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90 採掘

 いざ採掘へ、と私がやっているのは作業するジギーさんを眺めているだけ。

 たまに説明をくれるので、それをうんうん聞いているだけだ。


 今居る大きな岩の中腹の、段差になっている壁の部分。お昼前にジギーさんが設置していたのは、どうやら今回の目的である結界石の位置を特定する為の魔道具。


 四角く枠を組むように、いくつも壁に刺された手の平サイズの器具先端には、色んな色の魔石が付いていて、この魔石の組み合わせで、探したい鉱石を特定できるらしく、この魔道具はソナーのような存在らしい。


 そして特定した鉱石の位置は、タブレットのような黒い石板の魔道具でその詳しい位置を知る事ができるので、石板で鉱石の位置が分かったら、今度はソナーが配置された枠の中を魔法で掘り進んで、石板で位置を探りながら採掘するのが今回の方法になる。と説明を頂いた。


 本来は今回のような魔道具を使わなくても魔国で鉱石は沢山採れるし、魔素が濃いから数か月で新たな鉱石が勝手に生まれる。

 掘ってると目的の物でなくとも何かしらは出てくるので、各種鉱石は急な事がない限り、魔物の領域以外の採掘場で到って普通に採掘されている。


「今回の為に急いで作ったせいで、この魔道具結構魔石消費するんだよねー。位置の特定なんて普段しないし」

「へぇ。凄いですね。どんな感じで位置が分かるんですか?」

「見てみる?」


 そう言って渡された石板の使い方を聞きながら、言われた通りに魔力を流してみると、確かに自分の足元や地中の、色んな場所にコレ、と思う位置が何となく分かる。

 その分かる範囲は半径5キロ圏内くらいだろうか。結構広くて驚いた。


 しかしこれ、分かると言うか正しくは自分の魔力と鉱石が繋がっている感じがして、これが結界石か、と思った瞬間声が出た。


「あ」

「? どうしたの?」


 私の零した一言は、採掘の準備をしていた皆の注目を集めてしまう。伺う視線を貰ってはいるけれど、いや、これ、この状況でとても言い辛い………。


「えっと………そのー…、採れたかなぁ、と…」

「ん? 何が?」


 ジギーさんが不思議そうに首を傾げている横で、魔王様が、ああ、と納得して、ツルハシを担いだガルさんとロロさんが「なになに?」と首を傾げている。


「収納したのだな」

「「「え?」」」

「ユリエが鉱石を収納したのだ。故に、採掘の必要はない」

「「「はっ!?」」」


 説明してくれていた魔王様に向いていた視線が、一気に私に向いたので、思わず視線を反らしてしまったが、ガルさんとロロさんは驚きの顔、そしてジギーさんの顔は、理解し難い、と言うより、理解したくない、と言った様相を呈している。

 も、申し訳ない…。


 だ、だって…結界石がないと、魔王様やご両親治す為のファンタジー水採れないから、早く欲しいなって思ったら、採れてしまった訳で…故意ではない訳なので…その……凄い準備してくれたのに、本当に申し訳ない……!


「えっと…だ、出します?」

「………。……や、いいわ。城に戻ったら見る事になるし」


 疲れたように両手で顔を覆ったジギーさんが、とても小さな声で「何なのこの2人、オレの努力は?」と泣きそうな声で呟いている。

 2人って事は魔王様も入っている。

 え、男子会、本当に魔王様、何したの?


「あ、でも、位置分かったから採れたので…位置が分からなかったら採れなかった訳で…魔道具は、無駄ではない、かな、と…」

「………そう、そうだね。じゃあもっと採って。他のも採って」


 そう言って、顔を覆っていた手を下ろした目の座ったジギーさんは、凄い勢いで壁に刺してある魔石を組み替え始めた。


 ソナーが組み代わって新しい鉱石が指定されたら、私がその鉱石を[貯金]に収納し、魔王様が私が鉱石を採って空洞になった部分を埋めてくれる。

 そんな最中も、ガルさんとロロさんが私にどうぞ、と耳を近付けるのを魔王様が結界を作って阻止しているが、魔王様はサラッと魔法を同時に使っているので、やはり魔王様は魔法がとても上手い。


 そんなこんなで、結局レイ君が皆を運ぶ為に帰って来た頃には、沢山、本当に沢山の鉱石を採った。

 結界石の量は十分で、むしろかなりおつりが来る量が揃ったらしいので、ファンタジー水を集める第一歩は一安心である。


 しかし、こうやって実際鉱石を[貯金]に入れるとよく分かるけれど、全く収納力に限界を感じない。


 多分採った鉱石を表に出したら、今居る岩山は軽く越える程の量があるけれど、別にもう入らないとは思わない。

 どれだけ入るんだろう…。容量が小さいよりはいいけれど、どこに繋がってるのかとても不思議。


 そんな[貯金]の事をまた一つ知れたのは良かったと思う。自分の魔法、まだまだ謎が多い。



 その後、お城に帰るとレイ君は魔物の素材が採れた事をリリーさんに伝えに行って、ガルさんとロロさんは軍部へ帰った。


 帰りしな、またご飯楽しみにしてます!と言われたので、今度はお肉料理でも用意しよう。


 そんな面々と別れ、私と魔王様、そして疲れを見せるジギーさんと共に、私達は倉庫へ移動する。

 今日採った鉱石を渡さなくてはならない。


 そんな鉱石、一気に出すのは絶対に無理。

 けれど、種別でちょっとずつ出すにせよ、鉱石の種類が分からない。


 結界石を含め、ジギーさんに指定されて採った鉱石の種類は6種類。結界石だけは聞いてから採ったので分かるのだけど、他はどれが何て名前なのかは分からない。分かるのは色くらいだ。


「採ったはいいけど、何がどれだか全く分かりません」

「…そうだね。そうだった。簡単に採るから鉱石マイスターみたいに見えてたけど、ユリエさん種類知らないんだったね」


 そう陰のある笑顔を浮かべるジギーさんに、乾いた笑いが漏れる。

 軽々しく扱って申し訳ない。


「量って結局どれくらいある?」

「一種類でこの倉庫二つ三つ埋まるくらいですかね」

「え、多いね」


 倉庫の広さは体育館くらいは軽くある。だがその三倍をおいそれと出す訳にはいかない。

 そんな量に、うーん、と悩んだジギーさんが、あ、と思い付いたように私の隣に居る魔王様を見た。


「魔王様、時空魔法使って貰えます?」

「ん?袋を作るのか?」

「今あるやつじゃそんな入らないんで、ファンタジー水媒介にして新しく作ったら、多少入るかな、と」

「なるほど、やってみよう」


 そう魔王様が頷くと、ジギーさんが自分の収納袋から、脚の付いた大きめの水鉢を取り出して、その中にファンタジー水を注いでいく。

 やはりその水鉢の底には以前見た羊皮紙に描かれていた魔法陣が描いてあって、注がれたファンタジー水にその模様を揺らしている。


「付与って前も見ましたけど、この魔法陣があれば出来るんですか?」

「そうだね。そう出来るように作ってあるからね」

「しかし魔法を流すだけで付与が可能な道具はジギーにしか作れない。研鑽の賜物だ」


 魔王様にそう評価されたジギーさんが、時空魔法を付与する為の袋をいくつか取り出しながら、無言ではあるものの、照れたように口を結んだのがマスク越しにでもよく分かる。


「普通はもっと違う?」

「うむ。通常付与は付与のスキルを持った者が魔法を施行しながら媒介を使用し、その状態で陣を刻まねばならない。それだけでも高度な技術が必要なので、付与が得意な者はとても少ない。故に、このように魔法を流すだけでそれを叶える工程を魔道具に落とし込める事もない。私にもこんな道具は作れない」


 そう私に説明しながら、ジギーさんが袋を漬けた水鉢のファンタジー水に魔法を使っている魔王様に、褒め殺されているジギーさんがとても難しい顔で小さく溜息を吐いた。


「……褒められて、許してしまっている自分に腹が立つ……」


 悔しそうに顔を伏せたジギーさんが、とても小さくそう呟いて、やはり難しい顔のまま顔を上げた。

 何を許して、何が許されたんだろうか…。

 私もやらかしてる訳だけど、男子会…何があったか地味に気にさせる……。


 許してしまっている事に難しい顔のジギーさんと、地味に男子会が気になっている私が見守る中、魔王様が魔法を込めた収納袋は、やはりと言うか、容量がとても大きく増えているらしい。


 今までの収納袋が大きくて50畳程の部屋一つ分くらいだったのが、現在は倉庫1つ分くらいあるらしいので、それは凄い。


「やっぱり地道に交換して行きたい増え幅ですね。せめて城で使ってる収納分くらいは交換したい」

「うむ、確かに。この容量で時間の経過を止める魔法まで組込めた。各自で持つ分には以前の容量で十分だが、貯蔵分に関しては交換したい所だな」

「袋の素材変えたらもっと増やせるかもですね。これは楽しい」


 そうニヤリと笑っているジギーさんに、魔王様も真面目に頷いている。

 収納袋は簡単な茶色い皮の巾着袋。こんな手乗りサイズの袋の中に、入口の範囲も無視して沢山物が入るのだから、やはり収納魔法は凄い物だ。


「そう言えばユリエさん持ってないよね。一つ持っとく?」


 そう言ってジギーさんが差し出した袋に、私は首を横に振る。


「ありがとうございます。でも今は自分の魔法鍛えたいので、とりあえず[貯金]使います」

「でも金属の箱から取り出すの面倒じゃない?」

「うーん…それが、認識出来てる箱の中身なら、もう少しで見えそうなんですよね。見えたらそこから取り出せるんじゃないかと思って」

「うん。反則じゃない?ユリエさんの収納容量、馬鹿みたいに多いよね?」

「後、大きい鉱石出しにくいなって思ってたんですが、分割できそうなんですよね。中で」


 そう私が[貯金]の中で出来そうな事を口にすると、え、と2人の視線を貰う。


「多分、貯金って、前の世界ではお金を溜めるシステムだったんですけど、通帳とかで残高確認できたり、一部を引き出したり、両替して下ろしたり出来たから、その要領がそのまま魔法として使えるんじゃないかと思うんですよ」

「詳しく」


 内容を理解しようと眉を寄せているジギーさんにそう言われ、まだ使いこなせないんですが、と一言挟んで言葉を続ける。


「例えば、鉱石をお皿にして出したいなって思ったら、もっと使いこなせれば出来るんじゃないかな、と」

「うん?錬成かな?」

「確かにちょっと似てますよね。細かく言うと切るだけなら[貯金]だけ、成型するなら [貯金]の中で[製造]も使う感じになります」

「うーん…合成、とかは出来ないんだよね?」


 それは無理。ときっぱり言うと、残念そうなジギーさんが精練は?と聞いて来る。


「ユリエさん、[貯金]の中で[製造]使えるって事は、スキル混ぜられるよね?[整理]辺りも混ぜられない?不純物とったり、純度高めたり出来るなら、最高に有難い感じなんだけど」


 そう言われると、出来るかどうか気になるな。


 自分の中に意識を向けて、頭の中にある[貯金]に集中すると、[貯金]内には【生活魔法様】の魔法がそのまま使えそう。

 素材の状態を上げるなら[洗濯]も必要なのだけど、どうやら水中限定の[洗濯]様まで使える模様。

 体の70%は水分だからだろうか…。


 え、じゃあ[貯金]ってやっぱり体内に納めてるの?


 そう難しい顔で目を開けて、腹を押さえている私に魔王様が不思議そうに首を傾げる。


「どうした?」

「……いえ、収納魔法って、どこに収納されてるのかな、と」

「ふ…時空魔法による収納は空間を切り取るが、ユリエの場合は、強いて言うなら魔力回路だろうな」


 私がまた腹に付いているのでは、とそんな腹を押さえてる事に、また軽く笑った魔王様が説明をくれる。

 何故そこは笑うのか。


「なるほど。使えます。精練して出す事は出来る感じです」

「神対応、よろしくお願いします」


 そう言って、魔王様と作った収納袋を差し出したジギーさんから袋を受け取って、その袋の中に[貯金]内で魔法を掛けた鉱物を入れて行く。


「とりあえず結界石から入れますね」


 魔王様とジギーさんがファンタジー水で作った収納袋は10袋。その内5袋は結界石。残りの5袋に入る分だけ、残りの各種類の鉱石を入れて欲しいらしい。


 入りきらなかった分は私がそのまま持っておいて、魔法の練習にでも使うといいと言われた。

 練習できるの有難い。そこは有難く使わせて貰おうと思う。


 魔法を使っては袋へ移して行く鉱石の種類は、結界石を除いて鉄・白金・ミスリル・オリハルコン・魔鉱石の5種類。

 他にも色々鉱石の種類はあるらしいけど、使い勝手がいいのがこの辺りらしい。


 鉄と白金は分かったけれど、残りの素材は向こうの世界にはない鉱石。

 乳白色で水色っぽく光ってるのがミスリル。

 銀色で透明感のある青に光ってるのがオリハルコン。

 黒くてやや濃い紫に光っているのが魔鉱石。


 一番堅いのはオリハルコン。透明感があるから砕けそうなのに硬いらしい。そんなギャップにファンタジーを感じる。


 各鉱石に特性があるらしいので、硬いから良いって訳ではないらしいのだけど、堅いならお皿とかにしたらいい感じじゃないかな。割れないだろうし。

 でも青が入ったお皿は食欲落ちそうだな…。


 なんて事を話しながら袋に収納していると、オリハルコンで食器を作ろうとしているのは私だけだと呆れられた。

 そんな視線に、魔鉱石で黒いお皿はいいと思うとは言えなかった。


 作業が終わると、その精練された鉱石の入った袋を担いだジギーさんが、では、と一つ息を吐いて私と魔王様に向き直った。


「色々頑張ってくれたんでいいですけども、2人共、人の苦労をサラッと流すの止めようね。魔道具作る人の気持ちになろうね。分かった? 分かったら返事」


 とても真剣な顔で、むしろやや鬼気迫る感じで返事を促され、私と魔王様は「分かりました」と真面目に頷いた。


 水瓶が出来上がったら倉庫に詰めておくから勝手に持って行ってと言葉を残し、ジギーさんは地下の作業場へ帰って行った。

 そんな後ろ姿を見送って、私は隣に立っている魔王様に視線を向ける。



「………魔王様、男子会で何したの?」

「!!? そっ…うっ……それ、は……」


 その問いに、一気に真っ赤に染まった魔王様がよろよろと後ろへ下がって距離を取ったので、やはり聞くのは無理かと苦笑する。


「私も採掘の魔道具でやらかしましたが、あんまり迷惑掛けたら駄目ですよ?」

「……うむ。気を、付ける」


 真っ赤な顔で魔王様はしっかりと頷きはしたけれど、視線は逸らされていたのできっとまたやるんだろうな、男子会。


 それも含め、やはりジギーさんには今度何か差し入れをしておこうと思った。






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