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EP 8

「ボロ家改め『超多国籍シェアハウス』の完成。〜伝説の武具はDIYの道具〜」

 三大国から巻き上げた、金貨45万枚(約45億円)。

 ボロ家の地下室は、眩いばかりの黄金と契約書で埋め尽くされていた。

「ひゃははははっ! お金ですぅ! 一生遊んで暮らせるお金ですぅぅ!」

 リリスが金貨の海をバタフライで泳いでいる。

「たしかに莫大な軍資金だ。……だが、俺の『ルチアナ・カード』の残枠が増えたわけじゃないからな」

 俺はスマホの画面を確認した。

【現在の利用残高:856,578円】

【利用可能額(残枠):115,522円】

【次回お支払い日まで:あと8日】

「借金を一括返済してもいいが、それだとカード(仕入れルート)が止まるリスクがある。この金貨45万枚は、あくまで『現地通貨』として活用する」

 俺は集まったシェアハウスの住人(予定)たちを見渡した。

「さあ、お前ら! 稼いだ金で、この隙間風だらけのボロオフィスを、異世界最高の『超多国籍シェアハウス』に大改築するぞ!」

「「「おーっ!!」」」

 美味い飯と安全な寝床を約束されたポンコツ強者たちが、歓声を上げた。

          ◇

 まずは基礎工事だ。

「ルナ、お前の植物魔法で『骨組み』を作れ」

「はーい! いけっ、世界樹の苗木ちゃんたち〜!」

 ルナが手のひらを地面に当てると、ズゴゴゴゴッ! と凄まじい地響きと共に、鋼鉄よりも硬い『世界樹の枝』が絡み合いながら急成長し、あっという間に巨大な3階建ての豪邸の骨組み(フレーム)が完成した。

「よし、次は木材のカットだ。ダイヤ、いけるか?」

「任せなさい! 【ウェポンズマスター】の力、見せてあげるわ! ――天魔竜聖剣、第壱形態『超高速ノコギリ』!!」

 ダイヤが国宝級の聖剣を振り回すと、買い付けてきた大量の高級木材が、ミリ単位の狂いもなく一瞬で完璧な建材へとカットされていく。

 神殺しの聖剣の、歴史上最も贅沢(無駄)な使い方である。

「イグニス! 木材の乾燥と、基礎のセメント焼きだ!」

「オラァァァァッ! 弱火のブレスだぜぇぇぇ!」

 竜人のイグニスが、絶妙な温度調整の火炎ブレスで建材を瞬間乾燥させ、強固な基礎を焼き固めていく。

「あんたたち、ペース上げなさいよー! アタシの歌でバフかけるから! 『愛!アイ!愛!アイ!ラ〜ブラブ!』」

「みんなー! 異世界の超人DIY配信、スパチャよろしくねーっ☆」

 リーザがミカン箱の上で歌い、キュララが上空からドローンで建築風景を生配信する。

 圧倒的な身体能力と魔法、そして歌バフによる底上げ。

 現代日本のゼネコンも裸足で逃げ出すほどの『超絶ブラック&ハイパー効率DIY』により、巨大なシェアハウスはわずか半日で外装まで完成してしまった。

          ◇

「……信じられない。城を建てるほどの工程が、たった半日で……」

 様子を見に来た村長キャルルと執事リバロンが、完成した建物を見上げてポカンと口を開けていた。

「外装は現地素材だが、内装コアには俺の『現代知識』を組み込んである」

 俺は、残枠11万円をギリギリまで使って取り寄せた通販グッズの数々を披露した。

 検索:『大容量・太陽熱ソーラー温水器』45,000円。

 検索:『節水シャワーヘッド 5個セット』15,000円。

 検索:『ふかふかマットレス&布団セット 6人分』40,000円。

【お支払い合計:100,000円】

【利用可能額(残枠):115,522円 → 15,522円】

「特にこだわったのが、この1階に作った『大浴場(スーパー銭湯風)』だ」

 俺が脱衣所の扉を開けると、そこにはルナの魔法で作られたヒノキ風の巨大な湯船に、並々と熱いお湯が張られていた。

「ソーラー温水器とイグニスの火炎を組み合わせた、24時間いつでも入れる魔導ハイブリッドボイラーだ。さらに、通販で買った『森の香りの入浴剤』を入れてある」

「お、おおおおお風呂ぉぉぉっ!?」

 ダイヤが悲鳴のような歓声を上げた。

「テント生活で、ずっと水浴びしかできなかったのよ……っ! 湯船! あったかい湯船ぇぇぇ!」

「ひゃっほう! アタシは人魚姫! 水場はアタシの縄張りよ!」

 リーザがジャージを脱ぎ捨てて(自主規制)、一直線に湯船にダイブする。

「ああっ、リーザずるい! 私も入りますぅぅ!」

「配信の目玉ですね! 湯けむりポロリはあるのか!?(※ありません)」

 ヒロインたちが、次々と大浴場へ吸い込まれていく。

 数分後、脱衣所の外まで「極楽ぅ〜……」「あったかいですぅ……」「お肌がスベスベになるわね……」という、とろけたような声が響き渡ってきた。

「……見事です、カナタ様。衣食住の『住』を極めることで、彼女たちの忠誠心モチベーションはもはや盤石。一生このシェアハウスから抜け出せないでしょう」

 リバロンが、完璧な経営戦略だと感心して頷いている。

「ああ。福利厚生は大事だからな。……まぁ、少し騒がしすぎるのが難点だが」

 俺は、夜風に吹かれながら新築のシェアハウスを見上げた。

 かつての孤独な最強チート時代にはなかった、騒々しくて、理不尽で、少しだけ温かい日常。

 だが、この平穏なスローライフが長続きしないことは、この世界(なろう系)の絶対法則だった。

「……ねえ、カナタさん。今夜は『満月』だね」

 隣に立っていた村長キャルルが、ポツリと呟いた。

 彼女のウサギの耳が、ピクピクと不自然に脈打っている。

「キャルル? どうした、顔が赤いぞ」

「ふふっ……あははっ。力が、力が溢れてくるよぉ……! カナタさん、私と……【本気の殺し合い(プロレス)】、しよっかぁ!!」

 ボキボキボキッ!!

 キャルルの華奢な筋肉が異常に膨張し、その瞳が『狂気の真紅』に染め上がった。

「なっ……! リバロン、村長はどうした!?」

「申し訳ありません、カナタ様。お伝えし忘れておりました。……我が村長(月兎族)は、満月の夜になると『戦闘狂バーサーカー』に変貌する悪癖があるのです!」

「そういう大事なことは、物件契約(シェアハウス建設)の前に言えぇぇぇっ!!」

 静かな夜のポポロ村に、村長の凶悪な笑い声と、俺の絶叫が響き渡った。

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