天界のコタツ部屋で、女神ルチアナは絶叫していた。

 彼女の管理する『魔王軍・世界征服チャンネル』の視聴者はゼロ。

 対して、カナタたちの『ポポロ村・開拓DIYチャンネル』は、ゴッドチューブの「全宇宙・総合ランキング1位」に君臨していた。

「魔王軍の最高幹部が、人間の村で土木工事してサウナ入ってるだけの動画が、なんでこんなにバズってんのよぉ! 勇者を倒すとか、世界を滅ぼすとか、そういうのどうなったの!?」

 ルチアナが頭を掻きむしっていると、背後にスッと影が落ちた。

 振り返ると、完璧な笑顔を浮かべた天使長・ヴァルキュリアが立っていた。

「……ルチアナ様? アナスタシア世界の予算配分について、少し『お話』があります。なぜ魔王軍の予算がたった100万円なのか、そして貴女が横領した神界の予算の行方について……」

「ひぃぃぃっ!? ヴァ、ヴァルキュリアちゃん! これは違うの! 月人君のグッズを買ったわけじゃ……!」

「問答無用です」

 ドォォォォンッ!!

 天界に、天使長の強烈な壁ドンの音が響き渡った。

 かくして。

 神々のPV(視聴率)競争をも完全に制圧した俺たちは、完成した超物流ハイウェイを使って、いよいよ三国との『極悪な経済おでん戦争』へと打って出るのだった。

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