十二話:プランクトン君と栄養ある食事(2)
プランクトン君のためにワカメ似の細胞を持って行った僕はプランクトン君の口に突っ込んで寝かけてしまった。しかし違和感を感じ何とか回収することができた。その後はどのようにプランクトン君に食べてもらえるか、頭を悩ませる僕だった。
「布団はこうすることで…………」「ペンって実は…………」「消え………」「道路工事の…………」「実は色って…………」
「アー!!」
あれからずっと記憶を掘り返しているが、何も役立つ情報が出てきていない。
特に生物の授業で学んだ事が欲しいけど割と覚えていない自分にむしろ驚いてしまうぐらいだ。
(これ以上考えても埒が明かない)
思い切って洞窟の外に出てみることにした。
洞窟の外は既に夜が更け、一寸先は闇の状態になっていた。
「日本が誕生したの…………」「ここがこうなってガチャコンと…………」「こんなことも………」「つまりここが過去形になるわけです」「染色体が…………」
「こんなことも分からないんだぁー」
やっぱり厳しい。
というかさっきよりプイさん率が高くなっている気がする。
(一寸先は闇………情景描写には帰っていただきたい)
困り果てて僕は足をブラブラさせている。
(なにか……道が……夜を照らす道が欲しい)
僕はふと目の前の闇を見つめる。手を伸ばしたら手先はもう闇に飲まれてしまっている。
(道なんて………なかったか)
上を見上げると月が淡く白い光を放っている。闇との対比がなかなかかっこいい。
(僕を見つめているのは月だけ)
状況が状況でなければかなり”えもい”というヤツなのではないだろうか。
「はぁー」
(状況が状況ならね)
溜め息をつくと驚く事が起きた。
月がフヨフヨと動き始めたのだ。
「!?」
最初は何が起きたかよく分からなかったが目を凝らしてみると正体が分かった。
それは光る生物だ。触手が無数にあり、そのうちの三本は少しだけ長い。そしてスラッとした体の上部が綺麗に光を放っている。
(月………『偽物の月』か)
偽物の月はフヨフヨと横に縦に酔っ払いのように(まあ未成年だからそう感じているだけだけど)右へ左へ動いたかと思うとピタリと止まり、またフラフラと動いている。
(なんだろう害はないみたいだけど………)
偽物の月は最初は僕の頭上をフヨフヨとしていたものの次第に洞窟の入り口に近づいて行き、そのままスッと洞窟内部に吸い込まれるように入っていった。
「あっ」
害はないものの興味本位でついていくことにした。
偽物の月を追いかけて辿り着いたのはプランクトン君の元だ。
(まさかここまで来れるとは………)
不思議なことに偽物の月は迷わず一直線にプランクトン君の元まで行った。
(本当に不思議………)
プランクトン君の上でまたフヨフヨしている偽物の月を見ているとなんだか少しだけ心が暖かくなっている気がする。
(そういえば僕、何してたっけ)
なんだか大切な事を忘れている気がするが思い出せない。
「まあ…………いいか!」
そう思い僕はプランクトン君の近くに横になった。
(じゃあおやすみなさーい…………)
キラキラ
キラキラ
(…………寝れない)
目を開けると偽物の月が光を増して僕の真上にいた。
「そろそろ帰ってもらっても………」
通じはしないがついつい声をかけてしまう。もちろん反応は無い。
(非暴力で追い出したいけど)
そう思い周囲を見回すとちょうど手の届くところにワカメ似の細胞があった。
(………………投げてみるか)
細胞を手に取り偽物の月に向ける。
(当たらないように……ここ!)
僕は全力で細胞を投げた。
しかしだ。僕が投げた細胞は綺麗に山型を描いて遠くに落ちただけだった。
(……………貧弱かな?)
やれやれと少し遠くにあった細胞を投げようとすると手元が見づらいことに気づいた。
原因を見つけようと上を見上げると偽物の月がいない事に気づいた。
どこへ行ったのかと周囲を見回すと僕が投げた細胞に近づいている偽物の月に気づいた。
「ん?」
発光している光はかなり小さくなっており、なにやらせわしなく触手を動かしている。なにをしているのかとのぞき込もうとするとバッと偽物の月が振り向いた。
「うぁ!?」
僕はおもわず尻もちをついてしまう。
偽物の月は触手部分を大きく広げ目を広げ、さらに今まで見えていなかった目を大きく見開きこちらを向いている。先ほど投げた細胞が一部欠けている事から察するに細胞を食べていたのだろう。
偽物の月も驚いたのかそのまま上昇してまた頭上をフワフワと徘徊し始めた。
「なんなんだ………」
どこぞの映画で見たダイオウイカのような見た目をしていた。けども、触手が無数にある部分は、おそらく口部分は暗く、詳しくは分からなかった。
僕は恨めしい視線で天井付近の偽物の月を見る。偽物の月はお構いなしにフワフワ、フヨフヨと移動したり、止まっていたりを繰り返している。
(ふん!ほんとに何がしたいのか!)
反応は無い。
(まあ、草食生物みたいだし、光ってくれる特性があるなら夜でもなにかしらの行動ができるか…………いやいやいやでも寝れないじゃん!)
「新たな仲間加入か!?」と考えていると急に光が消えた。
「あれ?」
周囲を歩いて探したが、一切姿が見当たらない。と、足元に何かが落ちている事に気づいた。
「これは………」
枝かと思い拾い上げてみると白色でふにゃっとした細い謎の物だった。
「これ、どこかで見た事あるような……………」
どこか………つい最近見たと色々思い出していると今度は足元に同じ物が飛んできた。
「………」
飛んできた方向はプランクトン君の寝ている方向だ。
「……………そういえばこれゲソみたい」
何を忘れていたか、それはよくわからないけど、根本的な問題は解決できたらしい。
「………………肉食かぁ」




