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88 お弁当

 竜以外の魔物の素材を山の上に集めたレイ君と、採掘の魔道具を設置し終えたジギーさん。私の隣で楽しそうにしている魔王様、そしてガルさんとロロさんはまだ復活していない。


 そんな面々に囲まれながら空を見上げると、お日様は高くへ昇って時刻はお昼だと伝えている。


「そろそろご飯にしましょうか」


 皆のお仕事も落ち着いた所で、私は[貯金]から用意しておいた鉄の箱を取り出した。


 外出と言えばお弁当。


 私の収納魔法である[貯金]先生は大活躍。

 金属の箱にさえ入れて置けば中身が水だろうが零れたりしないし、蓋は持ち上げられなければ収納してしまえばいいので、意外と使い勝手はいい感じ。

 容量も今の所限界を感じないので、こう言った時には大変便利。


 そんな[貯金]に入れていた箱から手早く厚手の絨毯を取り出して、手伝ってくれるレイ君と一緒に地面に敷いてその上にバスケットを並べていく。


 このお弁当は朝から厨房で色々と作らせて貰った。

 力作は鳥の照り焼き。


 多分鳥肉だと思うけれど、元のお肉がやたら大きかったので、きっと普通の鳥ではないだろうけど鶏肉で作った照り焼きだ。

 そんな照り焼きで重要なのは醤油。


 少し前から少量ではあるけれど、大豆に似た豆と小麦と塩、そして[製造]の魔法を使って醤油と味噌を仕込んでいた。

 上手く出来るかが分からなかったので、そんなに量は作っていなかったけれど、試しに作っていた醤油と味噌はしっかり完成していて、今回その寝かせていた醤油を使って照り焼きを完成させた。


 因みに、醤油を絞ってくれたのはヨウグさんだ。

 ヨウグさんがギュッてやったら終わった。この世界で何かを絞るのにプレス機は要らない。


 照り焼きなのでみりんがあれば尚良かったのだけど、お米がないから仕方ない。

 お米、そろそろ恋しい、お米…。


 そして本日その照り焼きを試食したヨウグさんは、醤油と大豆にハマったので、今度は味噌にハマって貰おうと思っている。

 この辺りは奥が深い。


 ヨウグさんも大絶賛の照り焼きチキンを、レタスと玉ねぎ、そしてマヨネーズで照り焼きサンドにして、他には赤身肉のカツサンドも作っている。

 カツサンドのソースは醤油があるから出来たのだけど、ウスターソースを作るのが少し大変だった。しかし[料理]と[製造]のコンボはとても頑張ってくれたので、キャベツの千切りとマスタードを入れて、こちらもなかなかの仕上がりだ。


 後はキュウリを挟んだ卵サンドとツナマヨサンド。ツナマヨには玉ねぎのみじん切りを入れるのが私の好み。


 そんなお昼の主役はサンドイッチだけど、他にもリンゴを入れたさっぱり風味のポテトサラダと、お弁当の定番である卵焼き。

 今度はソーセージも作ってみたいが羊腸がない。探せばあるのかも知れないけれど、魔物の腸って使えるんだろうか…。


 そしてこうやってお弁当を作ってみるとよく分かるけれど、お野菜が余り使えないのは本当に大変。

 やはり早く品種改良して野菜を育てたい所である。


 そんなお昼ご飯、ヨウグさんが多めに作って行けと言っていたのでとても沢山作って来た。なので結構な数になったバスケットをせっせと並べている私の背後からは、既に乗り出すように二つの影が覗いている。


「姐さん!まだ!?まだ駄目?!」

「姐御、早く食べたい、我慢つらい」


 お昼ご飯の入った箱を開けた瞬間から、見事に復活した獣人さん2人は、涎を垂らさんばかりの切ない表情バスケットをガン見している。

 やっぱり匂いに敏感なんだな。

 食べたいと思う匂いで良かったし、そして量を作って正解だったかも知れない。


「ガル!そんなに尻尾振ってたら砂が舞うでしょう!?ちょっと抑えて下さい!」

「無理です!勝手に動くんで!」

「切る?」

「バカか!やめろ!バカ猫!」


 準備を手伝ってくれているレイ君に注意されたけれど、千切れんばかりに振られている尻尾を抑えるのは無理だと言ったガルさんに、スラっと細身の剣を抜いたロロさんから一瞬でガルさんが遠くに飛んで離れる。

 離れたそこで、もう振らないから!と尻尾を抱えてバスケットを恋しそうに見ている様子は、待てを食らったワンコのようだが、2人とも元気が戻ってとりあえず良かった。

 ご飯の力は偉大である。


 バスケットを並べ終えて、今度は絨毯に乗りかかるように取り皿や食器を並べていると、今日のお昼は私が作った事を知っている魔王様が、私の横へ嬉しそうに座ってから、蓋を開けたバスケットの中をキラキラした目で見渡している。

 そして、よっこいしょ、と懐かしい掛け声を口にしながらジギーさんも座り、お皿を配るのを手伝ってくれていたレイ君も座ると、ロロさんが照り焼きサンドの前に素早く座って、ガルさんが尻尾をお尻で押さえながらその隣に座った。


 そんな皆におしぼりを渡してお茶を注いでいる間に、じゃあ食べましょうかと口を開くと風が吹いた。


 吹いた風は多分手を伸ばした風圧。その風に髪が揺れ終わった時には、照り焼きサンドが一気に減っていた。

 速いな…。


 各自両手に照り焼きサンドを確保して、一口食べるとそれぞれが目を見開いて私を見る。

 そして再びサンドイッチに視線を戻して凄い勢いで食べ始めるので、何だか見ているだけで満足しそう。

 作ったご飯を喜んで貰えるのはとても嬉しい。


「ユリエ!これは何だ!?とても美味い!」

「お口に合って良かったです。それは照り焼きですね。新しく作った醤油のソースとマヨネーズを使ってます。マヨネーズは前からありましたよ?サンドイッチによく塗られてましたし」


 なるほど、とよく分かってないだろうけど頷いた魔王様は、一つを食べ終わると両手に持たないといけないように再び照り焼きサンドを確保する。

 きっともう照り焼きサンドが半分を切っているからだろう。

 ガルさんとロロさんが食べるのが早い。


「そう言えば、ガルさんもロロさんも玉ねぎって大丈夫なんですよね?」

「だいひょうぶへふ!」

「からだふぁにんへんとふぉなひ」


 大丈夫です、身体は人間と同じ、だと思う言葉は返してくれるけれど、減っていくサンドイッチから目を離さない2人に、ゆっくり食べているジギーさんが呆れたように溜息を吐いて、レイ君はそんな2人に負けじとお肉系を確保している。


 そんな姿を笑いながら、お茶を配ろうと取り出したジャスミンティー味のお茶のガラスポットが、冷たく作ったそのままだったので、もしかして[貯金]には時間停止まで付いてるんじゃないかと感動しながら、お茶を配って私はとりあえずツナマヨを食べる。


 うん、やはりみじん切りにした玉ねぎのシャキシャキ感とさっぱり感が、ツナマヨの油分の中でいいアクセントになっていて、旨味とさっぱり感が丁度いい。

 玉ねぎ、とてもいい仕事をしている。好き。


 そして少量でもファンタジー水を使っているせいか、魔法の効果かその両方か、元の世界で食べた物とは一線を画している驚きの美味しさ。

 もう魔法なしでは生きられないな…。


「ユリエ、それは?」

「これはツナマヨです。オイルで煮込んだ魚のほぐし身を、マヨネーズと玉ねぎで和えた物ですね」

「魚か…だがそれも食べてみたい」

「沢山ありますよ」


 私がそう笑うと、少し照れた魔王様が頷いて、私の逆横にいたロロさんがちょっとだけ難しい顔をした。


「猫、魚、嫌い」

「そうなの?」

「でも、姐御が作ったなら美味しいかもしれない…迷う」

「無理しなくても他にもあるよ?カツサンドも美味しいと思うし」

「もう食べた。奴も危ない」


 何が危ないの?と思っていると、ロロさんの奥にいるガルさんも大きく頷いている。


「分かる。美味すぎて普通の飯が食えなくなりそう」

「うん、それ。こんな美味しいご飯、それも魔物の領域で…でも、猫、覚えてしまった…この味も、この美味しさも……もう普通の猫には戻れない」


 そう言いながら、両手にはしっかりとサンドイッチを握って、片手の卵サンドを一口で食べたロロさんは、手が空くとツナマヨに手を伸ばした。


 そしてじっとそのツナマヨサンドを見てから一口食べて顔を顰める。


「む、無理しなくていいよ?」

「お……美味しい…魚の癖に…っ!」


 泣きそうに顔を歪めたロロさんは、手に残るツナマヨサンドを口に放り込む。

 美味しいなら良かったけども、そんな悔しそうに食べなくても…。


 そんなロロさんを見ていたお城組は、余裕があるのか食べるペースを少し落としてガルさんとロロさんを笑っている。


「レイはいつでも食べられるので幸せです!」

「オレも」

「うむ。このように美味いと食い過ぎるが」


 確かにお城組はいつでも食べられる。

 プリシラさんが魔王様はもっと私の作った物を食べたりして、私の魔法を体に馴染ませた方がいいと言っていたので、ここ最近は料理を作りに厨房へ出向く事も多くなった。

 なので、一緒に料理するヨウグさんはどんどん技術を習得するし、腕前もどんどん上がっているので、お城のご飯はレパートリーも増え、味も物凄く美味しくなっている。


 お城以外でどんなご飯が食べられているのか詳しく知らないけれど、この反応を見ていると、お城のご飯はきっととても美味しい物だって事はやんわり分かる。

 そんなお城組の意見に、とても悔しそうに顔を歪めた獣人さん2人は、「いつか城で勤めてやる!」と意気込みながら、再び猛烈な勢いで食べ始めた。


 本当に、ヨウグさんが多めにって言ってくれてて良かった。

 お弁当、既にスカスカでなくなりそう。






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