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「そうだと言ったら?」
(えっ⁈)
「なっ⁈」
いきなり連れて帰るつもりのレオンに、リーシェもオルレアートもさらに動揺する。何処に今日初めて対面したばかりの、しかも婚約者を連れて帰るものがいるのか。
しかしレオンは表情を変えずに言ってのけた。
「そんな話っ、聞いておりませぬ!!」
「我が婚約者殿をこのような警備のなってない場所に居させる訳にはいかない。それに、本邸へ行ったとしても今更居ずらいだろう?ならば、私の家に来れば良い。」
「っ………」
流石にこれには何も言えないらしいオルレアートを見て、さらにレオンは話を続ける。
「いきなり婚約者殿となったのだから、私の事など知らないだろう。私を知ってもらうためにも、身近に一緒に生活した方が手っ取り早い。なに、婚約中に手を出そうなどとは考えては無いさ。」
その話を聞き幾分か顔の強張りを解いたオルレアートたが、やはり納得いかないのだろう。
「リーシェ……。」
(お父様、そんな顔しないで…)
何とか落ち着いたリーシェは、力無く自分を呼ぶオルレアートに向かい笑みを返した。
そんなリーシェを見てようやく諦めがついたオルレアートはレオンに頭を下げ、
「娘は貴族社会について何も知らない身。ですが、大切な私の娘です。どうか、大切にして頂きたい…。」
神妙な顔でそう言うオルレアートに、レオンは一つ強く頷く。
「では伯爵。失礼するよ。」
そう言い、レオンは片手をしっかりとリーシェの腰に当て、馬の手綱を引き小屋を後にした。
(お父様…今までお世話になったのだから、どう言う形であれ恩返しが出来た…)
イスクード公爵と繋がりを持てた伯爵家は繁栄するだろう。
これで良かったのかもしれない…、とリーシェは思う。
このまま小屋で独り身で居るのも寂しい。なら、婚約者という身あったとしても、今まで世話を見てくれてた心優しいオルレアートに恩返しが出来たのは幸運かもしれない…と、自分を慰めるように戸惑う胸を抑えた。
(でも、せめてお母様との思い出の物は持っていたい…。後で手紙を書かせてもらおう。)
帰る事が無理でも、手紙くらいなら良いだろうと考え、これから行く公爵家に不安を感じながらも、とりあえずはする事を決めた。
リーシェとレオンがのっている馬はゆっくりと村に向かっていた。
時間はまだ朝。鳥の囀りに耳を傾けながらも、自分の腰を力強く支えているレオンの腕に緊張する。
「リーシェ、お前は私の事は殆ど知らないな?」
急に質問して来たレオンに、リーシェは頷いて良いのか迷った。
しかし、どう言われても知らない物は知らないのだ。リーシェはゆっくりと頷いてみせた。
しかし、内気な性格の自分がいきなり相手の目を見る事も怖くて出来ず、目線は下だった。
「あぁ、別に知らないからと言って怒りはしない。そう強張るな。」
だが予想に反し、優しい反応だったため、つい顔を上げてしまった。
「ん?どうかしたか⁇」
そこにあったのは優しい微笑み。今までかなり強引に話を進めてきた者とは思えないほどだ。
「っ!!」
顔をあげたことを後悔する。何故初対面の自分にこんなに優しい笑みをくれるのか。それに異性との接触は父親のオルレアートを除いたらゼロと言っていいリーシェには、この馬の上での身体の密着度はかなり精神的に落ち着かない。
それに加え先程の微笑みで心臓の音が加速し、さらに落ち着かなくなってしまった。
リーシェは箱入り娘ならぬ小屋入り娘ですから!!




