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EP 2

「ゴミ山に住む天才少女を、スパチャで『大人買い』してみた」

 王都の最下層、スラム街のさらに奥。

 産業廃棄物が山のように積まれた『鉄屑スクラップ地区』。

 鼻を突くオイルと錆の匂いの中、俺とリズは一軒のボロ小屋の前に立っていた。

「ボス、ここですか? なんか……今にも崩れそうですけど」

「ああ。ここに、聖光教団が恐れて追放した『異端の科学者』がいる」

 俺はドアをノックしようとした。

 その瞬間。

 ギュイイイン!!

 ドアの上部に設置された監視カメラ(魔導式)が起動し、銃口がこちらを向く。

『――警告。教会の犬は立ち去れ。3秒後に射撃する』

 スピーカーから、不機嫌そうな少女の声。

 俺が口を開く間もなく、カウントダウンが始まる。

『3、2、1……死ね』

 ドガガガガッ!

 容赦ない連射。だが、弾丸が俺に届くことはない。

「危ないですっ!」

 リズが前に飛び出し、『月狼のガントレット』で弾丸を全て叩き落とす。

 キンキンキン! と火花が散る。

「……うそ。自動迎撃タレット(毎分600発)を素手で……?」

 ドアの向こうで絶句する声。

 俺は一歩前に出た。

「犬じゃない。俺は客だ。……商談に来た」

 俺はインベントリから、昨日リズが壊した『聖剣の破片オリハルコン』を取り出し、カメラに見せつけた。

「手土産だ。開けないなら、これを置いて帰るぞ」

 一瞬の沈黙。

 ガチャリ、と何重ものロックが外れる音がして、ドアが少しだけ開いた。

          ◇

 中は薄暗く、足の踏み場もないほど機械部品が散乱していた。

 部屋の奥、数台のモニターに囲まれた椅子に、その少女は座っていた。

 褐色の肌に、ボサボサの銀髪。

 ドロドロの作業着を着た、ダークエルフの少女だ。

 彼女は分厚いゴーグルをずらし、俺たちを睨みつけた。

「……ボクはジゼル。何の用だ、人間」

 警戒心丸出しだ。

 俺は周囲を見渡す。

 ガラクタに見えるが、俺の『鑑定眼』には輝いて見えた。

 魔力で動く小型モーター。

 自動追尾式のドローン試作機。

 この世界の「魔法文明」を数百年進めるほどのオーバーテクノロジーが、無造作に転がっている。

「すごいな。これ、お前が作ったのか?」

「……ふん。教会連中は『悪魔の機械』って呼んで捨てたゴミだ。ボクの研究は、誰にも理解されな……」

「いくらだ?」

 俺はジゼルの言葉を遮った。

「は?」

「研究費だ。足りないんだろ?」

 俺は足元に転がっていた、失敗作らしき『魔導回路の基盤』を拾い上げた。

「この回路、美しいな。魔力伝導率を上げるためにミスリルを配線に使おうとした痕跡がある。……だが、金がなくて銅線で代用したせいでショートした。違うか?」

 ジゼルの目が大きく見開かれる。

「な、なんで……一目見ただけで……」

「分かるさ。俺も『仕組み』を見るのが好きだからな」

 俺はニヤリと笑い、インベントリを開いた。

 ザラザラザラ……ッ!

 金貨の山が、雪崩のように床へ溢れ出す。

「――っ!?」

 ジゼルが椅子から転げ落ちそうになる。

 スラム街の住人が一生かかっても拝めない量だ。

「ここにあるガラクタ、全部言い値で買う。……それと」

 俺はジゼルの目の前に顔を近づけた。

「お前の『頭脳(その才能)』も買う。俺の専属メカニックになれ」

「な、何を……ボクは異端者だぞ!? こんな研究をしてるから、教会に村を焼かれて……」

「奇遇だな。俺も今、その教会から『1億エールの賞金首』にされてるところだ」

 俺は仮面を指差した。

「俺はアノニマス。教会が隠している『魔法の嘘』を暴くために、お前の『科学』が必要なんだ」

 ジゼルは呆然と俺を見て、それから震える手で金貨の山を見た。

 そして――口元を歪め、ニタリと笑った。

「……ククッ、最高だね。ボクを異端と呼んだ連中を、ボクの機械でぶっ潰せるのか」

 彼女は立ち上がり、汚れた手を差し出した。

「契約成立だ、ボス。……ボクの技術は高いよ?」

「安心しろ。財布スパチャは無限にある」

 俺はその手を強く握り返した。

【新たな仲間が加わりました:ジゼル(天才メカニック)】

【アジトの「開発ラボ」がアンロックされました】

          ◇

 数時間後。

 俺たちはアジト『シャドウ・ハウス』に戻っていた。

「うわぁ……何この屋敷! 無駄に広い! エネルギー効率悪そう!」

 ジゼルは文句を言いながらも、目は輝いている。

 俺は彼女を地下の空き部屋に案内した。

「ここをお前のラボにする。好きな機材を揃えろ」

「本当!? じゃあ、まずは高出力の魔力炉と、精密加工用のレーザー旋盤と……」

 ジゼルはブツブツと呟きながら、端末(ショップ画面)を操作し始めた。

 その指の動きは、まさにピアニストのようだ。

 

「あ、そうだボス」

 ジゼルが振り返る。

「教会の連中、最近調子に乗ってるよね。『聖女の奇跡』とか言って」

「ああ。病気を治したり、空を飛んだりしてるらしいな」

「あれ、トリックだよ」

 ジゼルは冷ややかに言い放った。

「聖女が使ってる杖、ボクが昔設計した『魔力増幅器』の盗作だもん。……出力のリミッター外してあるから、派手だけど使うたびに周囲の生命力を吸い取る欠陥品」

「……なるほど。信者から金を巻き上げるだけでなく、命まで吸ってるわけか」

 俺の中で、最後のピースがハマった。

 これで勝てる。

「ジゼル、頼みがある。……次の聖女の配信ライブまでに、これを作れるか?」

 俺はある設計図(こちらの世界の知識)を彼女に見せた。

 ジゼルはそれを見て、興奮で頬を染めた。

「……えげつないね、ボス。これを使えば、聖女の魔法なんて『手品』以下になるよ」

「作れるか?」

「愚問だね。――3日あればお釣りが来るよ」

 俺は満足げに頷いた。

 これで役者は揃った。

 『聖光教団』よ、震えて待て。

 お前らの言う「神の奇跡」が、ただの「科学技術」に敗北する瞬間を、全世界に見せつけてやる。

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