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女好きの旅人は、正体を隠した王女を放っておけない  作者: Wataru


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3人で野宿

森の中。


夕日が木々の隙間から差し込んでいた。


オレンジ色の光が道を染める。


バンは空を見上げた。


「次の街まで、まだかかりそうか?」


レイナは地図を確認する。


「そのようですね」


「なら今日はこの辺で野宿だな」


「はい」


クロードは周囲を見回した。


それから黙って森の奥へ入っていく。


「?」


バンが首を傾げる。


数分後。


クロードは木材を抱えて戻ってきた。


剣を振る。


木を切る。


組み立てる。


また切る。


また組み立てる。


そして。


あっという間に簡易ベッドが完成した。


「こちらをお使いください」


レイナは目を丸くした。


「ありがとう」


クロードは小さく頷く。


バンは完成したベッドを見た。


それからクロードを見る。


ベッドを見る。


もう一度クロードを見る。


「……お前」


「?」


「家具屋か?」


レイナが吹き出した。


クロードは真顔だった。


「違います」


「そうかよ」


バンは笑う。


「妙に手慣れてるから」


「野営訓練の一環です」


「訓練でベッド作るのか」


「作ります」


「マジか」


バンは呆れたように肩を竦めた。


火の準備も手際がいい。


石を積み。


薪を集める。


火を起こす。


あっという間だった。


「どうぞ」


「ありがとう」


レイナがクロードを見て笑う。


「何でもできるんですね」


「訓練です」


クロードは淡々と言った。


「ふーん。やるな」


バンは呟く。


「?」


「いや、何でもねぇ」


なぜか面白くなかった。


夕食を終える。


火を囲む。


静かな夜だった。


「……みんな、元気にしてる?」


レイナが聞いた。


「はい」


クロードが頷く。


「クロードの弟さんは?」


「騎士になりました」


「本当ですか?」


レイナの顔が明るくなる。


「昔はあんなに小さかったのに」


「もう十八です」


「時間が経つのは早いですね」


レイナは懐かしそうに笑った。


クロードも少しだけ表情を和らげる。


バンは薪を火へ放り込んだ。


パチリ。


火の粉が舞う。


王国の話。


昔の話。


家族の話。


バンには分からないことばかりだった。


レイナの知らない一面を。


クロードだけが知っている。


「……」


何か。


面白くなかった。


バンは立ち上がる。


「ん?」


レイナが振り向いた。


「バン?」


「散歩」


短く言う。


「すぐ戻る」


そう言って。


バンは一人、森の奥へ歩き出した。


夜風が頬を撫でる。


バンは近くの木にもたれた。


「……」


空を見上げる。


クロードがいれば。


護衛もできる。


野営もできる。


王国のことも分かる。


レイナのことだって。


俺よりずっと知っている。


「ったく……」


小石を蹴る。


最初は金貨二枚だった。


それだけのはずだった。


クリスタルも見つかった。


だったら。


ここで旅を抜けたっていい。


「……」


なのに。


なぜかそんな気になれない。


クロードがいれば十分だ。


レイナだって困らない。


そう思う。


思うのに。


妙に落ち着かなかった。


「俺がいる意味って……」


小さく呟く。


答える者はいない。


森は静かだった。


ーー


火を囲む。


クロードが静かに口を開いた。


「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」


「何?」


レイナが顔を上げる。


クロードは少しだけ言葉を選んだ。


「バンという少年は、信用できるのですか?」


レイナは目を瞬く。


「どうして?」


「どう見ても真面目には見えません」


レイナは思わず吹き出した。


「ふふっ」


クロードは真顔だった。


「何かおかしいでしょうか」


「いいえ」


レイナは笑みを浮かべる。


「そうね。真面目ではないかも」


「では」


クロードの眉が僅かに動く。


「変なことをされたりは?」


レイナは首を振った。


「ないわ」


即答だった。


クロードは少し安心したように息を吐く。


だが。


レイナは少し考えてから言った。


「一緒のベッドで寝たりはしたけど」

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