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「公爵殿っ!!」
「オルレアート伯爵。申し訳ない、早く婚約者殿の顔が見たくてつい此方について来てしまった。」
オルレアートが外にでて開けっ放しのドアから見えたのは、馬から降りる際になびく艶やかな漆黒の肩らへんまである髪と、意志の強そうな切れ目のブルーアイを持った人だった。
リーシェは公爵を見たことはないが、話しを聞く限りこの人が公爵なのだろう。
しかしながら、先程の口振りだとこの場所を知らないはずの公爵は護衛が気付かないよう後をついて来たということになる。
(イスクード公爵は一体どんな性格の方なのかしら…)
男の人の付き合うきっかけも無かったリーシェはもし付き合う男性が居たら性格の良い方と思っていた。
何故なら、いくら顔がよくたって、付き合うには性格が大事だと思っているからだ。
そんな事を考えてる内に、公爵はリーシェが居る小屋の中に入って来たようだった。
目の前まで歩いて来た公爵は、近づいて来てわかった大きな身長を折り曲げ、恭しくリーシェの手を取り口付けてきた。
年頃の娘なら頬を赤く染めるだろうが、
ビクッと、はじめて男性にとられる行動にリーシェはただ固くなるだけだった。
「はじめまして、婚約者殿。私はレオンハルト・フラン・イスクードと申します。レオン、と心の中でお呼び下さい。以後、お見知り置きを。」
ここでリーシェも返事をしなければならないが、話せないという設定だし、内気な性格も幸いし、ただおどおどしく礼をしただけだった。
挨拶は終わった筈なのに一向に手を離そうとしないレオンに、リーシェは段々不安になってきた。
(ど、どうして手を離さないの?もしかして貴族はまだ何かしなくてはいけないのかしら…?)
ピク、とまだレオンの手の中にあるリーシェの手が動いたと同時に、レオンはそのまま力強く手を引きリーシェの身体を引き寄せると、お姫様抱っこをして小屋から出てしまう。
「っ⁉」
(ひっ!!なっなにがっ⁉)
何とか悲鳴を抑えたものの、リーシェは頭の中がパニックになり、何が起きたのか分からない。
しかし一方レオンは涼しい顔で馬にリーシェを乗せ、自分もフワッと乗ってしまった。
その様子をただ呆然と見ていたオルレアートだが、ハッと我にかえると急いでリーシェとレオンが乗る馬に近づいた。
「公爵殿っ!一体何をなさるつもりですかっ⁉」
「何…とは?」
「まさかそのまま連れ帰る訳では無いでしょうなっ」




